成長戦略

当社グループは、目指す姿(Envisioned Future)の実現を目指し、新たな成長戦略「TOP I 2030」(2021年~2030年)を策定しました。ロシュ社との戦略的アライアンスをベースに、さらなる競争優位の獲得と持続的な利益成長・企業価値拡大の実現を目指して、新たなステージでの変革に取り組んでいます。

名称

TOP”には、「日本ではなく世界のトップイノベーター」を目指す想いが込められ、“I”には、「イノベーター」に加え、価値創造の原動力は「人」であり、中外製薬グループ社員一人ひとりが「TOP I 2030」の実現を目指す主役であるという「私=I」の2つの意味が重ねられています。

TOP I 2030 ロゴ

基本方針

事業活動の持続的な発展のために、企業は社会課題と真摯に向き合い、解決に向けて取り組むことが求められます。中外製薬は、革新的医薬品を核としたイノベーション創出による社会課題の解決を通じて、当社および社会双方の発展を目指しています。

当社と社会との共有価値の創造として「患者中心の高度で持続可能な医療の実現」を目指していることを示した図。この実現に向けて、ロシュとの戦略的アライアンスと独自のサイエンス力と技術力を核とした、中外製薬ならではのビジネスモデルを最大限に活用し、イノベーションに集中することを示している。

2030年トップイノベーター像

当社はロシュ社との協働のもと、「革新的新薬」を事業のコアに据えながら、製薬企業に限らず多様なプレーヤーがイノベーションに挑戦する世界のヘルスケア領域においてトップクラスのイノベーターを目指しています。

2030年の「到達像」を以下のように定めました。

2030年トップイノベーター像

「世界の患者さんが期待する」
世界最高水準の創薬力を有し、世界中の患者さんが「中外なら必ず新たな治療法を生み出してくれる」と期待する会社

「世界の人財とプレーヤーを惹きつける」
世界中の情熱ある人財を惹きつけ、ヘルスケアにかかわる世界中のプレーヤーが「中外と組めば新しい何かを生み出せる」と想起する会社

「世界のロールモデル」
サステナビリティを事業活動の中心に据え、社会課題解決をリードする企業として世界のロールモデルである会社

2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030

当社グループは、中期経営計画「IBI 21」を1年前倒しで終了するとともに、ミッションステートメントに掲げた目指す姿(Envisioned Future)の実現を目指し、2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」(トップ アイ 2030)を策定しました。

2030年トップイノベーター像実現に向けた成長戦略

2030年の目標は、「R&Dアウトプット倍増」と「革新的な自社グローバル品毎年上市」。その実現に向け「世界最高水準の創薬実現」と「先進的事業モデルの構築」の2つの柱と、3つのキードライバー「RED SHIFT」「DX」「Open Innovation」を示した図。

TOP I 2030」の2つの柱は、「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」です。

独自のサイエンスと技術を駆使して数々の革新的新薬を生み出してきた当社は、今後10年間でさらに創薬力を大きく向上させ、世界のアンメット・メディカルニーズに応えるソリューションを継続的に世に送り出せる体制構築・強化を目指します。具体的には、現在のR&Dアウトプットを10年間で2倍に拡大し、革新的な自社グローバル品を毎年上市できる会社を目指します。

そして、環境変化や技術進化を踏まえた先進的事業モデルの構築にも取り組んでいきます。特にデジタルを活用したプロセスや価値創出モデルの抜本的な再構築によって、バリューチェーン全体にわたる生産性の飛躍的向上と、患者さんへの価値・製品価値の拡大を目指していきます。

  • * いまだに有効な治療方法がなく、十分に満たされていない医療ニーズ

成長戦略実現に向けた5つの改革

TOP I 2030」では、戦略の二本柱を実現するための具体策として、「創薬」「開発」「製薬」「Value Delivery」の各バリューチェーンとそれを支える「成長基盤」を合わせた「5つの改革」を掲げています。

