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人の命を救う仕事。

大学の学部・修士課程時代、小島はがんの発見を目標とする有機化学の基礎研究を行っていた。DNAに有機合成した化合物を埋め込むことで、がん化した細胞を発見する技術の開発を目指していたという。そのような研究分野だったからこそ、製薬会社へ就職する先輩や同期も多く、小島は自然と就職先として製薬会社を意識するようになった。「当時から、中外製薬は高い技術力を持つということを耳にしていましたし、研究を続けるのならそういった環境に身を投じていたいと思っていました。また中外製薬に入社した研究室のOBたちの話を聞いていると、彼らから人の命を救う仕事をしているということへの責任感と誇りを感じる瞬間がたくさんあって、自分もそんな仕事がしてみたいと、自然と惹かれていきました」。

入社以来、小島は一貫して製剤技術に携わっている。カプセルや錠剤などの経口剤をつくるのが主な業務だが、決して簡単な仕事ではない。「私のところには、研究本部から革新的な薬になるポテンシャルを持った化合物が、次々に届きます。私の仕事は、その化合物の効能を十分に引き出すことのできるカプセルや錠剤をつくること。経口剤をつくるには、化合物に添加物を加える必要がありますが、その添加物によって薬の効果が変化することも少なくないのです」。小島がつくった薬はまず臨床試験に使用され、当局の承認が得られれば、世の中で多くの患者さんのもとに届くことになる。つまり、優れた化合物を最終的に患者さんにとって本当に良い薬にできるかどうかは、製剤技術にかかっているとも言える。「その意味で、私たち製剤技術担当の責任は重大です」。

きちんと効く、薬を。

カプセルや錠剤などの製剤をつくる業務(製剤化)のかたわらで、小島は基礎研究も行ってきた。「私が入社以来取り組んできたテーマは、溶解性の改善技術です。効能は優れていても、人の体内では溶けにくく、吸収されにくい化合物も多い。こうした化合物の場合、既存の添加物を使った処方・製法では十分な効果が出ない可能性があります。そこで私たちは、化合物の溶解性を高める技術の開発に取り組んできました」。小島は仲間たちとともに仮説立案と検証を繰り返し、地道にデータを蓄積し、新技術を形にしていった。

そして2014年、新技術適用のチャンスが訪れた。小島のもとに、新たな化合物が届いた。「当初、プロジェクトチームの中には、既存技術を使ってほしいという声が多くありました。時間もコストも限られている中で、これはごく当たり前の反応です。一方で、溶けにくいことが原因で効果が出なければ、臨床試験はやり直しになる。結局は余計に時間がかかり、患者さんに薬が届くのも遅れてしまう。私たちはこれまでのデータから、今回の化合物に対しては新たに開発した改善技術を使ったほうが良いという確信がありました。そこで、化合物の開発チームにも新技術について理解してもらえるよう、膨大な検証データを整理して提示し、説明を尽くしました」。その結果、小島が開発した新技術の適用が決まり、臨床試験においても効果を示すことができたという。また、この処方で成功を収めてからは、新技術を使ってほしいというオーダーが徐々に小島のもとに来るようになった。小島は、社内の常識を一つ塗り替えたのだ。

ロシュで得た知識と自信。

小島はスイス・バーゼルにあるロシュ本社に出向した経験もある。目的は、ロシュの製剤技術を学び、そのエッセンスを中外製薬に採り入れることだった。「勉強になった技術や考え方はたくさんありました。帰国後、私はそれらを積極的に採り入れた新技術・新手法の提案を行っています。一方で、自分が中外製薬で取り組んできたやり方が、世界トップレベルの研究者が集まるロシュにおいても十分に通用するということもまた、実感できました」。技術以上に印象的だったのは、職場の多様性だともいう。「さまざまな国籍のメンバーが集まって、英語、ドイツ語を中心に、互いに配慮しながらコミュニケーションを取っていく。中外製薬でも、最近はこれまでよりも更に、世界各国から研究者が集まってきているので、いま特に、当時の経験が活かされているように感じます」。

小島に今後の話を聞くと、中外製薬がいままさに力を入れている「中分子創薬」は製剤化が難しく、その技術が肝になるという。「これから入社する方々には、若いうちから自分なりの意見を大切にし、新たなアイデアをどんどん提案してほしい。その熱量が、中分子創薬をはじめ、中外製薬の将来を創っていくはずです」。未来を語る小島の目は、優しくも情熱に満ちている。

※本記事の内容は取材当時のものです。
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