PNHの診断のために行われる
検査を説明します。

PNHの診断のために行われる検査を説明します。

総合監修:

筑波大学医学医療系 
医療科学・血液内科 
教授  小原 直 先生

発作性夜間ヘモグロビン
尿症(PNH)が
疑われる場合に行う検査

溶血による貧血、ヘモグロビン尿
(コーラ色の尿)、
明らかな
原因がわからない血栓症、
骨髄不全が認められた場合に、
PNHが疑われます1)

※骨髄のなかの造血幹細胞に異常が起こってしまい、
正常な血液細胞がつくられなくなる状態

PNHが疑われた場合、どうやって診断されるの?

PNHの診断は、血液検査の結果をもとに診断されます。
診断で重要な検査項目は「血清LDH値」、「PNHタイプ赤血球の割合」、「ヘモグロビン値」です。

発作性夜間ヘモグロビン
尿症(PNH)が
疑われる患者さんに
溶血が起こっているかを
診断するための血液検査

血清LDH値、ヘモグロビン値、
網赤血球数、
間接ビリルビン値、
血清ハプトグロビン値などを検査し、
その結果を参考に溶血が
起きているか診断します1)

溶血が起きているか診断する際に
参考となる主な臨床検査項目

横にスライドするとご覧いただけます

検査項目 基準値 溶血が起こっている場合
血清LDH(lactate dehydrogenase、乳酸脱水素酵素)値 124~222U/L 上昇する
  • LDHは赤血球中に含まれています。
  • PNH患者さんは溶血により壊れた赤血球からLDHが血液中に出てきてしまうため、血清LDH値が上昇すると考えられます。
  • PNHと診断される方の場合、血清LDH値が正常上限の1.5倍(333U/L)以上が基準となります。
ヘモグロビン値 男性:13.7~16.8g/dL
女性:11.6~14.8g/dL
低下する
  • 体の中に酸素を運ぶ量を反映するため、ヘモグロビン値は貧血を診断する重要な指標となります。
  • ヘモグロビン値が6~7g/dL以下まで下がった場合は、輸血が検討されます
    (自覚症状が強い場合は7g/dL以上でも輸血を行うことがあります)。
網赤血球数 0.04~0.08×106/μL 増加する
  • 骨髄からつくられたばかりの若い赤血球のことを網赤血球といいます。
  • 網赤血球数を調べることで、どのような貧血が起こっているのかを確認することができます。溶血による貧血が起こると、壊れた赤血球を補うために骨髄で赤血球がたくさんつくられるようになり、網赤血球が増加する可能性があります。
間接ビリルビン値 0.8mg/dL以下 上昇する
  • ヘモグロビンの一部は、肝臓で代謝されて黄色い色素(ビリルビン)になります。
  • ビリルビンの値が上昇している場合は、溶血により赤血球が破壊されている可能性があります。
血清ハプトグロビン値 19~170mg/dL
(TIA法)
低下する
  • ハプトグロビンはヘモグロビンと強く結合します。
  • 溶血により赤血球が破壊されると、赤血球から血液に出てしまったヘモグロビンとハプトグロビンが結合するため、ハプトグロビンの値が低下します。

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の
参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ.
発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド
令和4年度改訂版. 2023年3月.、矢冨裕 ほか監修. 今日の臨床検査2023-2024.
南江堂; 東京, 2023.より作成

PNHと診断を受ける方の
血清LDH値(イメージ)

血清LDH値1.5倍(333U/L)以上PNHと診断

PNHの診断には、血清LDH
値が正常上限の1.5倍以上が
基準となるんだね。

基準値は医療機関によって異なります。結果について不明な点がある場合には、検査を受けた医療機関の先生に確認するようにしましょう。

溶血に関する指標を確認すると
同時に、
PNHタイプ赤血球の割合を
調べるための検査を行います。

血液のなかの補体制御タンパクがない赤血球をPNHタイプ赤血球といいます(→PNHってどんな病気なの?)。血液検査により、赤血球全体のうち1%以上がPNHタイプ赤血球の方は、PNHと診断されます1)
PNH患者さんの溶血の症状は、一般的にPNHタイプ赤血球が多いほど強くあらわれます。
なお、PNHタイプの赤血球や白血球の割合のことを、クローンサイズと呼ぶこともあります。

PNHと診断される方のPNH
タイプ赤血球の割合(イメージ)

PNHタイプの赤血球が1%以上の方がPNHと診断されます

PNHタイプの赤血球が1%以上の方がPNHと診断されます

PNH患者さんは、定期的にPNHタイプ赤血球の割合を調べる必要があります。
とくに、血清LDH値が上昇した場合には、PNHタイプ赤血球の割合が高くなっていないかを調べる必要があります。血清LDH値が上昇する様子がみられない場合であっても、半年~1年に1回程度、経過確認のために検査をします1)

発作性夜間ヘモグロビン尿症
(PNH)と
似ている病気はあるの?

PNHと似ている症状があらわれる病気には、
再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血などがあります。

再生不良性貧血
再生不良性貧血は、骨髄のなかにある造血幹細胞(→参考:血液に含まれる細胞と赤血球の役割)に異常が生じることで、赤血球、血小板、白血球すべてが減少してしまう病気です。赤血球が少なくなってしまうため、PNHと同じように貧血の症状などがあらわれます2)
PNHは再生不良性貧血に合併して発症することがありま1)
自己免疫性溶血性貧血
自己免疫性溶血性貧血は、赤血球が破壊されること(溶血)によって起こる貧血の一種です。自分の赤血球に対する抗体(自己抗体)がつくられてしまうことによって、血管のなかや脾臓で赤血球が異常に早く破壊されて貧血が起こる病気です。
どのような機序で自己抗体がつくられるのか、詳細はわかっていません3)

※PNHと似ている病気がいくつかあり、診断するために骨髄の検査を行うことがあります。

1)
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ. 発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド 令和4年度改訂版. 2023年3月.
2)
難病情報センター. 再生不良性貧血(指定難病60). https://www.nanbyou.or.jp/entry/106(閲覧日:2024年4月22日)
3)
難病情報センター. 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(指定難病61). https://www.nanbyou.or.jp/entry/114(閲覧日:2024年4月22日)
総合監修
筑波大学医学医療系 
医療科学・血液内科 
教授  小原 直 先生

2024年5月作成