医療費助成を受けた場合の
負担軽減モデルケース。
医療費助成を受けた場合の負担軽減モデルケース。
総合監修:
筑波大学医学医療系
医療科学・血液内科
教授 小原 直 先生
発作性夜間ヘモグロビン尿症
(PNH)の患者さんの
日常生活について
―治療と生活を両立するために―
PNHの治療に
医療費助成制度を
利用した場合のケース
医療費助成制度を利用した場合に医療費の負担がどの程度軽減できるのか、モデルケースをみてみましょう。
<ケース1>
初回受診後、3ヵ月経ってからPNHと診断された
30歳女性Aさんのケース
Aさんは高熱が出た後に腹痛と赤茶色の尿が出たため、B病院を受診しました。
3ヵ月間通院しましたが、改善がみられないため、C病院の血液内科を紹介されて受診したところ、PNHと診断され、重症度は「重症」でした。
抗補体薬による治療を開始し、1年後には治療継続により重症度は「軽症」となりました。
B病院とC病院での1ヵ月の公的医療保険適用前の医療費は以下の通りです。
この場合、Aさんはどのような医療費助成を受けられるのでしょうか。
横にスライドするとご覧いただけます

※PNH患者さんで難病医療費助成制度の対象となった方は、重症度が中等症以上と診断された日(原則として1ヵ月、やむを得ない理由がある場合は最長3ヵ月)
までさかのぼって医療費の助成を受けることができます。
<Aさんが受けた診断と行う手続きの経過>
PNH確定診断前:高額療養費の支給を申請。
PNH確定診断時(重症度:重症):難病医療費助成を申請。
PNH確定診断から6ヵ月経過時点:難病医療費助成の「高額かつ長期」を申請。
PNH確定診断から1年経過時点:難病医療費助成の医療受給者証更新を申請。
1
B病院での1ヵ月の自己負担額
(PNHと診断される前)
高額療養費制度を利用して
医療機関の窓口で支払う自己負担額を軽減することができます。
B病院を受診した時点ではAさんはPNHの診断を受けていませんが、高額療養費制度によって医療機関の窓口で支払う自己負担額を軽減することができます。申請をすると、患者さんが窓口で支払う自己負担額は年齢と所得別の上限額まで引き下げられます。
高額療養費制度を利用した場合の
Aさんの自己負担額:80,930円
横にスライドするとご覧いただけます
高額療養費は、PNHの治療以外も給付の対象になるんだったね。
2
C病院でのPNH(重症)の
治療にかかる1ヵ月の自己負担額
PNHにかかわる医療費の自己負担額を難病医療費助成制度
「一般」の金額までに抑えることができます。
Aさんは高額療養費制度の利用に加え、難病医療費助成の申請を行うことで、PNH(重症)と診断された時点からPNHにかかる医療費として、難病医療費助成制度を利用することができます。
※難病医療費助成申請から診断を受けた日まで、原則1ヵ月、やむを得ない理由がある場合は最長3ヵ月までさかのぼって助成を受けることができます。
難病医療費助成制度
「一般」を利用した場合の
Aさんの自己負担額:20,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けたため高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。自己負担額は69歳以下の方の表 ウの「多数回該当」の金額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度が適用されると、PNH治療にかかわる 医療費の自己負担額は、1)公的医療保険適用前の医療費の2割、または2)難病医療費助成制度適用後の自己負担上限額、のいずれか低い方になります。2)のほうが低いため、窓口で支払う自己負担額は2)となります。
自己負担上限額の表
一般所得Ⅱ「一般」に該当するため
20,000円 となります。
高額療養費制度について詳しくは、「高額療養費制度」をご覧ください。
3
PNHの診断後6ヵ月以降の
C病院でのPNH(重症)の治療にかかる1ヵ月の自己負担額
難病医療費助成制度「高額かつ長期」に該当するため、
変更申請を行うことで自己負担上限額がさらに軽減されます。
AさんのPNH治療に対する1ヵ月の公的医療保険適用前の医療費は750万円であり、治療6ヵ月時点で「ひと月の公的医療保険適用前の医療費が50,000円を超える月が支給認定申請月以前の12ヵ月以内に6回以上ある」という「高額かつ長期」の条件を満たします。
難病医療費助成制度
「高額かつ長期」を利用した場合の
