ひ臓
目次
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ひ臓について
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ひ臓が病気になると…
ひ臓について
正面
ひ臓は胃のちょうど後ろ側にあります。
ひ臓とは
ひ臓は、脾臓(ひぞう)と書きます。血液中の古くなった赤血球をこわすはたらきをしています。また、からだの中に入ってきた病原菌(びょうげんきん)や細菌(さいきん)などとたたかう抗体※(こうたい)を作ったり、新しい血液を溜(た)めるはたらきをしています。
※抗体(こうたい):生体内に抗原(こうげん)〈抗体を作らせる原因となる物質=病気の原因になるもの〉が侵入(しんにゅう)したとき、それに対応して生成され、その抗原に対してのみ反応するたんぱく質。免疫体(めんえきたい)ともいいます。
ひ臓ってどんなはたらきをしているの?
古くなった赤血球をこわしたり、ひ臓のなかにあるリンパ球と形質細胞(けいしつさいぼう)で、病原菌(びょうげんきん)などと戦う抗体(こうたい)を作っています。

白血球(はっけっきゅう)の一部であるマクロファージ ※1は、 役目を終えた赤血球(せっけきゅう)をこわすはたらきをします!

※1 マクロファージ
白血球の一部。動物体のすべての組織に存在するといわれているアメーバー状の大形細胞。
※2 リソソーム
細胞(さいぼう)内で消化や分解などの役割を果たす細胞小器官の一つ。
古くなった赤血球をこわす
血液中の赤血球の寿命(じゅみょう)は約120日といわれていて、古くなると酸素を運ぶことができなくなってしまいます。ひ臓は古くなった赤血球にふくまれるヘモグロビン〈たんぱく質の一種。からだのなかで主に酸素を運ぶ物質〉のなかから鉄分を取り出し骨髄(こつずい)に送ります。鉄分は新しい赤血球を作るために使われています。また、ひ臓でヘモグロビンの一部をビリルビンという物質に変えて、肝臓(かんぞう)に送ります。ビリルビンは肝臓でグルクロン酸という物質と結合し、胆管(たんかん)を通り便の中へ排泄(はいせつ)されます。

病原菌(びょうげんきん)とたたかう抗体は、抗原(こうげん)をうまく利用して作られています。


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抗原(細菌やウイルスなど)が、からだの中へ入ります。
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からだの中へ入った抗原をマクロファージが吸収します。
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マクロファージは、リソソームの力で抗原をこわします。
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この時マクロファジーからうまれる刺激(しげき)がリンパ球・形質細胞(抗体を作り出す細胞)に変化をあたえます。
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リンパ球・形質細胞は、抗原をこわす抗体〈ガンマグロブリン〉を作ります。
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作られた抗体は、抗原と結びつくと抗原をこわすことができます。

【抗体と抗原が結びつく様子】

同じ種類の抗原(こうげん)が、からだの中へ入ってきても、リンパ球・形式細胞がすぐにたくさんの抗体(こうたい)を作り出し、こわすことができます。
白血球の一部であるマクロファージは細菌といつもたたかっています。
細菌(さいきん)やウイルスと たたかう抗体(こうたい)を作る
ひ臓の中にあるリンパ小節※(しょうせつ)ではリンパ球が作られています。ひ臓の中のリンパ球と形質細胞(けいしつさいぼう)によって、からだの中に入ってきた細菌やウイルスとたたかう抗体を作ります。抗体によって細菌やウイルスはこわされます。
※リンパ小節
リンパ小節はひ臓のなかの、ろ胞(ほう)動脈という細動脈のまわりで作られています。リンパ小節のなかにはたくさんの細胞があり、その大部分がリンパ球です。新しいリンパ球は、芽中心(がちゅうしん)の中で作られます。

ひ臓と血液の関係は?
ひ臓は酸素をふくんだ血液を溜(た)めるはたらきもしています。

血液をこわすだけではなく、貯蔵庫の役割もしています。
血液を溜(た)める
ひ臓は赤血球をこわすはたらき以外に、酸素をふくんだ血液を溜(た)めるはたらきもしています。運動をしたときなど、からだが酸素を必要としたときに、貯えておいた血液を血液循環の中に送り出しています。

【食後に走るとおなかの横(わきばら)が痛くなるのは?】
ひ臓が血液を使って消化の手伝いをしているとき、運動することで、ひ臓の血液が不足して縮まってしまうともいわれています。
ひ臓が病気になると…
ひ臓が病気になるとどうなるの?
ひ臓が腫(は)れて大きくなってしまうと、ひ腫(しゅ)になります。

他の病気の影響(えいきょう)をうけて大きくなります。ひ臓の病気は少し特殊(とくしゅ)です。
「ひ腫(ひしゅ)」とは
どんな病気?
ひ腫は脾腫(ひしゅ)と書きます。ひ臓が腫(は)れて大きくなる状態です。ひ臓自体の病気ではなく、ほかの病気の影響によって起こります。ひ臓が大きくなった分、血球と血小板をたくさん貯えるようになるため、血液中の血球と血小板が減り、貧血や出血を起こしやすくなります。大きくなったひ臓は裏側にある胃を圧迫するため、食べ物を少し食べただけでも満腹感を感じるようになります。腹部や背中に痛みが起こることがあります。
原因は?
肺炎、マラリア、腸チフスなど細菌(さいきん)に感染(かんせん)する病気から、血液のがんまで、さまざまな病気が原因となります。
検査方法は?
手で触(さわ)って調べる触診(しょくしん)やX線検査を行います。ひ臓の大きさを確認し、他の臓器を圧迫しているかどうかを調べるために、超音波検査やCT検査を行うこともあります。また、血液検査により赤血球、白血球、血小板の数を調べたり、血球の大きさや形が、ひ腫の原因をつきとめる手がかりとなることもあります。
治療(ちりょう)するには?
ひ腫の原因となった病気を治療します。手術によってひ臓を取り除く場合もあります。放射線療法(ほうしゃせん・りょうほう)を行ってひ臓を小さくすることもあります。
監修:公益財団法人 日本学校保健会