中外製薬グループ人権への取り組み
人権尊重の基本的考え方
中外製薬グループは、「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」ことをその存在意義(Mission)としています。そして、人権の尊重がその存在意義を実現するために重要で不可欠な要素であると認識し、中外製薬グループ コード・オブ・コンダクトに「事業活動のあらゆる場面において、人権を尊重して行動」することを掲げています。
我々は2019年に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて、「中外製薬グループ 人権方針」を策定しました。中外製薬グループは、「国際人権章典」や国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関する宣言」などの人権に関わる国際規範、並びに国連グローバル・コンパクトの10原則を支持・尊重し、人権尊重の理念に基づきビジネスを展開しています。
推進体制
中外製薬株式会社のリスク・コンプライアンス部は、同部担当執行役員を統括責任者とし、グループ全体における人権尊重方針の策定、人権デュー・ディリジェンスの実施、人権侵害の是正プログラムの整備などを担っています。人権デュー・ディリジェンスの結果は、経営会議の下部機関であるコンプライアンス委員会にも報告され、必要に応じて人権リスクの防止・軽減・是正に関する措置が指示されます。重要な人権方針・施策や人権侵害事案については経営会議、取締役会にも報告されます。また、国内外の各子会社は、その社長の責任の下で、人権に関する国際規範や適用する現地法令に基づく社内規程の制定、自社における人権尊重のための組織体制の整備および従業員への定期的・継続的な教育・啓発を行い、その取り組み状況を中外製薬株式会社の統括責任者に報告する体制としています。
重要な人権課題およびそれに対する中外製薬の取り組み
2021年、中外製薬は国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく人権デュー・ディリジェンスの取り組み内容に関する関連部署のヒアリングを行いました。その結果を踏まえ、 2つの評価軸(深刻度、発生可能性)からリスクを評価し、中外製薬グループとして重要な人権課題を5つの領域に特定しました。
2024年は、外部人権専門家の協力の下で、人権デュー・ディリジェンスに関する質問票を用いて、これらの重要な人権課題に関連する人権テーマへの取り組み状況を調査しました。以下は、中外製薬グループの重要な人権課題に関連する人権テーマおよび各人権テーマに対する取り組みを記載しています。
重要な人権課題 | 関連する人権テーマ | これまでの人権尊重の取り組み |
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患者さんの安全 | 臨床試験の管理 品質安全の確保 偽造医薬品の流通撲滅 使用・廃棄段階での事故防止と対応 |
臨床試験(治験)の管理 |
医薬品の信頼性を高めるための取り組み | ||
医薬品リスク管理計画に基づくリスクマネジメント、安全性コミュニケーション | ||
偽造医薬品対策への取り組み | ||
患者団体とのダイアログ、患者さんのリテラシー向上のための疾患啓発、医療参画のアドボカシー活動支援 | ||
患者中心のさまざまな取り組み | ||
個人情報とプライバシー | 個人情報とプライバシーの保護 | 個人情報やプライバシーの管理 |
ITセキュリティ・情報管理への取り組み | ||
ヒト由来ゲノムデータ等の適切な保管や取り扱いのための取り組み | ||
サプライチェーンにおける人権 | 取引先拠点での有害物質の流出 取引先拠点での生物学的海賊行為 強制労働、児童労働 労働安全衛生、雇用・労働条件 |
サプライヤーに対するEHS・コンプライアンスリスク評価の実施 |
地球環境への取り組み | ||
従業員の職場における人権 | 従業員へのパワーハラスメント 取引先従業員への優越的行為 従業員へのカスタマーハラスメント 差別・長時間労働 |
ハラスメントのない職場づくりへの取り組み |
就業環境の整備、長時間労働削減の取り組み | ||
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I) | ||
主体的な挑戦・活躍を可能にする環境整備 | ||
メンタルヘルス不調者の復職支援、がん治療に関する就労支援の取り組み | ||