Aさんの自己負担額:10,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けたため高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。自己負担額は69歳以下の方の表 ウの「多数回該当」の金額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度の「高額かつ長期」の条件を満たすため、自己負担上限額は、難病医療費助成における自己負担上限額の表の一般所得Ⅱ「高額かつ長期」の金額に軽減されます。
自己負担上限額の表
一般所得Ⅱ「高額かつ長期」に該当するため
10,000円 となります。
4
PNH治療を1年継続して
症状が改善し(軽症)、
抗補体薬の治療を継続する場合の1ヵ月の自己負担額
難病医療費助成制度の区分が
「一般」から「軽症高額該当」に変更となります。
Aさんは抗補体薬による治療を1年間受けた結果、PNHの重症度は「軽症」に改善したものの、抗補体薬による治療を継続する必要がありました。
難病医療費助成は、申請から原則1年以内に更新申請を行う必要があります。Aさんは「公的医療保険適用前の医療費が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12ヵ月以内に3回以上ある場合」という「軽症高額該当」の条件を満たすため、引き続き難病医療費助成制度を利用することができます。また、「高額かつ長期」の条件も満たしているため、Aさんの自己負担額は難病受給者証(医療受給者証)の更新前と変わりません。
「軽症高額該当」として
難病医療費助成制度を
利用した場合のAさんの
自己負担額:10,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けたため高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。自己負担額は69歳以下の方の表 ウの「多数回該当」の金額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度の「軽症高額該当」「高額かつ長期」の条件を満たしているため、自己負担上限額は、難病医療費助成における自己負担上限額の表の一般所得Ⅱ「高額かつ長期」の金額に軽減されます。
10,000円 となります。
<ケース2>
初回受診時にPNHと診断された
30歳女性Aさんのケース
Aさんは高熱が出た後に腹痛と赤茶色の尿が出たため、B病院を受診しました。
B病院の血液内科でPNHと診断され、重症度は「重症」でした。
抗補体薬による治療を開始し、1年後には治療継続により重症度は「軽症」となりました。
B病院での1ヵ月の公的医療保険適用前の医療費は以下の通りです。
この場合、Aさんはどのような医療費助成を受けられるのでしょうか。
横にスライドするとご覧いただけます

※PNH患者さんで難病医療費助成制度の対象となった方は、重症度が中等症以上と診断された日(原則として1ヵ月、やむを得ない理由がある場合は最長3ヵ月)
までさかのぼって医療費の助成を受けることができます。
<Aさんが受けた診断と行う手続きの経過>
PNH確定診断時(重症度:重症):高額療養費の支給および難病医療費助成を申請。
PNH確定診断から6ヵ月経過時点:難病医療費助成の「高額かつ長期」を申請。
PNH確定診断から1年経過時点:難病医療費助成の医療受給者証更新を申請。
1
B病院でのPNH(重症)の
治療にかかる1ヵ月の自己負担額
PNHにかかわる医療費の自己負担額を難病医療費助成制度
「一般」の金額までに抑えることができます。
Aさんが利用可能な健康保険の制度は「高額療養費制度」です。申請をすると、患者さんが実際に支払う医療費は年齢と所得別の上限額まで引き下げられます。また、Aさんは高額療養費制度の利用に加え、難病医療費助成の申請を行うことで、PNH(重症)と診断された時点からPNHにかかる医療費として、難病医療費助成制度を利用することができます。
※難病医療費助成申請から診断を受けた日まで、原則1ヵ月、やむを得ない理由がある場合は最長3ヵ月までさかのぼって助成を受けることができます。
難病医療費助成制度
「一般」を利用した場合の
Aさんの自己負担額:20,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●高額療養費制度で、Aさんは69歳以下の方の表 ウに該当します。Aさんが該当する所得区分の計算式の医療費に、公的医療保険適用前の医療費である750万円を当てはめて計算した額が高額療養費制度適用後の自己負担上限額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度が適用されると、PNH治療にかかわる医療費の自己負担額は、1)公的医療保険適用前の医療費の2割、または2)難病医療費助成制度適用後の自己負担上限額、のいずれか低い方になります。2)のほうが低いため、窓口で支払う自己負担額は2)となります。