トップイノベーター像実現に向けた5つの改革

①創薬、②開発、③製薬、④Value Delivery、⑤成長基盤

1. 創薬改革

創薬においては、R&D プリンシプル*1に基づく創薬の追求に加え、オープンイノベーション強化による独自の技術確立・アウトプットを創出していきます。

3つの改革の方向性(Technology-Driven創薬、Quality-Centric創薬、オープンイノベーション)と4つのゴール(中外だからこそ実現可能な創薬へのこだわりとアウトプットの倍増、2030年以降の成長を描ける新規独自技術の確立、自前オンリー主義から脱却した創薬機会の拡大、高い生産性を維持)を示した図
  • Technology-Driven創薬
    中外製薬は、従来、創薬の中心であった低分子に加え、世界に先駆けてバイオ医薬品に取り組むことで、それまでできないと思われたことを実現し、患者さんにとって価値の高い薬剤を提供することに成功してきました。私たちは当社ならではの考え・技術に基づいた創薬にこだわります。これまで標的にできないと思われてきた分子を標的にする。現状技術では実現困難な作用メカニズムを実現する創薬を行う。その一つの例として中分子創薬への挑戦が挙げられます。競争優位性を獲得・維持するために、技術開発に力を入れ続けます。未解決な病気のアンメット・メディカルニーズ*2に応えるため、抗体・低分子・中分子を始めとした既存モダリティに加え、新規モダリティにおいても技術の強化・構築に挑戦し、治癒・早期介入・予防につながる創薬を追求し、患者さんのQOL向上に寄与して参ります。
  • Quality-Centric創薬
    独自のサイエンス力と最新の技術を駆使して、有効性、安全性、DMPK*3、物性などの点で、妥協することなく、その時点で我々の技術で到達できる最高品質の開発候補分子を目指します。この姿勢を貫くことにより、より有効性と安全性に優れ、長く患者さんに使用していただける医薬品を開発できると考えます。同時に、臨床開発における高い成功確率を維持していきます。
  • オープンイノベーション
    私たちには国内アカデミアとのコラボレーションによって多くの医薬品を創製してきた歴史があります。その枠組みを、国内外のアカデミアやスタートアップまで広げる活動を開始しています。また、必要に応じて技術開発についても外部連携も行っていきます。2024年1月からは米国を拠点とするコーポレートベンチャーキャピタルとしてChugai Venture Fund(CVF)も活動を開始しました。自社単独での創薬にこだわるのではなく、外部の技術や標的をより積極的に探索し、自社の強みと融合させることで、創薬機会の拡大を目指します。

2. 開発改革

特に早期開発においては、Go/No-Go判断力強化・早期のプロジェクト価値最大化とともに、オペレーションモデルの継続的な変革により価値創出と生産性向上の両方を追求していきます。

3つの改革の方向性(臨床開発力とヒト予測力の融合による適切・迅速なGo/No-Go判断、早期臨床試験からの、これまでに無い付加価値の創発、オペレーションモデル変革)と3つのゴール(確度の高いGo/No-Go基準設定と迅速な実行、プロジェクト全体価値の早期見積り、価値最大化と生産性向上)を示した図
  • 臨床開発力とヒト予測力の融合による適切・迅速なGo/No-Go判断
    TOP I 2030」への取り組みが進むにつれ、臨床へ移行するプロジェクトが増加していきます。サイエンスへのこだわりを維持しつつ、各プロジェクトの価値を徹底的に追求していきます。同時に、研究成果が医薬品として実用化できるかどうかを迅速かつ適切に判断する能力を身につけ、より効率的な医薬品開発を目指します。ヒト予測*4による精緻な生体反応の理解と社内外のインサイトを活用し、確度の高いGo/No-Go基準を開発計画に反映し、実行していきます。これにより、プロジェクトの価値をより早期に見極め、プロジェクトに応じた資源配分を行うことで、適正なリソースの配分を実現します。
  • 早期臨床試験からの、これまでに無い付加価値の創発
    非臨床・トランスレーショナルリサーチ等の自ら創出した科学的エビデンスにより、早期に開発品の候補疾患を特定します。適切なGo/No-Go判断により医薬品として実用化できる可能性が高いと判断された時点で、複数の適応症で同時開発を進め、プロジェクト全体の価値の早期最大化を目指します。また、より早期の段階からTrue endpoint*5の実証に取り組み、後期開発に繋げることで患者さんへの提供価値を最大化します。
  • オペレーションモデル変革
    後期開発においては、デジタル技術の積極的な活用によるモニタリング・管理業務の効率化はもちろんのこと、RWDの利活用など臨床試験のあり方そのものを見つめ直すことで、業界をリードする新規価値の創出と更なる生産性向上にも取り組んでいきます。また、ロシュ社との協働においてはスピードに加え、科学的視点からより踏み込んだ協働(開発戦略や試験計画への提言)を行うことで成功確率の向上に寄与し、グローバルにおける製品価値の最大化に貢献していきます。
  • *4 ヒトの身体の中での薬の動態や生体反応をモデリング&シミュレーションすること
  • *5 患者さんのQOL向上に寄与する真の価値

