分子標的薬とは?
個別化医療の治療に使われる「分子標的薬」って、なんですか?
病気の原因となっているタンパク質などの特定の分子にだけ作用するように設計された治療薬のことです。からだの免疫のしくみを利用した、抗体医薬品などがあります。
従来の薬は、異常な細胞だけでなく正常な細胞にも攻撃的に作用してしまうのに対し、分子標的薬は、病気の原因に関わる特定の分子だけを選んで攻撃するという特徴があります。
従来の抗がん剤には、がん細胞の活発な増殖を抑える作用の薬がありますが、がん細胞だけでなく、正常な細胞の増殖も抑えてしまうため、副作用がおこります。胃腸や皮膚、血液をつくる骨髄の細胞は細胞分裂が活発なので、吐き気や皮膚のしびれといった抗がん剤の副作用が出やすくなるのはこのためです。
抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けると聞きますが、がん細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃をうけていたということですね。
ツクル君、その通りです!一方で、分子標的薬はがん細胞だけを攻撃するため、正常な細胞へのダメージを減らせる、つまり副作用が抑えられると考えられています。
抗体医薬品について詳しくは “よくわかる抗体医薬品” をみてくださいね。
用語解説
- 個別化医療
- 患者さんの体質や病気の特徴に合った治療を行うことです。英語では「パーソナライズド・ヘルスケア(PHC)」「パーソナライズド・メディシン」といい、「オーダーメイド医療」、「テーラーメイド医療」、「プレシジョン・メディシン(直訳すると精密医療)」などと呼ばれることもあります。
- 分子標的薬
- がん細胞などの特定の細胞だけを攻撃する治療薬のことです。主にがん領域で使われており、標的とする細胞だけで作られる異常なタンパク質(分子)などの目印を見つけて、標的の細胞を攻撃します。正常な細胞へのダメージが少なく、副作用が抑えられると考えられています。
- 抗体医薬品
- 体内の免疫作用を担う「抗体」のしくみを利用した医薬品のことで、病気に特徴的なタンパク質を目印として結合し、病気の細胞を攻撃する薬です。目印を持たない通常の細胞には作用しないので、副作用が少なくなると考えられています。
- 副作用
- 薬による好ましくない作用のことをいいます。例えば鎮痛剤による胃腸障害や抗ヒスタミン剤による眠気などです。そのほか、生命にかかわる、あるいは後遺症が残るような重篤な反応が起こる場合もあります。原因はさまざまで、薬を正しく使っていても副作用が起こる可能性があります。
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