ヒト幹細胞を用いた研究に関するポリシー

背景

幹細胞と病気の治療

ヒト幹細胞とそれに関連する応用技術は、生活の質の向上に加えて、病気の治療や治癒に貢献する大きな可能性を秘めています。中外製薬は、探索ツールとしてのみならず潜在的な新たな治療法として、ヒト幹細胞研究とそれに関連する応用技術の科学的発展に非常に注目しています。また同時に、中外製薬は、ヒト幹細胞研究とそれに関連する応用技術に関して、慎重に議論すべき社会的および倫理的懸念点が存在することを十分に認識しています。中外製薬は、中外製薬のその他すべての活動と同様に、関連する法律等に従い、この研究分野を取り巻くすべてのステークホルダーとの対話を受け入れています。

幹細胞について

幹細胞は、自分自身を再生させる能力を持ち、心臓や血液の細胞といった、種々の特性を持った細胞に変化できるといった、特有の能力のある特別な細胞です。幹細胞は次のように分類できます。

  • 体性幹細胞は、骨髄や臍帯血などの組織に由来します。体性幹細胞を使った技術は、すでに白血病患者の治療等に使用されています。さらなる疾患の治療への応用は現在研究段階です。一方で、それらが分化できる細胞の種類は限定的です。したがって、特定の用途のため、胚性幹細胞を用いた研究を同時に行う必要があります。
  • 胚性幹細胞(ES細胞)は、胚から分離されます。これらの細胞は多能性を有しています。つまり、胎児または成人の様々な種類の細胞(血液、心臓、脳細胞など)に成長できます。
  • 人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、皮膚細胞などの成体細胞に由来し、多能性を持つよう初期化されています。初期化されると、胚性幹細胞と同様の特性を示します。iPS細胞技術が期待通りに発展すれば、最終的には胚から幹細胞を得る必要性がなくなり、iPS細胞がその代わりになるかもしれません。

ステークホルダーの期待と懸念事項

ヒト幹細胞研究への期待は非常に高いものがあります。幹細胞とそれに関連する応用技術の発展により、最終的に、今日では効果的な治療法をほとんど提供できていない重篤な疾患(アルツハイマー病、多発性硬化症、対麻痺、糖尿病、パーキンソン病、心不全など)の治療法を発見できる可能性があります。

一方で、ヒト幹細胞の使用に関して倫理的に考慮すべき事項は多様であり、それは、個人の文化的および宗教的背景にも依存します。議論の中心は次のとおりです。

  • 胚盤胞を使用すること(胚盤胞は、胚性幹細胞を分離できる着床前の非常に初期の発達段階にあるヒト胚です)。
  • ヒト胚性幹細胞を研究に使用するか、および/またはさまざまな疾患の潜在的な治療法として使用するか。
  • ヒト幹細胞の利用に対する規制に関して、研究の自由や患者の利益といった視点から多様な意見が存在する。この意見に対して我々はどのように対応すべきか、また社会はどのように対応すべきか。

中外製薬の立場

ヒト幹細胞を用いた研究の必要性

近年のヒト幹細胞研究の世界的な進歩により、多能性幹細胞生物学の科学的発展(すなわち、成体幹細胞または体細胞の多能性細胞への初期化)が将来の有望な価値を提供することを示しており、中外製薬もこれらの技術の使用に取り組んでいます。しかし、これらの技術の科学的理解はまだ初期段階です。したがって、体性幹細胞や人工多能性細胞と胚性幹細胞の両方を使用した並行研究は、疾患の理解を深め、治療法を開発するために必要であると考えています。

中外製薬は、ヒト幹細胞研究に関連する倫理的懸念があることを認識しています。しかし、ヒト幹細胞研究により、患者さんの病気の治療、予防、診断の進歩に大きな貢献をもたらす可能性があると期待しています。そのためには、責任を持って法規制を遵守し、利害関係者と対話し、現在治療できない、または治療法が十分でない疾患に対して、新しくより効果的な治療法を開発するという究極の目的にのみ使用されるべきと考えています。

中外製薬は、社内および社外専門家で構成する倫理審査委員会を設置し、ヒト多能性幹細胞を用いた研究活動の倫理性および科学的妥当性、提供者へのリスク及びリスク低減策、社会的ベネフィット等を総合的に判断し、研究活動の可否について審査を行っています。また、中外製薬は、ヒト幹細胞技術を用いた研究活動状況について適切に公開します。

ヒト幹細胞を研究で使用するための原則

中外製薬は、ヒト幹細胞研究に対する責任および透明性を確保するための取り組みを行っています。このため、研究におけるヒト幹細胞の使用に関する明確な原則(ヒト幹細胞を研究で使用するための一般原則)を設けて、中外製薬が実施するヒト幹細胞を含む以下のすべての研究プロジェクトに適用しています

  • 探索ツールとして幹細胞研究を使用するプロジェクト
  • 潜在的な治療法を調査するプロジェクト

ヒト幹細胞研究に携わるすべての中外製薬の従業員は、全世界で適用されうるよう定められたこの原則を遵守して研究活動を行います。

ヒト幹細胞を研究で使用するための一般原則

  1. 中外製薬は、最終的に重篤な病気の理解を深め、効果的な診断ツールと治療法を開発することを目的として、ヒト幹細胞を用いた研究を行います。
  2. 中外製薬は、明確な科学的目的と計画を備えている研究活動を行います。
  3. 中外製薬は、ヒト幹細胞の提供者からの研究が実施される前に書面による自発的なインフォームドコンセントを取得したヒト幹細胞を用いて研究を行います。
  4. 中外製薬は、金銭的またはその他の方法で、幹細胞提供者を勧誘することはしません。
  5. 中外製薬は、研究が実施されるそれぞれの国の法令等を遵守します。
  6. 中外製薬は、この研究分野の利害関係者とのオープンな対話に取り組んでいます。
  7. 中外製薬は、中外製薬とともにヒト幹細胞研究を行うすべての外部委託業者に、中外製薬と同じ原則を遵守させるよう努めます。
  8. 中外製薬は、多能性を有するヒトES細胞を用いた研究は行いません。
  9. 中外製薬は、幹細胞を用いて生殖細胞を作製する研究は行いません。また、生殖細胞である分化ES細胞を用いた研究を行いません。
  10. 中外製薬は、幹細胞を用いてヒト胚を作製する研究は行いません。
  11. 中外製薬は、多能性幹細胞を用いた研究を行う場合、その研究計画を独立した公正な立場にある倫理審査委員会にて審査します。
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倫理・コンプライアンス

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