大腸
目次
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大腸について
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大腸が病気になると…
大腸について
正面
黄色の部分がぜんぶ大腸で、消化の最終段階を行う場所です。
大腸とは
大腸は、水分やミネラルを吸収し、便を作るはたらきをしています。食事をしてから便が排泄(はいせつ)されるまでは通常24〜72時間かかります。大腸の長さは1.5メートルほどで、盲腸(もうちょう)、結腸(けっちょう)、直腸(ちょくちょう)に分けられます。
大腸はどんなはたらきをしているの?
便を溜(た)めておく、大切なはたらきをしています。


便は直腸に溜(た)まっています。
大腸のしくみ
盲腸(もうちょう)
盲腸には、小指くらいの大きさの虫垂(ちゅうすい)という袋(ふくろ)があります。盲腸は退化した器官で、特別なはたらきはしていないと考えられています。
結腸(けっちょう)
結腸は、便を作るはたらきをしています。水分を吸収し、便を作るほか、ナトリウムなどの電解質※(でんかいしつ)を吸収しています。さらに、小腸で消化しきれなかった食物繊維などを発酵させ、便を直腸へ送ります。
※電解質:水などに溶(と)かしたとき、正と負のイオンに分かれて電気伝導性をもつ酸や塩などをいいます。
直腸(ちょくちょう)
直腸は、便を一時的に溜(た)めておくはたらきをしています。直腸が便でいっぱいになると排泄(はいせつ)したくなり、腸の一部や腹部の筋肉が収縮し、同時に肛門(こうもん)の筋肉が開いて便が外に押し出されます。
大腸が病気になると…
どうしておなかはゆるくなるの?
水分を吸収しきれないで排便(はいべん)するからです。


からだを冷やしすぎてもおなかが痛くなります。
「下痢(げり)」とは
どんな病気?
便にふくまれる水分が多くなり、液状や泥状(どろじょう)になった状態です。
原因は?
細菌(さいきん)やウイルスに感染していたり、食べすぎ・飲みすぎ、からだの冷え、大腸・小腸の病気、くすりの副作用などさまざまな原因があります。精神的なストレスや緊張(きんちょう)によって起こることもあります。
下痢になったら
- 安静にする。〈きつい服やベルトをゆるめる〉
- 水分を少しずつとる。
- 消化がよく、栄養価の高い食事を少しずつこまめにとる。
- 次のものは控(ひか)える:油っこいもの、冷たいもの、刺激(しげき)の強いもの〈アルコール、香辛料(こうしんりょう)、塩分の強いものなど〉、乳製品、食物繊維(しょくもつせんい)の多い食品〈こんにゃく、きのこなど〉。
- 排便(はいべん)後はていねいに手洗いをする。
治療(ちりょう)するには?
原因となる病気がある場合、食中毒や感染症(かんせんしょう)などが特定された場合には、その治療を行います。症状(しょうじょう)に合わせて腸のはたらきを抑(おさ)える薬を使うこともあります。食事やストレスが原因の場合には、それを取り除くことによって症状が治まることもあります。
注意
嘔吐(おうと)や発熱がある場合、便に血液が混ざっている場合、赤い・黒い・白い・緑っぽいなど、色がいつもと違う場合、くさったようなにおいがする場合、下痢をくりかえす場合などは、何らかの病気が原因になっていることもありますので、早めに医師に相談しましょう。
どうして便秘になるの?
水分がなくなってから排便(はいべん)するからです。


「便秘(べんぴ)」とは
どんな病気?
便が出る回数が少ない、便が固い、十分な量が出ないなど、排便(はいべん)に困難がともなう状態です。3日以上便が出ないときも便秘と考えられますが、2〜3日に1回の排便でもそれが規則的に習慣になっていて、おなかに痛みや不快感がなければ便秘とはいわない場合もあります。1日1回の排便があっても、自分にとって満足な排便ができないときには便秘といえる場合もあります。
原因は?
さまざまな原因が考えられます。
- 生活習慣や環境(かんきょう)、食事のとり方が変わったとき。食事の量や食物繊維(しょくもつせんい)がたりない、運動不足、便意(べんい)を我慢(がまん)してしまうとき。ストレスなどによって、腸のはたらきが低下してしまう場合。
- 大腸がんをはじめ、さまざまな病気により腸が狭(せま)くなっている場合。
- 薬の副作用や、脳や神経の病気などが原因となっている場合など。
便秘を予防・改善するには
- 規則正しくバランスの良い食事をとる
- 食物繊維(しょくもつせんい)の多い食品もとる(野菜、いも類、きのこ類など)
- 適度な運動を定期的にする
- 便意がなくても毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつける
注意
血便や腹痛がある場合や、規則的に排便があったのに便秘になったときなどは、腸の病気も考えられます。気になる症状(しょうじょう)があるときは、早めに医師に相談しましょう。
「盲腸」って病気の名前でもあるの?
正確な病名は"虫垂炎(ちゅうすいえん)"です

