中外製薬のマテリアリティ
共有価値創造とマテリアリティ
中外製薬では、経営の基本方針として掲げる「共有価値の創造」を進めていくうえで、重点的に取り組むべき16の重要課題をマテリアリティとして特定しました。
これは、私たちのミッションおよび事業が社会に及ぼす影響を踏まえて外部からの客観的視点を取り入れ、多方面の分析を通じて特定したものです。また、それぞれの進捗・達成度合いを測るための社内の評価指標も併せて設定しました。
これらの重要課題は、環境変化や中外製薬の事業活動の進展によって可変であり、定期的に見直しを行っています。サステナビリティは経営戦略の一環であり、さまざまな取り組みも統合的・戦略的にとらえ、活動を推進していくことが大切だと考えています。
- 01 独自の技術とサイエンスによる革新的な医薬品とサービスの創出
-
高度で持続可能な医療の実現に向けて、アンメットメディカルニーズを満たす革新的かつ高品質な医薬品とサービスを連続的に創出する。そのために、創薬を中心に独自の技術を生み出し、サイエンスと疾患バイオロジーの理解を深耕していく。
患者中心の価値観を礎として、ケアギバーや医療従事者等の周囲の人々にとっても負担軽減やQOL向上に繋がる医薬品とサービスの提供を目指す。デジタル等の先進技術を積極的に取り入れ、価値創造に向けたビジネスプロセスの高度化・高速化、アカデミアとの連携、オープンイノベーション、知的財産の高度な活用等、世界中の人々と手を取り合い、継続的に革新に取り組む。 - 02 個々の患者への最適なソリューション提供
-
患者さんにとっての価値を高めるエビデンスの創出と、個々の患者さんや医療現場の多様なニーズに応えるソリューションの提供に継続的に取り組み、これを強化・高度化させる。
患者さんやご家族、医療関係者など、医療に関わるステークホルダーと共に、一人ひとりに最適で真の価値向上をもたらす医療の提供に貢献する。 - 03 保健医療へのアクセス
-
アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品とサービスを主として、高度な専門医療を、それを必要とする世界の人々へ届けられるよう、地域医療連携の支援や医療のアクセス向上に貢献する。
新規技術の積極的な活用によるコスト削減や、患者さんにとって負担の少ない治療法デザインの推進等に取り組みながら、真に価値ある革新的な医薬品・サービスの提供に対する適切な評価を得て、連続的且つ持続的な医薬品とサービスの創出を実現する。 - 04 製品とサービスの品質保証と安定供給
- 治験段階からの製品ライフサイクルにおいて一貫して安定した製品・サービスと情報のクオリティを確保し、サプライチェーンにおけるトレーサビリティを高めるなど、医薬品の偽造及び低品質化の防止にも努めることで、顧客が安心して使用できる信頼性の高い製品・サービスを提供する。また、クオリティに関する基本的な考え方に基づき、バリューチェーン上のステークホルダーと共に有事においても堅牢なサプライチェーンを構築する。
- 05 患者および臨床試験被験者の安全
-
製品ライフサイクルを通じて安全性の管理を徹底し、患者さんと臨床試験被験者への健康被害等の負の影響を最小限にする。規制当局と協働し、適切なファーマコビジランス活動を実施することに加え、医療従事者への情報提供も徹底し、医薬品とサービスの適正使用を推進する。
特に製品の安全性の確保や開発品における臨床試験の実施においては、高い倫理性とサイエンスの見地から、適切にリスクと有効性を評価すると共にわかりやすく適切な情報提供を行う。 - 06 社会・コミュニティとの医療エコシステムの共創
-
患者中心の持続可能な医療の基盤を支えると共に、健康な社会を広げていくための取り組みを進めるべく、自社だけでは解決できない医療に関する社会課題に対して、患者団体・社会・コミュニティや政府・行政など様々な主体と協働しながらコレクティブ・インパクトを生み出す。
それらを通じて、医療・ヘルスケアを支える堅牢な基盤・エコシステムの裾野を広げ、維持発展へ向けて、業界の旗振り役として貢献する。 - 07 人財の育成と成長の支援
-
一人ひとりが能力を最大限発揮するためのキャリア開発や人財マネジメントの仕組みを整備し、世界中の人財を惹きつけ、自律的な学びと成長を後押しする。特に世界中のプレイヤーと共創できる、デジタル人財やサイエンス人財など戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得・育成に注力する。
将来的に業界全体の創薬力・研究開発力の向上にも貢献することを見据え、世界のヘルスケア産業のトップレベルに通用する人財を中外製薬から生み出す。 - 08 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
- 多様な考え方やアイデアを尊重し、共に挑戦してイノベーションを追求するインクルーシブな組織文化を醸成する。その際に障害となりえる不均衡を改善・是正しながら、多様な人財が活躍できる場を整備し、事業活動におけるあらゆる側面でDE&Iを推進する。こうした活動を通じて、多様性が尊重される包摂的な社会の実現に貢献する。
- 09 社員のウェルビーイング
-
社員が健康に、且つ安心し、安全に働ける職場環境を継続的に整備する。社員の健康は全ての事業活動の基盤と捉え、積極的に社員の健康の増進に資する活動を推進する。
また、社員一人ひとりのエンゲージメントを向上し、社員が主体的・自律的に働く中で働きがい・生きがいを持ち、心身ともに充実し、輝ける環境整備を推進する。 - 10 プライバシー保護とデジタルテクノロジーの責任ある利活用
-
規制を遵守し、公正な方法でデータを収集、使用すると共に、堅牢なマネジメントの仕組みを構築し、ステークホルダーと共に適切な個人情報保護および情報セキュリティに対応する。
環境変化を踏まえながら高い倫理性をもって、デジタルなどの新規技術を積極的に活用し、ステークホルダーや社会に範を示していく。 - 11 人権の尊重
-
一人ひとりが安心して自由に生活でき、幸福を追求できる権利として、個の尊厳ならびに人権を尊重する。
生命関連企業として、人権を侵害しないことは事業の根幹である。この考えのもと、事業活動に関わる社員およびバリューチェーン上の労働者の、労働に関する権利を含む人権の侵害を防止、是正、軽減する。
この取り組みを、情報開示を含め継続的且つ実効性高く、業界全体で進めていく。 - 12 コーポレートガバナンスとステークホルダーエンゲージメント
-
経営の意思決定と業務の執行・監督を分離した実効性の高い体制のもと、経営上重要な項目を適切に管理する。経営の自主性・独立性を確保し、持続的な成長と企業価値の向上を実現する。
企業のアカウンタビリティを重視し、透明性の高い、適切な情報開示に努めるともに、医薬品・サービスに関する丁寧且つ分かりやすいコミュニケーションを含む、ステークホルダーとの対話を通じて当社への社会の要請を捉える。 - 13 倫理、コンプライアンスとリスクマネジメント
-
あらゆる活動において高い倫理性を基礎とする。
法令を遵守し、変化する社会の要請にも応え、ステークホルダーとオープンで協働的な関係を構築して、透明かつ公正な企業活動に努める。バイオテクノロジーを含む生命倫理の基本的原則を定め、社員の理解浸透と遵守を図ると共に、継続的に且つ業界に範を示しながら適正な取り扱いに努める。
また、事業活動に係るあらゆるリスクを一元的に把握・整理・可視化し、統合的で効果的・効率的なリスク管理を図り、リスクアペタイト・ステートメントに基づいた活動を推進する。 - 14 気候変動・エネルギー対策
-
サプライヤーと一丸となって、GHG排出量の削減、持続可能なエネルギーの利用、及び情報開示に取り組み、気候変動対策に貢献する。
製造設備等の環境機能を高める技術革新及びそれに対する投資、フロン利用削減を含め、地球環境の再興に資する取り組みを、先進的且つ積極的に進める。 - 15 資源の循環促進・適切な水管理
-
廃棄物ゼロエミッションを含む、サーキュラーエコノミーに対応する事業活動設計と実行に積極的に努め、資源が有効利用される社会の実現に向けて貢献する。
海洋汚染等、プラスチックの社会課題を見据え、プラスチック廃棄物の削減やリサイクル循環の促進を推進する。
また、バリューチェーン全体で適切な廃水処理と消費の最適化に努め、水資源の管理保全・循環促進を推進する。 - 16 生物多様性保全
-
化学物質の適正使用および管理、大気汚染・土壌汚染の防止、有害化学物質使用量及び有害廃棄物の削減に取り組み、生物多様性への影響を最小限に抑えると共に、情報開示を実施する。
かけがえのない地球を次世代につなぐため、多様なプレイヤーと協働しながら、自然再生に取り組んでいく。
マテリアリティの策定プロセス
中外製薬では、2019年に初めてマテリアリティを策定し、環境変化を踏まえて毎年見直しをしています。
2024年には、サステナビリティを事業活動に中心に据え、マテリアリティの総合的な精査と見直しを実施しました。
2024年の見直しでは、医療関係者、患者団体、アカデミア、金融市場関係者、公益財団法人、NGOなど、幅広い外部ステークホルダーからの視点を積極的に取り入れると共に、事業活動を取り巻く将来の環境動向・リスクを踏まえ、当社が社会から期待され、求められている課題を網羅的に抽出しました。また、中外製薬が十分に満たせていない事項なども精査して取り入れています。
重要度の評価においては、「環境や社会が企業に与える影響(財務マテリアリティ)」と、「企業活動が環境や社会に与える影響(インパクトマテリアリティ)」のダブルマテリアリティの観点で精査しました。
マテリアリティはサステナビリティを含む経営上の重要な課題を整理し、経営の方向性や方針を定める上での基軸(重要な要素)として位置づけています。経営戦略の進捗や社会からの要請事項等を踏まえて、年次にレビューし、適宜最適な形にアップデートしていきます。
中長期環境分析・初期仮説の抽出

