気候変動対策
中外製薬グループは、国際協定等を踏まえた挑戦的な目標を掲げ、温室効果ガスの排出量の削減とエネルギーの効率的使用の実現に向けて、取引先やアカデミアとの連携による新たな環境対策の創出および推進に取り組みます。
環境パフォーマンスデータの第三者保証
環境パフォーマンスデータは、その信頼性を高めるため第三者保証を受けています。KPMGあずさサステナビリティ株式会社により保証を受けた2023年度のデータには、第三者保証マークを付しています。
GHG*1排出量の削減
*1 GHG:Greenhouse Gas(温室効果ガス)
2023年GHG排出量
スコープ1、2およびスコープ3排出量はそれぞれ、47,991トン、3,458トンおよび1,136,969トンでした。スコープ1排出量は、当社グループが直接排出するCO2量です。これには、ガソリン、軽油、重油、都市ガス、LPGの使用に伴うCO2排出量およびフロン類、炭酸ガス等の排出量が含まれています。スコープ2排出量は、他者から供給された電力等のエネルギー使用に伴うCO2排出量です。サステナブル電力への転換を推進し、2023年の国内のスコープ2排出量はゼロとなりました。スコープ3排出量は、スコープ1、スコープ2以外の事業の活動に関連する間接的なCO2排出量です。2023年はスコープ3の87%をカテゴリ1(購入した製品・サービス)が占めていました。
なお、エネルギーおよびCO2排出量算定に用いた各種係数および各スコープ・カテゴリの算定範囲はサステナビリティに関する方針、データ集2023に掲載しています。
2023年機能別エネルギー起源CO2排出量(スコープ1、2)
最も排出量の多い機能は生産拠点である工場で34,013トン、次いで研究所11,569トン、支店1,589トン、本社17トンとなっています。また海外の研究・生産・営業拠点合計で3,600トン排出しています。
2023年エネルギー種別エネルギー起源CO2排出量(スコープ1、2)
最も排出量の多いエネルギー種は都市ガスで45,527トン、次いで電力2,007トン、ガソリン1,545トン、熱1,451トン、軽油200トン、LPG38トン、重油19トンとなっています。
エネルギー種別エネルギー起源CO2排出量の推移(スコープ1、2)
エネルギー起源のスコープ1、2排出量は、基準年比55%減の50,787トンでした。スコープ2排出量は2021年から電力使用量の多い工場・研究所において電力会社が提供するサステナブル電力への転換を開始し、さらに本社・支店で非化石証書を活用することで、国内グループ全体で100%サステナブル電力化を達成しました。海外の事業所でも、サステナブル電力化を推進しており、中外製薬グループ全体としては、中期環境目標2030に掲げるサステナブル電力比率100%の達成が見込まれています。中期環境目標2030を達成するためには、さらに、燃料使用に伴うCO2直接排出(スコープ1)の削減も必要となることから、既存設備の転換や設備統廃合・再設計なども検討しています。
気候変動という世界的な社会課題に対応するために、さらに先を見据えて、2050年にCO2排出ゼロにするという長期的な目標を設定し実行することで、社会課題の解決に積極的に貢献します。
スコープ3排出量の推移
* カテゴリ2:資本財の消費税率の集計に誤りがあり、2019年から2022年の値を修正しています。(2019年:誤)69,472t-CO2→正)67,542 t- CO2、2020年:誤)97,997t- CO2→正)93,543 t- CO2、2021年:誤)63,723t- CO2→正)60,827 t- CO2)、2022年:誤)513,271t- CO2→正489,941 t- CO2)
スコープ3排出量は、基準年比1.2倍の1,136,969トンでした。カテゴリ1(購入した製品・サービス)では、製品・サービスの購入量の減少およびサプライヤーによるCO2排出量削減が起因となり、前年比41%削減しています。また、カテゴリ2(資本財)においては2022年、中外ライフサイエンスパーク横浜竣工に伴い大幅に増加していましたが、2023年はその増加分が減少し、前年比84%減少しています。サステナブルな社会の実現のためには、サプライチェーン全体でのCO2排出量の削減が重要であると認識しています。そのため、2030年までに基準年比30%削減という目標を設定し、CO2排出量削減目標を設定していないサプライヤーに対し、削減目標設定とその実施を働きかけていきます。
