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松田 真一 Shinichi Matsuda
医薬安全性本部 安全性データマネジメント部
2007年入社
研究を経験、
患者さんへの貢献を志す。
松田が中外製薬に強く興味を持ったのは、大学で取り組んだ研究がきっかけだった。医学部の保健学科で臨床検査を専攻し、関節リウマチの原因解明と治療法開発のための研究に取り組んだ。「研究をご指導頂いたリウマチ専門医の先生から、研究の面白さや技術だけではなく、考え方など多くのことを学びました。特に共感したのは、未だ誰も成し遂げていない関節リウマチの原因解明という難題に対して、解明すれば世界中の患者さんを救えるという確信のもと、全力で挑戦して治療法を見出すのだという強い意志でした。自分も力を尽くせば、治療に貢献できるだろうかと考え始めた頃、中外製薬が画期的な関節リウマチの抗体医薬品を上市しました。当時リウマチ学会に出席していた私も、従来の抗リウマチ薬を大きく上回る効果をみて、こんな薬を開発できる中外製薬に魅力を感じました」。
就職活動では様々な情報に触れる中、中外製薬が「安全性」に力を入れていることを知った。「会社説明会で先輩社員のお話を聞き、安全性の重要度は世界的に増しており、変化の激しい分野であることを知りました。薬の効果ではなく、副作用の面から患者さんの安心に貢献する、安全性という仕事に意義を感じ入社を志望しました」。
「疫学」に基づく新たな価値創造。
安全性部門は、副作用に関する情報を集め、副作用の発生頻度やリスク因子等を分析し、医療従事者に安全性情報を提供することで薬の適正使用を推進する役割を担っている。入社後、最初に関わったのは、自社の薬と副作用との因果関係を、個々の患者さんの副作用症例報告をもとに分析する仕事だ。重要な仕事にやりがいをもって取り組む一方で、松田はこのアプローチ単独では限界があることも実感した。「患者さん一人ひとりの副作用情報だけでは、本当に薬による副作用なのか、それとも偶然起きたことなのか、判断が難しいケースも多いのです。例えばある人が薬を飲んだ後、腹痛を起こしたとします。腹痛は副作用かもしれませんが、もし、薬を飲まなかった場合にも、この人が腹痛を起こしていたとしたら?その場合は薬のせいではないと考えられますが、現実は飲まなかった場合のデータが存在しないので単純には分かりません」。
新しい方法を模索する中、松田は「疫学」という学問の存在を知る。「疫学」とは、個人ではなく集団を対象とした大規模なデータを分析し、病気や副作用が発生する原因を明らかにしていく学問であり、海外では既に複数の活用実績が報告されていた。そんな折、まさに安全性部門に「疫学」を専門に扱うグループが新設されることになり、松田は希望してグループの一員に選ばれた。疫学の専門部署を立ち上げたのは国内の製薬会社では先駆け。「新設当初は日々が試行錯誤です。メンバーみんなで議論を重ねました。大変でしたけれど、それよりもゼロから自分たちで創り上げていくことが面白かったですね」。
人々の健康に貢献する
目的に向かって。
副作用情報を疫学的に分析することで、副作用の起こりやすい患者さんの特徴や発生時期の傾向を明らかにできれば、早期発見のために定期的な検査を推奨する等の具体的な対策も可能になる。「大切なのは、疫学は人の役に立ってこそ存在意義がある、ということです。患者さんに貢献するためにデータ分析を日々考えます。簡単ではありませんが、こうして人々の健康に貢献できることは疫学を学ぶ上での大きな魅力です」。現在はグループがスタートして4年が経ち、実績も上がっている。松田も社内プロジェクトを通じ、副作用情報に基づいて未知の副作用の初期兆候を見出すシグナル検出の仕組みを確立した。併行して、成果を国際学会や学術論文として発表している。「安全性の取組みをさらに向上させるために、グローバルへの情報発信と議論に基づくインプットが重要です」。
疫学に取り組む意義を松田はいまどう感じているのか?「大規模データを疫学的に分析することで、従来なかった有益な知見を早期に見つけ、その情報によって大勢の患者さんを救える可能性に注目しています。疫学では仮説構築と分析デザインが大変重要ですが、これは必ずしも疫学専門力だけで成せるものではなく、医薬学、統計学、薬事規制等の様々な専門性をもったメンバーとの協働も必要です。私自身も疫学に携わって以降、社内・社外の人々と仕事で関わりをもつ機会が多くなりました。人々の健康に貢献する目的のためには、私自身も色々頑張らないといけませんね」。松田は今日もさまざまな場面で、世界の人々の健康に貢献していく新たな「知恵」を導き出そうと奮闘している。
※本記事の内容は取材当時のものです。