病気と向き合う患者さんの
ライフステージに寄り添う情報サイト

硬くなった筋肉をリセットし、
すいすい歩ける足腰を取り戻そう!

監修:有吉与志恵先生

  • オリジナルコラム
  • 暮らしのこと
  • 運動

病気治療や療養中も、散歩をしたり、自分にできる軽いスポーツをしたりして体を動かすことは、体の機能回復とリフレッシュの両面から重要です。それには、「立つ」「歩く」「しゃがむ」などの動きをスムーズにするための足腰の筋力が欠かせません。
今回は、スクワットのような下肢の筋肉に負荷をかける筋トレではなく、ゆるやかな動きで心地よさを実感しながら筋力アップできる「コンディショニング」をご紹介。座った姿勢でできるものを中心に、足裏の痛みやこむらがえり(足のつり)、転びやすさなどに困っている人にもおすすめの体操をコンディショニングの開発者、有吉 与志恵(ありよし よしえ)先生がガイドします。

コンディショニングとは?

体を「鍛える」のではなく「整える」という考え方。姿勢や動きのクセによる筋肉の疲れや緊張(コリ)を整えることで体のバランスを調整し、筋肉が正しく動くようにして、その人のもともと持つ筋力を発揮しやすくします。
疲れた筋肉のクセを整える「リセットコンディショニング」、使えていない筋肉を動くようにする「アクティブコンディショニング」のセットで行うのが基本です。

足、股関節や膝、もものコンディショニングで、下肢の筋力アップ

歩く速度が遅くなり、つまずいたり転びそうになることが増えていませんか? 股関節の固さや膝関節の伸ばしにくさ、足裏の痛みなどの不調は、足裏や足首、ふくらはぎなどの筋肉が使いすぎて硬くなり、動きにくくなるために起こることがあります。硬くなった下肢の筋肉をリセットし、使える状態に戻していきましょう。

取り⼊れる⽬安の回数
「リセットコンディショニング」
体感で「よくなった」と感じるようになるまで
「アクティブコンディショニング」
20回(10回2セットでもOK)を目安に
1足のコンディショニング
リセットコンディショニング
【 足首リセット<指分け・足首グルグル> 】

足指や足裏は、「立つ」「走る」という動きの基本を支えている存在です。長年ため込んできた体のクセをリセットし、足裏の筋肉をアクティブ化しましょう。足の接地が安定し、転びにくくなります。
足首回しはよく行われるエクササイズですが、その前に指を1本ずつ開いてリセットし、まずは足指を整えます。
次に手指を足指の間にいれ、足首を手で回すことが効果を上げるポイントです。足首グルグルは10回ずつ両回しにします。

  1. 1.イスに座り、片足のくるぶしを反対の足の太ももに乗せます。膝の上に乗せないように。足を無理に引き上げるのでなく、体をくるぶしに近づけていきます。
  2. 2.親指から小指まで、1本ずつ指を伸ばしながら広げる「指分け」を行います。
    しだいに指がリセットされ、十分に開くまでやりましょう。足指が固いと足のつりや痛みの原因になります。
  3. 3.手の指を足の指の間に入れて、しっかりと組みます。
    反対の手は、くるぶしに親指を添えて足首をホールド。
    指分けで足指を十分に広げておくと手指がよく入って回しやすくなり、末しょうの血流もアップします。
  4. 4. 足首を時計回りに10回回します。
    バランスをとるために反対側にも10回回します。
    ゆっくり大きく回すことで足首、ふくらはぎ、すねの筋肉をリセット。
  5. 5.反対の足も同様に行います。
アクティブコンディショニング
【 足裏パワーポジション 】

歩くときに、床を踏んで蹴り出しを行っているのが足指の付け根にある足裏の筋肉です。「足首グルグル」で使いすぎた足の筋肉をリセットしたら、しっかり歩くために必要な足裏の筋肉を使えるようにしていきます。片足20回(10回ずつ2セットでもOK)ずつ行います。

  1. 1.イスに浅く座って膝上に手を置き、足指をちょっと浮かせてみましょう。
    このときに床と接して、足のバランスをとっているのが「足裏パワーポジション」です。
  2. 2.片足ずつかかとをまっすぐに上げて、「足裏パワーポジション」で床を押します。
    足裏、足の甲、足首、ふくらはぎの筋肉が刺激されて血流もよくなります。
  3. 3.反対側の足でもかかとを上げて足裏パワーポジションを実感しましょう。
    足裏の筋肉で歩き、止まり、体のバランスをとるよう意識することで、転びにくくなります。
【有吉先生の豆知識】

関節にゆがみがあると、筋力を発揮できなくなります。つまり、筋力が低下したのではなく、筋力が発揮できない状態になっているということ。コンディショニングで、使えていないところを使えるようにすることで、動きやすい体にすることができるのです。

