Step3
薬として「仕上げる」

最後に、3つの分野の研究者たちが連携しながら、薬として仕上げていきます。

大量につくっていくために工場での生産方法を考え、薬の有効成分である原薬をつくる研究者(つくり方を決める)、その原薬をもとに薬として最適な形にする研究者(最適な形にする)、それらが安全で効果があることを分析し、評価する研究者(評価する)が、数年にわたる研究を重ね、患者さんにお届けできる薬に仕上げていきます。

また、スケジュール管理や、製造に向けて工場の設備を整えたりするなど、外部との調整も必要になるため、コーディネーターが全体をみて調整をしています。

多くの患者さんに薬を届けるために

多くの患者さんに安定的に薬を届けるためには、大量に生産する必要があります。

Step2では試験管の中で薬となる物質をつくることに成功していますが、それを工場の規模で大量に生産しても、同じ品質のものがつくれるようにしなくてはなりません。

段階的に量を増やしていき、どのような条件で製造すれば効率良く、安全性・安定性の高い薬をつくれるかを検討し、薬の有効成分である原薬をつくります(製造法検討・スケールアップ検討)。

つくり方が決まったら、同じものを繰り返し安定的につくれるかどうかを確認します(バリデーション)。

このようにつくられた原薬は、薬を最適な形にするためのさまざまな試験に使用されます。

量を増やしたり、環境が変わることで反応が変わってしまうことのないように、少しずつ条件を変えながら慎重に確認していく必要があります。

患者さんに安心して薬を使っていただくために

原薬と最適な形になった薬(製剤)の両方を試験にかけて、正しくつくられているかどうかを評価します。

どのようなものができているか、不純物が入っていないか、最初につくったものと変化していないか、安定性・安全性はどうかなど、さまざまな方法による試験を繰り返し、厳しく検討しています。(試験法検討・構造物性検討)

また、いつどこで誰が検査しても同じ結果になるように、検査方法を決めること(試験法バリデーション)や、申請にむけたデータをとるための試験も行っています。

原薬をつくる過程での評価と、最適な形にするための評価を数え切れないほど繰り返し、改善をしながら、より安全で効果の高い薬を一日でも早く患者さんにお届けできるよう努力を重ねています。

患者さんに安心して使っていただくために、精度の高い試験を繰り返し行い、確認しています。

患者さんにとって使いやすい薬にするために

錠剤、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、軟膏剤など、患者さんにとっての最適な形を検討します。

薬として安定した状態を長く保てるようにすることや、 使いやすく確実に効果を発揮する形を研究していきます(製剤・処方検討)。薬の特性、患者さんの症状や生活面などさまざまなことを考えながら、安定性と使いやすさのバランスをとることが大切です。

また、発売後の薬の改善も行っています。痛い注射を痛くないようにするなど、痛みや不快感を解消したり、患者さんが間違えないで、しかも簡単に使える容器にしたり、素材をガラスからプラスチックに変えて廃棄しやすくしたりなど、患者さんや医療関係者の立場に立って検討しています。

さらに、工場での大量生産も考え、安全に効率よくつくっていく最良の方法も検討し(スケールアップ検討)、繰り返し同じ品質のものを確実につくれるようにするための確認を行います(プロセスバリデーション)。

その後、薬はさまざまな申請を経て工場で生産され、患者さんのもとへ届きます。

発売された後も、改良のための研究をしています。例えば注射剤の場合、病院でしか使えなかったものを患者さん自身が使えるように改良されれば、通院の回数を減らすこともできます。薬を改良することは、患者さんの生活の質(QOL)の向上にもつながります。

薬として仕上げる段階では、1日でも早く患者さんにお届けするために3つの分野のスケジュール調整も重要です。特に各チームの連携が求められます。