エネルギー消費量の削減
エネルギー消費量の推移
2023年のエネルギー使用量は2,214TJ、延床面積あたりのエネルギー消費量は、基準年比14%減、前年比27%増の6.2 GJ/m2でした。2022年は新たに竣工した中外ライフサイエンスパーク横浜と、閉鎖予定の鎌倉研究所・富士御殿場研究所が同時に稼働していたため、延床面積が増加し、それにより延床面積あたりのエネルギー消費量が減少しました。一方、2023年は鎌倉研究所・富士御殿場研究所の閉鎖に伴い延床面積が減少しましたが、それぞれの研究所が2023年6月と7月まで稼働していたため、延床面積あたりのエネルギー消費量は増加しました。中期環境目標2030で設定した、延床面積あたりのエネルギー消費量2019年比で2025年5%削減、2030年15%削減という目標達成に向けて、高エネルギー効率設備の導入、燃料転換、エコカーの導入や、日々の事業活動における省エネ運動等によりエネルギー消費量を削減する取り組みを進めています。
フロン類の使用中止/転換
フロン保有量の推移および2023年度の漏洩による補てん量
2023年のフロン保有量は、2022年差9,684トン減の43,845トンでした。これは鎌倉・富士御殿場研究所の閉鎖に起因しています。
当社グループは、2030年にフロン保有量100%削減を達成するために、代替技術の検証や、新棟建設・設備更新時の自然冷媒設計等の具体的なアクションプランを定めた取り組みを進めています。
例えば、中外ライフサイエンスパーク横浜の福利厚生棟(にじかけ保育園)では、空調設備会社と議論を重ねて、中外製薬グループとして初めて自然冷媒であるCO2冷媒を使用する居室用の空調システムを導入しました。また、中外ライフサイエンスパーク横浜の研究棟では、メーカーと協力し、自然冷媒を使用した遠心機や製氷機の導入を行いました。今後も、自然冷媒を使用した機器への更新を進めるとともに、建築会社や設備・機器メーカーと連携して技術開発を積極的に行います。これにより、温室効果の小さい自然冷媒への転換を促進し、継続的に気候変動対策に取り組んでいきます。
また、設備の老朽化などによる漏洩対策として、2022年から設備の更新を進めてきました。その結果、2023年の機器に補てんした量(漏洩フロン量)は476 t-CO2eにまで減少することができました。今後も、フロン類の漏えい量の把握を通じ、適正な維持管理を行います。
居室空調へのCO2冷媒の採用の詳細は以下のページをご覧ください。
新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」 福利厚生棟における自然冷媒空調システム採用(中期環境目標フロン類使用量2030年100%削減に向けて)
エコカー導入状況
営業車両総燃料使用量の推移
2023年末のエコカー導入率は93%になり、総燃料使用量は基準年比45%削減の23,021GJでした。コロナ禍で制限されていた営業活動が徐々に回復したことにより、2022年からは4%増加しています。当社グループはハイブリッドカーや高燃料効率化車両などのエコカーを営業車両に導入する取り組みをさらに強化するとともに、2030年営業車両総燃料使用量75%削減に向け、電気自動車の導入等を検討していきます。
気候変動対策に関する認証・情報開示
- TCFD*1提言に基づく情報開示:2023年時点分析
- SBT*2:2021年11月認定
- CDP*3:気候変動および水セキュリティ Aリスト選定
- *1 TCFD:自社への財務的影響のある気候関連情報を開示すること
- *2 SBT(Science Based Targets, 科学的根拠に基づく目標):パリ協定が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと
- *3 CDP:英国で設立された環境情報開示を推進する、国際的な非政府組織(NGO)