2股関節・膝・もものコンディショニング
リセットコンディショニング
【 股関節リセット<クルクル> 】

股関節と膝は、年齢とともに痛みや変形の出やすくなる場所です。例えば、足を投げ出して座ったときに膝の裏が床につかない人も多いのではないでしょうか? こうした関節の曲がりや硬さがとれると、股関節、膝関節のつまり感がなくなり、転倒予防にも役立ちます。

  1. 1.イスのへりに浅く腰を掛けて足を伸ばし、かかとを床につけます。
    両手で膝の上あたりの太ももを持ちます。
  2. 2 .足の力を抜き、手で左右にクルクルと回すように動かします。股関節から脚を抜くようなイメージで行います。
  3. 3.クルクルは1セット20〜50回を毎日続けましょう。股関節や膝関節のつまりがとれ、膝がまっすぐ伸びやすくなります。
アクティブコンディショニング
【 レッグカール 】

もも裏の筋肉が硬くなると姿勢が悪くなり、足が上がらない、転びやすいなど歩行に影響が出ます。股関節や膝関節にも負担がかかるので、「クルクル」のリセットコンディショニングとともに、もも裏の筋肉を目覚めさせる「レッグカール」をやっておきましょう。片足20回ずつ行います。

  1. 1.イスに浅く腰を掛け、足をそろえます。
  2. 2.片足を、つま先を伸ばしたまま後ろに下げます。体の中心軸がぶれないよう、下げた足の膝が反対の足のふくらはぎにあたるよう意識します。
  3. 3.下げた足のつま先を伸ばしたまま、床をトントントンと軽くノックします。
    太もも裏の筋肉を目覚めさせ、転倒防止、大股でスッスッと歩くことなどに役立ちます。
【有吉先生の豆知識】

筋力には自信のある男性などのほうが、この動きが苦手かもしれません。
もも裏の筋肉が硬いと、足運びがうまくいかなくなります。また、股関節や膝関節の変形の原因にもなることがあります。転倒によるケガ防止にもレッグカールを取り入れましょう。

3中心軸のコンディショニング
※ここで紹介するコンディショニングは、立って行います。不安な方は壁やテーブルなどを支えにして行ってください。
アクティブコンディショニング
【 かかと上げ下げ 】

中心軸が安定してまっすぐ立てることは、しっかりと歩くための基本です。中心軸がずれると体の使い方や姿勢にも影響し、さっそうと歩けないだけでなく、体のゆがみやコリが起こります。かかとの上げ下げを通して、中心軸をとれるよう鍛えていきましょう。

  1. 1.かかとをそろえて立ち、頭からかかとの中央まで中心軸を意識しながらつま先を
    ハの字に開きます。このとき、膝とももを外回しにするように開き、お尻に力が入っていることを感じます。両手はウエスト(肋骨の下)に。
  2. 2.おへそを真上に引き上げるように、息を吐きながら「足裏パワーポジション」で立ちます。
    <ポイント>

    最初は高く上げる必要はなく、小さくトントントンとかかとを上げるだけでOKです。少しずつ中心軸が整い、高く立てるようになります。


<立って行うのが不安な場合はこちら>

  1. 1.ふらつきや転倒を防止するため、壁やイスの背、テーブルなどを支えにして立ちます。動作は上と同様に。
  2. 2.支えに手を添えて中心軸をとり、息を吐きながら足裏パワーポジションで床を押してかかとを上げます。
    ※足裏パワーポジションについては、上記の①を参照
    <ポイント>

    最初は小さくトントントンとかかとを上げ下げします。
    足裏パワーポジションでしっかり押すことができて上体が安定したら、高くかかとを上げましょう。

無理のないトレーニングで、ずっと動ける体を目指しましょう

散歩やスポーツの準備運動として、または歩いて足が疲れたときの回復に、足の冷えやむくみが気になるときなどにも、ここで紹介した動きは役立ちます。有吉与志恵先生曰く「腹筋やスクワットなどの筋トレを頑張る必要はありません。ゆるやかな動きで筋肉の疲れやコリをほぐし、体のアンバランスを調整することで筋力はアップします」。体に無理をかけずに運動習慣を続けることで、元気と若々しさを維持しましょう。
シリーズ記事「①姿勢すっきり編」「③⽣活らくらく編」のコンディショニングにも、ぜひチャレンジしてください。

コンディショニングトレーナー
有吉 与志恵(ありよし よしえ)先⽣

一般社団法人日本コンディショニング協会(NCA)会長。株式会社ハースコーポレーション最高技術責任者(CTO)。
福岡県出身、日本体育大学卒業。健康な肉体づくりのプロとして30年以上のキャリアを生かし、“筋肉を鍛えるよりも整える”ことで姿勢と体調を改善できる「コンディショニングメソッド」を確立。陸上、クライミング、テニスをはじめとする日本代表アスリートのトレーニングからシニアの運動指導まで延べ1万人以上のトレーニング、美容、健康づくりを指導。学校や企業向けの講演、高齢者の運動指導、指導者の育成にも情熱を注いでいる。「疲れをとる40歳からの回復筋トレ」「“頑張らない運動”で若返る! シニアのクルクルトントン体操」等著書多数。

その他の記事

    トップに戻る