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人類のために、基礎科学を応用する。

タンが初めて研究を経験したのは、母国マレーシアのマラヤ大学の学士号でタンパク質変性の熱力学を学んだ時だった。しかし彼女の探究心は、一つの基礎的な研究に没頭するだけでは収まらなかった。その興味は、常に、自然や科学がどのように人々の生活をより良いものにすることができるかにあったからだ。「基礎的な科学の発見を、どう応用することができるかに、ずっと関心がありました。科学がどう人類に貢献できるのか、探求してみたいと思っていたのです。だから、基礎的な研究で学んだことを実際に活用するために、東京大学大学院・工学系研究科の博士課程に進学することにしました」。

博士課程で、タンは生体工学を専攻し、シトクロムP450という酵素のさまざまな産業への適用方法を専門に学んだが、その研究が実際の消費者の利益になっていることを実感できずにいた。「だから、製薬会社で研究する科学者になろうと思いました。患者さんに希望を与えるチームの一員になれるからです。確固たる科学的根拠を元に、患者さんにとっての困難な状況を救って希望を作り出すことは、私にとって、優しさを伴うとても意味のあることのように思えました」。

新しいアイディアを、果敢に提案する。

日本語が流暢ではなかったタンは、始めは日本の製薬会社を受けることに怖じ気づいていたが、思い切って英語の履歴書で中外製薬に応募してみた。「中外製薬は、日本語ができないからといって切り捨ててしまうような会社ではありません。また、専攻や専門分野もあまり気にする必要はないと思います。中外製薬は、色々な専門分野の人を歓迎しているし、人によって違うさまざまな能力を活かしてくれるでしょう」。数多くの製薬会社のなかから中外製薬を選んだ理由は、抗体医薬製薬においてパイオニアの1つであり、自身の生体工学の知識を活かせると思ったから。また、就職活動で中外製薬を訪れた際に、働く人たちが優しく親しみやすく感じられたからだそうだ。2015年4月に入社し働き始めたタンだが、その印象は間違っていなかったという。「一緒に仕事をしている人たちは皆フレンドリーで、手を差し伸べてくれます。それに、持っている知識をいつも共有してくれます。新しい発見のために、これはとても大事なことです」。面接の時に、「研究者は創造力をもって、新しいアイディアを果敢に提案するように」と経営陣に励まされたことも、中外製薬を選んだ大きな理由の一つだ。「プロとして成長できる、最高の環境のように感じられました」。

現在、タンはタンパク質科学の研究者として、発見された抗体が創薬のために培養するだけの分子の特性を持ち合わせているかどうかを分析する役割を担う。「それに加えて、創薬に携わる科学者の一人として、医療ニーズがまだ満たされていない病気の新薬に、新しいアイディアを提案するのも私の仕事です。既に知っていることを当てはめるだけでなく、新たな知を生み出す興奮がここにはあります」。しかし、言葉の面で不自由を感じる場面もあるという。「プレゼンは英語で行われますが、話し合いとなると日本語になるので、存分に貢献できません」。何とか日本語力を上げて議論に加わりたいタンは、昼休みにお弁当を食べながら日本語を猛勉強中だという。一方でタンは、中外製薬のグローバルな環境のおかげで、世界で活躍する仲間たちと交流する貴重な経験もできている。「ロシュやジェネンテックと技術交流を行い、フィードバックを貰うことも多いです。こういう交流を通し、我々が行っていることが間違っていないか確認できます。実際、ロシュのチームの面々がここ御殿場の研究所に来ることもあります。私は、富士山を外国人に宣伝する貴重な機会でもあると思っています!」

創薬の全過程を学ぶ。

日本の象徴ともいえる富士山は、タンの家のベランダからも望めるらしい。「日本に来たからには、日本で一番高い山をどうしても制覇したくて、入社一年目に登りました。でも、キツかった!一回で十分ですね」。他にも、プライベートな時間は料理をして過ごすことが好きだというタンは、同じ御殿場の研究所で仕事をするタイ人とドイツ人の同僚とともに、それぞれの国の料理を日本人の同僚たちに振る舞う“インターナショナル・パーティー”を定期的に開く。「仕事には真剣に向き合いますが、同時にこうした楽しい時間もたくさんあります。私にとって一番大切なのは、一緒に仕事をするこのような素晴らしい仲間たちですね」。

タンの夢は、当然小さくない。「基礎科学が人類に役立つ様子を見たいので、将来的には創薬の全過程を経験したいと思っています。全体が見られるようになれば、異なる視点で見直すことができるようにもなります。優先順位や考え方も変わってくるので、さまざまな見地から十分検討した上で正確な判断ができるようになるでしょう。でもまずは、今担当している初期段階の研究に没頭したいですね。初期段階は、製薬会社の柱となる部分です。柱を極めたら、他の部門に移行していきたいと思っています」。タンの勢いに際限はない。その眼差しは、彼女の仕事場を日々見守る富士山よりももっと高いところを見据えている。

※本記事の内容は取材当時のものです。
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