3. 製薬改革

創薬アイディアを医薬品として患者さんに届けるための世界水準の技術を追求し、品質/スピード/コストの全ての面で高い競争力を有する製薬機能を実現します。
製薬での開発においては、R&Dアウトプットの倍増に合わせて、技術レベル・開発スピードの両面から世界最高水準を追求していきます。生産においては、デジタルやロボティクス活用を含めた生産技術力の強化による効率化と、デュアルサイト戦略遂行により安定供給とグローバル水準の品質を追求し、頑健かつ競争力のある供給体制を構築します。

2つの改革の方向性(世界水準技術の追求、頑健かつ競争力のある供給体制の構築)と4つのゴール(競争力ある製薬技術確立、世界トップレベルの開発期間、世界水準の生産性と品質を実現する生産技術適用、安定供給と高品質を両立する供給体制確立)を示した図
  • 世界水準の技術の追求
    中外製薬が取り組んでいく開発品は医薬品として形にするには、難易度が高い化合物ばかりです。だからこそ私たち中外製薬の製薬機能のレベルを上げていくことに大きな価値があります。中分子では、創薬との連携を今まで以上に強化して、高活性かつ薬剤化することの難易度が極めて高い化合物の原薬・製剤・分析での技術を確立し、生産体制を整えていきます。次に当社の強みである抗体分野では、抗体エンジニアリング技術の進化に対応して、さらなる技術深耕に取り組むことで、臨床開発品の選定から治験申請までの期間を短縮し、開発のスピードアップを実現します。上記の実現に向けて、必要な設備投資にもリスクをとって取り組んでいきます。
  • 頑健かつ競争力のある供給体制の構築
    災害や地政学リスクが高まる中、将来にわたって製薬企業の使命である高品質な医薬品を安定供給していくためには、社内の生産技術力を強化するとともに、原材料サプライヤやCMO*6といった社外パートナーとの協働により、頑健で競争力のある供給体制を構築していく必要があります。スマートファクトリーを見据えたデジタルやロボティクスの活用を含めて生産技術力を強化し、生産性の更なる向上につなげていきます。また上市後CMOを含む複数の工場からの供給を可能とするデュアルサイト戦略を基本とし、安定供給とグローバル水準の品質を追求していきます。
  • *6 医薬品製造受託機関(Contract Manufacturing Organization:CMO)

4. Value Delivery改革

Value Delivery機能ではこれまで以上に、「患者中心の最適な治療選択に貢献する迅速なエビデンス創出」と、「革新的な顧客エンゲージメントモデル確立による、高度な価値提供」を追求します。また、その取り組みにあたっては、デジタルの活用などに取り組むことで、高い生産性を実現していきます。

3つの改革の方向性(Personalized Medical & Safety Careの実現、新顧客エンゲージメントモデル確立、資源シフト・デジタル活用)と5つのゴール(価値の高いエビデンスの市販後早期創出、実臨床におけるリスク予測および重篤化回避、戦略製品での世界トップレベルのシェア実現、業界をリードする患者中心の情報提供活動、業界トップクラスの生産性維持向上)を示した図
  • Personalized Medical & Safety Careの実現
    1つ目の取り組みは、患者さんに応じた最適な治療選択が可能となるエビデンスの創出です。
    ロシュ社やアカデミアとの協働を通じた質の高い臨床研究および製造販売後調査等を企画し、価値の高いエビデンスを市販後のより早い段階で提供することを目指します。加えて安全性の観点からも、非臨床・トランスレーショナルリサーチ等の知見も活用し、実臨床における副作用のヒトリスクの予測および重篤化を回避する活動など、患者さん個々に寄り添った価値提供の取り組みを進化させます。
  • 新顧客エンゲージメントモデル確立
    2つ目は、医師・薬剤師・看護師のみならずソーシャルワーカーや行政を含めたあらゆる顧客(ステークホルダー)への新たな情報提供体制の進化です。
    COVID-19や働き方改革にともない顧客との接点に劇的な変化が起こっている環境下において、リアル・リモート・デジタルを組み合わせたマルチチャネル戦略の重要性が増しています。患者さん同様、顧客個々に最適なアプローチを選択できる体制が必要不可欠であり、今後はさらに多様化する顧客ニーズを敏感に捉え、それに対応した体制を柔軟に構築していきます。
  • 資源シフト・デジタル活用
    3つ目は、資源シフトとデジタル活用です。
    Value Delivery機能として優先的に資源投入すべき業務の洗い出し、成長・新規領域への資源シフトをさらに推し進めます。また、それを実現するために、成熟品を中心とした第3者への譲渡など、スリム化も継続して検討していきます。バックオフィス機能においてはデジタル活用・アウトソーシング・業務集約など、これまでの慣習・プロセスに捉われない抜本的な変革を進めていきます。