「虫垂炎(ちゅうすいえん)」とは
どんな病気?
俗(ぞく)にいう盲腸(もうちょう)です。虫垂が炎症(えんしょう)を起こした状態です。10〜20代に多い病気ですが、ほかの年代でも発症(はっしょう)します。
主な症状(しょうじょう)は?
おなかや、へそのまわりの痛み、発熱、吐き気(はきけ)、食欲がないなどの症状があらわれます。痛みは、咳(せき)やくしゃみをしたり、からだを動かすと強くなり、痛む場所がだんだん右下腹部へ移っていきます。重症(じゅうしょう)になると虫垂が破れて、急性腹膜炎(きゅうせいふくまくえん)を起こすこともあるので注意が必要です。
原因は?
原因は、まだはっきりとはわかていません。便や異物などが虫垂の中に詰(つ)まって炎症(えんしょう)を起こすといわれています。
治療(ちりょう)するには?
症状が軽い場合は抗生物質(こうせいぶっしつ)で炎症を抑(おさ)えることもありますが、ほとんどの場合は手術を行ない、虫垂を取り除きます。虫垂が破裂(はれつ)している場合はおなかを大きく切る手術が必要で、治療に時間もかかります。くわしくは医師に相談しましょう。
ほかの大腸の病気は?
「過敏性大腸症候群(かびんせいだいちょうしょうこうぐん)」とは
どんな病気?
過敏性大腸症候群(かびんせいだいちょうしょうこうぐん)は、大腸に明らかな異常がないにもかかわらず、腹痛やおなかの不快感、便秘や下痢などの便通異常がくり返し起こる病気です。命に関わる病気ではありませんが、日常生活に支障をきたすこともあります。日本でも多くの人が悩んでおり、特に若い世代や女性に多い傾向があります。
主な症状(しょうじょう)は?
おなかの痛みや張り、便秘や下痢、あるいはその両方をくり返すのが特徴です。排便によって痛みがやわらぐことが多く、便の形や回数が変わることもあります。症状はストレスや食事の影響を受けやすく、体調や環境によって強くなったり落ち着いたりします。
原因は?
はっきりとした原因はわかっていませんが、ストレスや自律神経の乱れ、腸の動きの異常、腸内細菌のバランスの変化などが関係していると考えられています。また、感染性腸炎のあとに発症することもあります。心理的な要因と身体的な要因が複雑に関係しているといわれています。
治療(ちりょう)するには?
過敏性大腸症候群は症状をコントロールすることが治療の中心です。生活習慣の見直し、ストレス対策、薬による治療、食事療法を組み合わせて治療します。
「潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)」とは
どんな病気?
潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)は、大腸の内側に炎症が起こる病気で、大腸の粘膜が赤くただれたり、傷ついてしまったりします。長く続く病気で、症状がよくなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。日本では若い人に増えていて、「指定難病」にもなっています。
主な症状(しょうじょう)は?
血が混じった便が出る「血便」や、何度もトイレに行きたくなる「下痢」、おなかの痛み(腹痛)があります。さらに、発熱や体重の減少、全身のだるさといった全身症状がみられることもあります。これらの症状は強く出る時期(活動期)と落ち着く時期(寛解期)があり、個人によって症状の程度や続く期間はさまざまです。
原因は?
潰瘍性大腸炎のはっきりとした原因はまだわかっていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。たとえば、自分の体を守るはずの免疫が誤って大腸を攻撃してしまう「免疫の異常反応」や、もともとの遺伝的な体質、腸内細菌のバランスのくずれが挙げられます。さらに、ストレスや食生活などの生活環境も影響している可能性があるとされています。
治療(ちりょう)するには?
今のところ、完全に治す治療法はありませんが、薬や食事や生活の工夫などで症状をコントロールすることができます。
「大腸がん」とは
どんな病気?
日本でも患者数が急速に増え、胃がん、肺がんを抜いて最も多いがんになっています。特にS字結腸などの結腸群に6割以上、次いで15〜20cmほどの直腸に3割以上の割合で発生し、患者数の比率では、男性がやや女性を上回っているといわれています。
検査や診断(しんだん)方法は?
直腸への触診(しょくしん)や、大便に血液が混じっていないかを調べます。またバリウムをおしりから注入するX線造影(ぞうえい)検査や内視鏡による検査をおこない、疑いがある場合は組織を採取して顕微鏡(けんびきょう)などでくわしく調べます。
注意
他のがんとくらべ、比較的ゆっくり進行する場合が多いものの、定期的な検査により早めに見つけて治療(ちりょう)することが重要です。早期の大腸がんは自覚症状(しょうじょう)が出にくいために、40歳(さい)以上になったら、積極的に検診(けんしん)を受けましょう。
監修:公益財団法人 日本学校保健会