自己負担上限額の表
一般所得Ⅱ「一般」に該当するため
20,000円 となります。
高額療養費制度について詳しくは、「高額療養費制度」をご覧ください。
2
PNHの診断後6ヵ月以降の
B病院でのPNH(重症)の治療にかかる1ヵ月の自己負担額
難病医療費助成制度「高額かつ長期」に該当するため、
変更申請を行うことで自己負担上限額がさらに軽減されます。
Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けているため、高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。また、AさんのPNH治療に対する1ヵ月の公的医療保険適用前の医療費は750万円であり、治療6ヵ月時点で「ひと月の公的医療保険適用前の医療費が50,000円を超える月が支給認定申請月以前の12ヵ月以内に6回以上ある」という「高額かつ長期」の条件を満たします。
難病医療費助成制度
「高額かつ長期」を利用した場合の
Aさんの自己負担額:10,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けたため高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。自己負担額は69歳以下の方の表 ウの「多数回該当」の金額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度の「高額かつ長期」の条件を満たすため、自己負担上限額は、難病医療費助成における自己負担上限額の表の一般所得Ⅱ「高額かつ長期」の金額に軽減されます。
自己負担上限額の表
一般所得Ⅱ「高額かつ長期」に該当するため
10,000円 となります。
3
PNH治療を1年継続して
症状が改善し(軽症)、
抗補体薬の治療を継続する場合の1ヵ月の自己負担額
難病医療費助成制度の区分が
「一般」から「軽症高額該当」に変更となります。
Aさんは抗補体薬による治療を1年間受けた結果、PNHの重症度は「軽症」に改善したものの、抗補体薬による治療を継続する必要がありました。
難病医療費助成は、申請から原則1年以内に更新申請を行う必要があります。Aさんは「公的医療保険適用前の医療費が33,330円を超える月が支給認定申請月以前の12ヵ月以内に3回以上ある場合」という「軽症高額該当」の条件を満たすため、引き続き難病医療費助成制度を利用することができます。また、「高額かつ長期」の条件も満たしているため、Aさんの自己負担額は難病受給者証(医療受給者証)の更新前と変わりません。
「軽症高額該当」として
難病医療費助成制度を
利用した場合のAさんの
自己負担額:10,000円
横にスライドするとご覧いただけます
- ●Aさんは過去12ヵ月以内に計3回以上高額療養費の給付を受けたため高額療養費制度の「多数回該当」の対象となります。自己負担額は69歳以下の方の表 ウの「多数回該当」の金額となります。
- ●さらに、難病医療費助成制度の「軽症高額該当」「高額かつ長期」の条件を満たしているため、自己負担上限額は、難病医療費助成における自己負担上限額の表の一般所得Ⅱ「高額かつ長期」の金額に軽減されます。
10,000円 となります。
高額療養費制度、難病医療費助成制度と<ケース2>の場合の医療費助成制度の活用事例を動画でわかりやすくご紹介しています。ぜひご覧ください。
動画
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者さんへ
知っておきたい医療費助成制度
- PNH患者さんが受けられる
医療費助成制度 - 難病医療費助成制度
―PNH患者さんの場合― - 高額療養費制度
- PNHの治療に医療費助成制度を
利用した場合のケース - PNH患者さんに
日常生活で気をつけてほしいこと - お役立ち情報
- 患者会・支援団体一覧
- 総合監修
-
筑波大学医学医療系
医療科学・血液内科
教授 小原 直 先生
2025年4月更新
医療費助成制度を利用することで、自己限度額を軽減しながらPNHの治療を続けていただくことができます。
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