くすりを創る

目次

日本では、ひとつの薬ができるまでに、10~15年もの歳月を要します。その間にかかる費用は約3500億円と言われています。新薬の開発成功率は約3万分の1とも言われ、ほとんどの候補物質は途中の段階で断念されています。
新薬の開発はとても難しく、さらに、昔と比較すると研究開発に要する時間は長期化する傾向にあります。

1 創薬研究(2〜3年)

天然素材(植物・鉱物・動物など)から抽出したり、化学合成・バイオテクノロジーなどを駆使した方法によって、薬の候補となる化合物をつくり、その可能性を調べる研究です。
最近ではゲノム情報の活用も進められています。対象となる新規物質の性状や化学構造を調べ、スクリーニング試験を行い、取捨選択します。

  • アイデアの着想
  • 新規物質の創製
  • 理化学的研究
  • 候補物質の選定
    (スクリーニング)

2 開発研究(3〜5年)

薬になる可能性のある新規物質を対象に、動物や細胞などを使って、薬効や毒性を研究します。物質の体内動態(吸収・分布・代謝・排泄の過程)に関する試験も行います。また、非臨床試験と並行して品質や安定性に関する試験も行われます。

  • 薬効薬理試験
  • 薬物動態試験
  • 毒性試験

3 臨床試験(治験3〜7年)

非臨床試験を通過した薬の候補(治験薬)が、人にとって有効かつ安全なものかどうかを調べるのが臨床試験(治験)です。治験は3段階に分かれ、病院などの医療機関で、健康な人や患者さんを対象に同意を得たうえでくり返し試験を行います。その後、データを収集して、薬としての可否を判断します。

  • 第1相試験
  • 第2相試験
  • 第3相試験

4 承認・発売(1〜2年)

有効性・安全性・品質が証明された後、厚生労働省に対して承認を得るための申請を行います。学識経験者などで構成する薬事・食品衛生審議会などの審査を通過した後、薬価基準に収載され、新薬として製造・発売することができます。

  • 承認申請
  • 承認
  • 製造販売

このように、薬ができるまでには、基礎研究、非臨床試験、臨床試験など、長い年月を必要とします。そして、多くの方々のご協力があって初めて新薬が誕生します。


監修: 慶應義塾大学名誉教授 望月 眞弓先生