LGBTQアライの登録、理解促進のためのe-learningやセミナー開催の取り組み | ||
ヘルスケアへのアクセス | 緊急時の医薬品の安定供給 グローバルヘルスの向上 その他(地方地域・独居高齢者など) |
製品安定供給に対する取り組み |
治療法がない疾患に対する医薬品開発及びアクセスの向上、持続的な保健医療アクセスの向上 | ||
分散化臨床試験(decentralized clinical trial:DCT)の実施体制構築 | ||
小児医薬品開発など脆弱な患者群や希少疾患への取り組み |
サプライチェーン上の人権への取り組み
取引先に対する人権尊重の取り組みとしては、グローバル製薬企業で構成される非営利団体PSCI(Pharmaceutical Supply Chain Initiative)に加盟し、中外製薬グループが取引先に対して尊重し遵守していただきたい事項を行動規準として明文化した「中外製薬グループ サプライヤー・コード・オブ・コンダクト」を策定し、新たに取引先との契約を締結する際、趣旨や概要を説明したうえで、同意書を提出していただいています。
その内容は、PSCIが策定した「責任あるサプライチェーン・マネジメントのための製薬業界の原則(Pharmaceutical Industry Principles for Responsible Supply Chain Management)」に基づく、倫理、人権・労働、安全衛生、環境ならびに関連するマネジメントシステムに関して、尊重し遵守することを求めています。
加えて、重要な取引先については監査を実施し、確認された所見に対しては是正計画の提示を求め、定期的にモニタリングを実施する活動を行っています。
人権に関する相談・通報と対応状況
中外製薬グループでは、中外製薬グループのすべての従業員(契約社員、派遣社員を含む)が、人権の尊重を含む行動規準に関する相談や、行動規準の違反および違反の疑いを通報できる窓口を設置しています。対応に際しては、相談者・通報者の意向を尊重しながら、秘密厳守のもとで公正な調査を行い、問題解決につなげています。また、相談者・通報者保護の観点から、報復などの不利益行為は規程により禁止しています。
なお、2022年6月に施行された改正公益通報者保護法に則り「公益通報者保護に関する規程」を制定し、社外からの問い合わせ窓口の設置や1年以内の退職者からの通報を受ける体制を整えました。
受け付けた相談・通報のうち、調査が必要と判断した案件については適切に調査を実施し、違反が認められた事例に対しては適切に対応しています。また、調査の結果、2023年度は5件の懲戒処分を科しています。
労使関係
中外製薬グループには、中外製薬株式会社および国内関係会社(中外製薬工業株式会社、株式会社中外臨床研究センター、中外ビジネスソリューション株式会社、株式会社中外医科学研究所)を対象とした中外製薬労働組合が組織されており、2023年12月末現在の組合員数は4,559名となっています。
中外製薬グループと中外製薬労働組合は、さまざまな階層で労使協議会を定期的に開催し、コミュニケーションの向上を図り、信頼をベースとした協力的で健全な労使関係を築いています。
英国現代奴隷法への対応
当社英国現地法人は、2015年に英国で施行された現代奴隷法への対応として、「Modern Slavery & Human Trafficking Statement」をそのウェブサイトで公表しています。
- Chugai Pharma Europe Ltd.
https://www.chugai.eu/human-rights/
エンゲージメント
中外製薬は、経済人コー円卓会議(CRT)日本委員会が主催するステークホルダー・エンゲージメント・プログラムに2018年から7年間参加し、マルチステークホルダーとの対話と協働を通じた「業界毎に重要な人権課題」の策定に参画するとともに、サプライチェーンを含む当社の事業活動に関連する人権課題の見直しを行い、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。
CRT日本委員会:ステークホルダー・エンゲージメントプログラム(SHE)
また、東京人権啓発企業連絡会に加盟し、企業の立場から同和問題を始め、さまざまな人権問題の解決に向けて取り組んでいます。
他に、一般財団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン、フロンティア・ネットワークにも加入しており、最新の人権尊重に関する情報を収集すると共に、他業界企業とのネットワークの構築と連携の強化を図っています。