バイオテクノロジーに関する方針

- 安全性、従業員の健康、環境保護について -

中外製薬の立場

中外製薬では、バイオテクノロジーを活用して医療ニーズに応える高品質で革新的な医薬品の開発を行っており、さらなるイノベーションの必要性も認識しています。バイオテクノロジーは従来の化学的手法に取って代わる可能性を秘めており、治療薬や診断薬を含む医薬品をより持続可能で環境に優しい方法で製造することを可能にします。当社の主力製品の多くは既にバイオテクノロジーを用いて生産されており、当社はその活用範囲の拡大に積極的に取り組んでいます。今後も社内外のパートナーと協力し、バイオテクノロジーを基盤とした医薬品の研究開発をさらに推進していきます。

このようなバイオテクノロジーの活用を進める一方で、その使用に伴う責任も重く受け止めています。当社は、医薬品の製造およびR&Dにおけるバイオテクノロジーの使用に関するあらゆる安全性、健康、環境面の懸念に対処するために必要なすべての措置を講じ、当社の取り組みについて社会に対して透明性を確保していきます。

安全性について

医薬品開発において、バイオテクノロジー研究では疾病を引き起こす可能性のある微生物や細胞の使用が増えています。中外製薬の研究は、世界的に認められたバイオセーフティ基準に厳格に準拠しています。そのため、当社では高い安全性を持つウイルスを用いて遺伝子導入された微生物や細胞、または法規制によって厳しく管理された実験室環境でのみ生存するよう改変され、一般環境への漏出を防止できるものだけを使用しています。また、当社では環境汚染を防ぐため、これらの生物学的材料を適切な基準を満たす施設で不活化(滅菌)した後に廃棄しています。これらの措置は、環境への悪影響を防止する上で有効であることが一般的に示されています。予防原則に基づきリスクを慎重に評価し、適用されるすべての規制に従ってリスクを最小化するためのあらゆる対策を講じています。

バイオテクノロジーの一形態としてゲノム編集があります。これは多くの生物種の標的遺伝子を改変するために使用でき、医療、農業、製造業など多くの分野でイノベーションをもたらしています。当社は、哺乳類細胞を用いたゲノム編集技術による基礎研究や前臨床研究が、厳格な法的・倫理的規則と責任ある監視のもとで行われ、患者の健康と福祉を確保する必要があると考えています。適用される法律とガイダンスに従い、ゲノム編集技術は科学的・倫理的目的にのみ使用します。また、ゲノム編集技術の臨床応用の可能性についても支持しています。ただし、現在ゲノム編集技術は臨床試験への潜在的応用に向けて研究が進められている段階です。ゲノム編集の臨床応用に関する規制については、各国の政府や専門家委員会が今後安全性の問題について議論していくものと考えています。当社におきましても学術機関や関連当局と協議し、倫理的問題について慎重に検討していきます。

従業員の健康について

一般的に使用される微生物や細胞に加えて、遺伝子組換え生物がペプチドやタンパク質医薬のバイオテクノロジーベースの製剤生産においてますます使用されるようになっています。従業員は業務中にこれらの生物学的物質と接触する可能性があるため、汚染(バイオハザード)から確実に保護する必要があります。従業員の健康を守るため、汚染リスクを回避するか、発生した場合には早期に検出するためのあらゆる努力をしなければなりません。当社では労働安全法に基づき年に一度の定期健康診断に加え、業務内容に応じた特殊健康診断を実施しています。産業医がこれらの結果をチェックし、業務中に講じられる予防措置の有効性を確保するために活用しています。さらに中外製薬は、バイオテクノロジー研究に携わる従業員の健康を保護するための世界的なガイドラインである世界保健機関(WHO)の実験室バイオセーフティマニュアル*1(バイオテクノロジー技術を利用した生物の利用に関する研究施設での取り扱いおよび運搬等に関するもの)や、国内法である遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)に準拠しています。

環境保護について

中外製薬は、バイオテクノロジーをベースにした医薬品の研究開発で使用される病原性微生物や遺伝子組換え生物を含む廃棄物が環境汚染の潜在的な原因になり得ることを認識しています。当社は、このような物質が人の健康に悪影響を及ぼさないよう、また環境中に漏出されないよう不活化後に廃棄する必要があると考えています。

実験室バイオセーフティマニュアルと国際条約であるカルタヘナ議定書*2は、バイオテクノロジーに関わる微生物、細胞、または遺伝子組換え生物の安全な取扱い方法を規定しています。これらのガイドラインと議定書に準拠することにより、中外製薬は適切に遺伝子組換え生物を取り扱い、環境に影響を与えないバイオテクノロジー研究を実施していきます。

生物多様性の保全は、バイオテクノロジーの急速なグローバルな台頭とともに、後世のために対処しなければならない最も重要な課題の一つです。中外製薬は、生物多様性条約*3および名古屋議定書*4が規定する生物多様性の保全と遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分に関する原則に賛同しています。

参考資料

*1. World Health Organization. Laboratory biosafety manual, 4th edition
https://www.who.int/publications/i/item/9789240011311

*2. Convention on Biological Diversity. Text of the Cartagena Protocol on Biosafety
https://bch.cbd.int/protocol/text/

*3. Convention on Biological Diversity. Text of the Convention
https://www.cbd.int/convention/text/

*4. Convention on Biological Diversity. Text of the Nagoya Protocol
https://www.cbd.int/abs/text/

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