5. 成長基盤改革

これまで説明してきた各機能別の4つの改革を実現する成長基盤の強化のため、5つの領域における課題に継続的に取り組んでいきます。

  • 人・組織
    経営戦略に基づいた人財マネジメント方針の徹底を通じて、人的資本の強化を進めていきます。年齢・属性に拘わらずチャレンジを後押しする人事制度の運用を徹底するとともに、社員ひとりー人のキャリア開発を含めた自律的な学び/成長の支援、デジタル人財やサイエンス人財など、戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得や育成に注力します。また、イノベーションを生み出す組織風土構築に向けたD&Iの推進や、全従業員の健康を促進する施策などについてもより高いレベルを目指していきます。
    人的資本レポート(People & Culture Report
  • デジタル
    CHUGAI DIGITAL VISION 2030で掲げた「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになる」に向かって推進していきます。具体的には、デジタルを活用した革新的な新薬創出と全てのバリューチェーンの生産性向上を各組織と共創することで取り組んでいきます。また、デジタル人財育成の強化及びビジネス価値向上に繋がるIT基盤強化等を継続して推進し、イノベーション創出を支える全社基盤構築を目指します。
    デジタルトランスフォーメーション推進「CHUGAI DIGITAL VISION 2030
  • サステナビリティ・環境
    サステナビリティを事業活動の中心に据えた上で、高い目標である「中期環境目標2030」の達成を目指して努力を継続する事により、社会への環境負荷軽減を目指します。具体的には、CO2やエネルギー排出量、フロン使用量などの削減による「気候変動対策」、廃棄物や水消費量の削減による「循環型資源利用」、有害廃棄物使用の削減を通じた「生物多様性保全」などに継続して取り組んでいきます。また、環境に加えて、ガバナンスの向上やそのための情報開示の充実なども進めていきます。
    環境における目標と取り組み「中期環境目標2030」
  • クオリティ
    クオリティでは製品、情報、プロセスの質とそれを実現する人財により世界をリードし、中外クオリティを社外に対しても訴求・浸透させていきます。そのために、患者さんの期待に応える製品・サービスを確実に提供するとともに、質と効率を両立する先進的手法の獲得、パートナーとの協働を推し進めます。また、それら全てのベースとなる「クオリティカルチャー」を全てのバリューチェーンにおいて浸透させていきます。
  • PHCソリューション
    患者さんのニーズは多様かつ高度化しており、革新的医薬品の創出と提供においては、その価値証明や治療効果を最大化するために、病態や治療効果を精緻に診断・測定する取り組みが今後ますます重要となっていきます。インサイトビジネスの取り組みを通じて得られた知見を基に、PHCソリューションでは、医薬品価値証明の高度化および最大化のためのグローバル提供体制の確立を目指しています。

企業価値向上・株主還元の考え方

安定配当の継続を基本に、Core EPS対比の配当性向で「平均して45%を目処」とする方針

中外製薬は、イノベーションに集中し、患者中心の高度で持続可能な医療を実現することにより、持続的に利益を創出し、企業価値向上を図ることを基本的な戦略としています。そして、こうして得た成果は、資本市場での評価獲得と安定した配当を通じて、株主の皆さまに還元していく考えです。
TOP I 2030」では、安定配当の継続を基本に、Core EPS対比の配当性向で「平均して45%を目処」とする方針です。今後も、着実な利益成長を続け、適正な株主還元を行ってまいります。

説明会資料

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