生物多様性保全
かけがえのない地球を次世代につなぐため、自然資本の保全・回復への取り組みに加え、研究開発型の製薬企業として、有害化学物質に対し独自の削減目標を設定し、製品のライフサイクル全体で化学物質リスクの最小化に取り組みます。
中期環境目標2030と2024年実績
KPI | 中期環境目標2030 (基準年2019年) |
2024年 実績 |
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有害化学物質 使用量 (SVHC*1) |
2021年以降、開発候補となる全ての自社品は、商用生産までにSVHCリスト化合物を使用しない製造プロセスを構築する | SVHC使用に関するガイドラインに基づいた有害化学物質使用量の削減状況をモニタリング |
有害廃棄物 排出量 |
2025年:5%削減*2 2030年:10%削減*2 |
0.4%増加 |
- *1 高懸念物質(Substances of Very High Concern)
- *2 延床面積あたり(賃貸物件を除く)
有害化学物質の削減
中外製薬グループでは人の健康や生態系に有害な影響を及ぼす恐れのある化学物質について、適切な管理・処理を行うことはもとより、使用量の削減に向けた取り組みを進めています。
有害廃棄物排出量の推移

2024年の有害廃棄物(特別管理産業廃棄物に該当する廃棄物)発生量は前年比19.5%増の985トンでした。有害廃棄物発生量の増加は、製造時に使用されるSVHC対象のN,N-ジメチルホルムアミドから、SVHC対象外の代替薬品を新たに切り替えたことが要因です。
有害化学物質使用量の削減
2021年以降、開発候補となるすべての自社品は、商用生産までにREACH規則のSVHC(高懸念物質)リスト化合物を使用しない製造プロセスを構築することを、中期環境目標に設定しました。2021年にSVHC使用に関するガイドラインを策定し、それに基づき有害化学物質使用量の削減を進めています。
PRTR法対象物質取扱量

(集計期間:2023年4月~2024年3月)
PRTR法*1対象物質の取扱総量は、33.3トンでした。製造時に使用されるSVHC対象のN,N-ジメチルホルムアミドについて、SVHC対象外の代替薬品を新たに採用することでN,N-ジメチルホルムアミドの使用量が大幅に減少しました。
- *1 「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」の略称
大気汚染防止および対策
中外製薬グループでは大気汚染防止法や都道府県条例に基づき、窒素酸化物(NOx)・硫黄酸化物(SOx)・ばいじんの排出量を測定し、排出基準に適合していることを確認するとともに、削減に努めています。
NOx排出量の推移

2024年のNOx排出量は2023年差6トン減の25トンでした。コジェネレーションシステムをNOx低排出型に更新するなど、大気汚染防止に努めています。
SOx・ばいじん排出量の推移

2014年下期より貫流蒸気ボイラー熱源設備の主燃料について、重油から都市ガスへの燃料転換を実施しました。この燃料転換により、SOx排出量は大幅に削減され、その低い水準を維持しています。また、全ての事業所から排出される大気汚染物質は、環境基準値を大幅に下回る数値で推移しています。
土壌汚染防止および対策
中外製薬グループでは土壌汚染対策法や都道府県条例に基づき、法令に準じた適切な土壌調査を実施しています。土壌汚染を確認した場合は行政と協議を行い、拡散防止、浄化対策などの適切な処置を実施しています。
水の保全活動
WET試験の実施
中外製薬グループでは、生物多様性保全の観点から、事業所排水の環境生物への影響を確認するため、法令による排水基準を満たすことはもとより、排水に含まれる化学物質の影響を総合的に把握・評価するために2013年よりWET*3試験の実施を開始しました。2024年についても、すべての工場・研究所において年1回のWET試験を実施し、問題がないことを確認しました。
水源保全活動
水は医薬品の製造にとって重要な原材料の一つであるとともに、持続的な社会に欠くことのできない重要な資源です。中外製薬グループは、水の使用量削減、排水管理に加え、生産拠点における森林整備を通じた水源保全活動を行うことで、当社の生産活動が地球環境に及ぼす影響を最小限に抑えるだけでなく、流域に住む方々と共同で使う豊かな水資源の保全に貢献していきたいと考えています。その取り組みとして、2019年から当社の藤枝工場で使用する水の水源となる静岡県榛原郡川根本町で、2022年からは浮間工場の水源となる埼玉県秩父郡横瀬町で、森林整備を通じた水源保全活動を継続的に行っています。2024年は川根本町で9月の灌木*5除去と11月の間伐作業*6を中外製薬グループの従業員とその家族が参加して実施しています。横瀬町の活動では、2023年に埼玉県および公益社団法人埼玉県農林公社と「埼玉県森林(もり)づくり協定」*4を締結し、この協定に基づき間伐作業を行いました。さらに2024年からは中外ライフサイエンスパーク横浜のある横浜市水道局と協定を締結し、「水源エコプロジェクトW-eco・p(ウィコップ)*7」に参加しています。当社の生産活動が地球環境へ与える影響を最小限に抑えるだけでなく、流域に住む方々と共に豊かな水資源の保全に貢献することを目指しています。水を大切に使い、きれいにして自然に還すことを事業活動の中で実践し、さらに水を育んでくれる森を整備する活動を今後も継続していきます。
活動の詳細は以下のページをご覧ください。
地球環境保全への貢献 ~生産拠点における水源保全活動2024~
- *3 全排水毒性(Whole Effluent Toxicity)。希釈した排水を入れた水中で、甲殻類(ミジンコ)、藻類、魚類(メダカなど)への影響を調べ、排水や環境水の安全性を総合的に評価する手法
- *4 埼玉県民共有の財産である森林を守り育てるため、森林づくり活動を行う企業や団体、活動場所を提供する市町村等及び埼玉県の三者が協定を結び、協力して森林づくりを行うもの
- *5 灌木:丈が短く、幹が発達しない樹木
- *6 間伐作業:森が茂りすぎるのを防ぐために、一部の木を伐採し適正な密度の健全な森林に導く作業です。間伐することで、それぞれの樹木へ日光を届けることができ、さらに低木の育成も促すことができるため、健全な森林に導くことができます。
- *7 横浜市水道局が、きれいな水を創り出す豊かな森林を育み、次世代に引き継ぐために、横浜市が所有する山梨県道志村の水源林を、企業や団体からの寄附により整備する取組み

