中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2023年12月22日

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抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®」臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制および治療に対する承認取得について

全薬工業株式会社
中外製薬株式会社

 全薬工業株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:橋本 弘一、以下「全薬工業」)および中外製薬株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長 CEO:奥田 修、以下「中外製薬」)は、両社で共同販売を行っている抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®点滴静注100 mg、同500 mg」[一般名:リツキシマブ(遺伝子組換え)](以下「リツキサン」)について、本日、「臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制および治療」に対する適応追加の承認*1を、製造販売業者である全薬工業が厚生労働省より取得したことをお知らせいたします。

 臓器移植後の抗体関連型拒絶反応*2は移植臓器の機能不全や廃絶の主な原因となります。このため、移植予定患者が抗体関連型拒絶反応の発現リスクが高い血液型不適合移植*3やヒト白血球抗原(human leukocyte antigen、以下「HLA」)に特異的な抗体*4を有する場合でも、移植術前に原因抗体の産生抑制や除去、ならびに移植時の抗原抗体反応を抑制する(脱感作)ことで、移植が可能となります。また、拒絶反応が発現した場合には抗原抗体反応の抑制による治療を行うことで、移植臓器機能の維持または回復が期待できます。
 リツキサンは、造血幹細胞や形質細胞以外のB細胞上に発現するタンパク質であるCD20抗原に特異的に結合する抗CD20モノクローナル抗体であり、標的となるB細胞をヒトの体内に備わった免疫系を用いて攻撃し、細胞を傷害します。この作用機序によりB細胞から抗体産生細胞への分化を抑制し、移植臓器に対する抗体産生の抑制が期待されます。リツキサンの「臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制および治療」に対する開発は、2013年8月から実施された第3回 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の要望募集において、一般社団法人 日本移植学会(以下「日本移植学会」)より「腎移植における抗体関連型拒絶反応の治療」および「抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作」に対する開発要望が提出され、「第34回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(2018年3月23日開催)での検討結果に基づき開始しました。日本移植学会が実施した使用実態調査の結果*5から、腎移植を対象とした抗体関連型拒絶反応の抑制に関する治験*6および抗体関連型拒絶反応の治療に関する治験*7を実施し、また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 移植医療技術開発研究事業により実施された特定臨床研究*8において、肝、心、肺、膵および小腸移植を対象とした抗体関連型拒絶反応の抑制および治療について検討されました。これらの検討で得られたデータ等を根拠として、全薬工業が2023年4月6日に製造販売承認事項一部変更承認申請を行い、今回の承認取得に至りました。
 全薬工業および中外製薬は、臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制および治療にリツキサンが貢献できるよう、より一層の協力体制で取り組んでまいります。

 上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

*1 承認された効能又は効果
〇下記の臓器移植における抗体関連型拒絶反応の抑制
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植
〇下記の臓器移植における抗体関連型拒絶反応の治療
腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植、小腸移植

 なお、抗体関連型拒絶反応の抑制は、2016年に腎移植および肝移植におけるABO血液型不適合移植時の抗体関連型拒絶反応の抑制について承認されておりますが、今回、ABO血液型不適合移植に限定しない効能又は効果とし、また、対象となる臓器移植として心移植、肺移植、膵移植および小腸移植を追加しています。

*2 抗体関連型拒絶反応について
 抗体関連型拒絶反応は、臓器移植時に、レシピエント(移植を受ける方)が有する抗体とドナー(臓器を提供する方)由来移植臓器の抗原による抗原抗体反応によって、移植臓器が傷害される、拒絶反応の一種です。

*3 血液型不適合移植について
 以下のレシピエントとドナーの組み合わせの場合、血液型不適合移植となります。

  • レシピエントがO型でドナーがA型、B型またはAB型の場合
  • レシピエントがA型でドナーがB型またはAB型の場合
  • レシピエントがB型でドナーがA型またはAB型の場合

*4 ヒト白血球抗原(human leukocyte antigen、HLA)に対する抗体
HLAは赤血球を除くほぼ全ての細胞に発現し、移植、輸血または妊娠により抗HLA抗体が産生され、抗体関連型拒絶反応に関与することがあります。

*5 抗体関連型拒絶反応の抑制1)および治療2)に関する全国調査、ならびに肝移植3)および小腸移植4)における抗体関連型拒絶反応の抑制、肝移植5)、心移植6)、肺移植7)、膵移植8)、小腸移植4)における抗体関連型拒絶反応の治療に関する使用実態調査の結果が公表されています。

*6 抗ドナー抗体陽性・抗HLA抗体陽性の生体腎移植患者に対する術前脱感作におけるIDEC-C2B8の有用性を確認する臨床第III相試験 生体腎移植患者に対して移植28~7日前からFK506/FK506E(MR4)を投与した場合の有効性、安全性及び薬物動態を確認する臨床第III相試験(jRCT2080224107)

*7 腎移植後の抗体関連型拒絶反応に対するIDEC-C2B8の有用性を検討する臨床第III相試験(jRCT2080224105)

*8 臓器移植における抗体関連拒絶反応の新規治療法の開発に関する研究(jRCTs031180264)

出典:

  1. 中川健、赤松延久、伊藤泰平、他. 抗ドナー特異的抗体陽性臓器移植の実態とrituximab の使用に関する全国使用実態調査結果. 移植. 2020; 55(1): 39-50.
  2. 中川健、赤松延久、伊藤泰平、他. 臓器移植における抗体関連型拒絶反応治療の実態とrituximab 使用に関する全国使用実態調査の結果. 移植. 2020; 55(1): 51-59.
  3. Akamatsu N, Hasegawa K, Sakamoto S, Ohdan H, Nakagawa K, Egawa H. Rituximab Desensitization in Liver Transplant Recipients With Preformed Donor-specific HLA Antibodies: A Japanese Nationwide Survey. Transplant Direct. 2021; 7(8): e729.
  4. 上野豪久、奥山宏臣、工藤博典、他. リツキサン使用の実態調査 二次調査 小腸. 移植. 2021; 56(2): 159-164.
  5. Sakamoto S, Akamatsu N, Hasegawa K, Ohdan H, Nakagawa K, Egawa H. The efficacy of rituximab treatment for antibody-mediated rejection in liver transplantation: A retrospective Japanese nationwide study. Hepatol Res. 2021; 51(9): 990-999.
  6. 縄田寛、吉岡大輔、小野稔、他. 心臓臓器移植におけるAMR 治療の実態とrituximab(遺伝子組換え)使用に関する全国使用実態調査の結果. 移植. 2021; 56(1): 43-52.
  7. 芳川豊史、伊達洋至、杉本誠一郎、白石武史、中川健、江川裕人. 肺移植後の抗体関連拒絶に対するrituximab(遺伝子組換え). 移植. 2021; 56(1): 53-68.
  8. 伊藤泰平、剣持敬、栗原啓、他. 本邦膵臓移植症例におけるrituximab(遺伝子組換え)に関する使用実態調査の結果 -膵移植後rituximab使用4症例の報告-. 移植. 2021; 56(1): 35-42.

以上

本件に関するお問い合わせ先:

全薬ホールディングス株式会社
グループ総務部 広報課
Tel: 03-3946-1123

中外製薬株式会社 広報IR部
メディアリレーションズグループ
Tel: 03-3273-0881

インベスターリレーションズグループ
Tel: 03-3273-0554

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