- 自社の経営の基本方針を確認し、既存の経営戦略や事業活動、また、取り巻く環境の動向等を整理した上で、マテリアリティ選定の方向性として、評価軸を整理する。
重要課題候補の選定

- 有識者インタビュー等を通じたインサイトや、外部環境ならびに内部環境の両視点での分析結果から、マテリアリティ候補を抽出する(ロングリストを作成し、ショートリストへ絞り込む)。
インパクトマテリアリティの評価

- 企業(事業活動)が環境や社会に与える影響を評価する(企業が事業活動を行うにあたって影響を与える事象・社会課題を評価する)。
財務マテリアリティの評価

- 環境や社会が企業に与える影響を評価する(業績等の重大な財務的影響を引き起こす、あるいは短中期的に将来のキャッシュフローに影響を与え得る、リスクと機会を評価)。
ステークホルダーとの対話

- 抽出及び重要度を評価した重要課題(案)の項目について、ステークホルダーとの対話を通じて得られたインサイトを基に、修正・精緻化する。
- 必要に応じて、インパクト並びに財務の両観点で再評価を行う。
マテリアリティ(重要課題)の決定

- 重要課題(マテリアリティ)についてストーリーを含めて、最終化する。
- 最終案について、経営会議検討を経て、取締役会にて決議する。