2024年04月18日

ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援

~ 2022-2023年 活動報告 ~

患者さん中心の持続可能な医療 グローバルヘルス 社会貢献 医療

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての個人とコミュニティが、経済的困難に陥ることなく、あらゆる種類の必要不可欠で質の高い保健サービスを享受できることを意味します。中外製薬は、ブータンにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジのさらなる進展に貢献するため、2021年からブータン子宮頸がん撲滅プロジェクトを支援しています。中外製薬からの支援金は、以下に報告するブータン保健省が主導する国家がん検診プログラムの実施を補完する形で活用されています。

背景
世界では毎年1,500万人が非感染性疾患(NCDs)により70歳未満で死亡しており、その86%が開発途上国で発生しています*1。ブータンも例外ではなく、NCDsは2019年に報告された死亡原因の71%*2を占めます。なかでも子宮頸がんはブータン女性が最も罹患するがんであり、ブータンの住民ベースのがん登録によると、年齢調整罹患率(AAR)は女性10万人あたり20.5人、死亡率は女性10万人あたり5.3人と、アジアで最も発生率の高い国の一つとなっています*3。そこで、ブータンでは、子宮頸がんの増加傾向を踏まえ、子宮頸がんの撲滅を目指すプロジェクトを立上げ以下の取り組みを中心に行っています。

  • アウトリーチスクリーニングキャンプや医療施設におけるスクリーニングツールの1つであるHPV検査の浸透を通じて、高感度HPV検査を用いた子宮頸癌スクリーニングの普及率を向上させる
  • 子宮頸がん検診・フォローアップの質の向上と女性の受診率を向上させる

このブータン子宮頸がん撲滅プロジェクトは、保健省の国家的フラグシップ癌スクリーニングプログラムと協力して、生殖・母子保健プログラムが主導し、 3つのフェイズで実施されます。


2021~2022年のプログラム(第一フェイズ)
実施の最初の年(2021~22年)は主に一次予防に焦点を当て、特にスクリーニングの普及率が低い選択された地域における、スクリーニングの推進に注力しました。これは、HPV-DNA検査のような高感度の検査を用いたアウトリーチスクリーニングキャンプを通じて実施されました。このアウトリーチスクリーニングキャンプは、全国的スクリーニングにおける主要プログラムの構成要素です。この結果、スクリーニング普及率はHPV-DNA検査を受ける対象となっている全ての女性の90%に到達しました。HPV DNA検査では、9.23%の女性が、子宮頸癌の最も一般的な原因であるHPV16型及び18型陽性と検出されました。HPV陽性であった全ての女性は、コルポスコピー(膣拡大鏡検査)の確定診断を受け、23.8%は未治療のまま放置すると5~10年以内に浸潤癌に発展する可能性がある前癌病変を有することが報告されました。

参考)昨年の活動報告書へのリンク:ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援~ 2021-2022年アウトリーチスクリーニングキャンプの結果報告 ~


2022~2023年のプログラム(第二フェイズ)
2022-23年は、子宮頸がん検診やがん前治療における医療従事者の能力強化を目的とした研修プログラムを通じた専門性の継続的な育成が実施されました。検査室の能力と質の強化にも重点が置かれ、地域病理センターでの病理サービスの能力を強化しました。さらに、特定訓練プログラムを介して手術能力を拡大することにも努めました。

2022~2023年の結果
診断サービスの品質、子宮頸がん検出、治療および管理に関するサービス提供者の知識・能力強化が達成されました。

能力開発トレーニングの様子 (写真:UNFPA提供)

  1. 3つの地域紹介病院の細胞技師と病理学者の90%(26人)が、実地トレーニングと実際のスライド検査を通じて液体ベース細胞診の品質向上を学びました。
  2. 3つの地域紹介病院の子宮頸部組織病理学的検査の15人の組織技師と研究室助手全員が、子宮頸組織標本の処理、埋め込み、切片作製、および染色のスキル向上のためのトレーニングを受けました。このトレーニングには、安全プロトコル、品質管理対策、異常の特定、染色技術の適用、および診断結果の品質向上のための安全プロトコルへの遵守も含まれています。この能力開発は、彼らの継続医学教育(CME)にも貢献しました。



  1. 子宮頸がんの診断と治療の両方に特化した専門サービスを利用出来るようにするために、国立紹介病院からの産婦人科腫瘍学者と産婦人科医に、産婦人科がん手術のオブザーバー・フェローシップ研修が提供されました。このフェローシップ研修により、現場で働く唯一人の産婦人科腫瘍学者の、子宮頸がんの根治的子宮摘出術や卵巣および子宮内膜がんの腹腔鏡手術を実施するための技術の向上につながりました。これには、開腹手術および腹腔鏡/ロボットアプローチの両方が含まれます。さらに、国立紹介病院の病理学者が、病理学者の国際会議に参加し、女性の生殖器系の細胞診断および産婦人科細胞学におけるHPV検査に関する専門知識を向上させ、外部の専門家とネットワークを確立するプラットフォームを提供しました。


Dr. Namkah Gynecologic Oncologist and Obstetrician, with Prof. Artem Stepanyan at the NAIRI Medical Center.



(参照)

*1 WHO Noncommunicable diseases
  https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases
*2 Annual Health Bulletin 2020, Ministry of Health, Bhutan.
  https://www.moh.gov.bt/wp-content/uploads/ict-files/2017/06/health-bulletin-Website_Final.pdf
*3 Cervical Cancer Elimination - UNFPA Asia-Pacific
  https://asiapacific.unfpa.org/sites/default/files/pub-pdf/bhutan_final_16_12_21.pdf

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