2025年3月10日に創業100周年を迎えた中外製薬は、100周年記念プロジェクトを展開しています。その活動の一環として、社員向けのパネルディスカッションを開催。NPO、スタートアップといった多様な立場で医療に関わる有識者と当社CEOの奥田が登壇し、「パイオニアと共に描く患者中心の医療の未来」をテーマに対話を深めました。会場には報道関係者と中外社員約80名が参加。対談の様子は全社にオンライン配信され、活発な質疑応答もなされました。 ※イベント開催日時/場所 2025年3月12日/中外製薬本社
創業から100年——中外製薬の歩みと患者への想い
モデレーターはクイズプレーヤーの伊沢拓司さんが務めました。ディスカッションの冒頭、伊沢さんは「今日は“患者中心の医療”というテーマを、各分野のパイオニアの皆さんの原体験や想いから掘り下げていけたら」と述べ、参加者に積極的な対話を促しました。
当社の奥田、創業者・上野十藏が関東大震災の惨状を目の当たりにし、深刻な薬不足を憂い、「世の中の役に立つくすりをつくる」と1925年3月10日に起業したエピソードを紹介。100年の歴史を振り返りながら、「中外」という社名に“日本から世界へ”という志が込められていること、「技術ドリブン」の創薬アプローチで画期的な医薬品を創出し、世界の患者さんに届けてきたことを語りました。
奥田はまた、「患者中心」という価値観を体現する活動として、患者さん・ご家族の声を聞き、相互理解を目指しながら、共有価値創造に向けて取り組む「Pharmony*(ファーモニー)」を紹介しました。
*Patients(患者)とPharma(製薬)の頭文字と、Harmony(調和)を組み合わせた造語
この話を受けて伊沢さんは「海外から日本に薬を届けていた創業期から、今では日本から世界へ薬を届ける企業に。ターゲットが広がったからこそ、患者さん一人ひとりの声がますます重要になる転換点ですね」とコメントし、患者さんとの“共創”の必要性に言及しました。
「患者中心」への想いを実現する原体験——組織・事業づくりとリーダーシップ
各分野を代表する3名のパイオニアがそれぞれの原体験と、それを起点に組織、事業へと展開した道のりを紹介しました。
認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事の鈴木美穂さんは、自身が24歳で乳がんを発症した経験を語りました。がんという突然の宣告に戸惑いながらも、「情報がない」「相談する場がない」といった現実に直面。これらの“あったらよかったもの”を一つずつ形にしていく中で、若年性がん患者の支援団体「STAND UP!!」や、がんを経験した人やその家族、友人のための無料相談センター「マギーズ東京」の設立へとつながっていきました。
「がんになったことを自ら発信してくれる若い人が当時はいなかったんです」と語る鈴木さんに対して、伊沢さんは「ご自身も患者さんだったからこそ、患者さん同士や患者さんと医療とのつながりにフォーカスした取り組みをされる原動力になったんですね」と応じました。
続いては、不老長寿バイオテックスタートアップ「TAZ」代表の高橋祥子さん。医師家系に生まれ育ち、父の病院を訪れたことをきっかけに「そもそも病気になる前に何かできないか」との想いから、ゲノム解析スタートアップ「ジーンクエスト」を創業。現在は老化研究に軸足を置いた創薬・食品開発に取り組まれています。
高橋さんは「身近に病気になった人がいない場合、“予防”の大切さに気づかない人もいる。だからこそ、病気になる前の人に向けた医療情報の伝え方が重要」と語り、科学と社会実装の橋渡しをする難しさとやりがいを語りました。
最後に、医師でありUbie代表の阿部吉倫さん。臨床現場で、症状が出てから医療にたどり着くまでに時間がかかる患者さんを数多く目にした経験から、テクノロジーによって適切な医療への橋渡しを実現することを決意。症状検索アプリ「ユビー」を開発しました。
「1人の医師では届かない患者さんにも、テクノロジーなら届けられる可能性がある」と語る阿部さんに、伊沢さんは「システムという規模の力を使って、多くの人に希望を届けている」と共感の意を表しました。




組織やチームを動かすためのリーダーシップにも話題が及びました。奥田は、関節リウマチで手の関節が変形し苦しんでいた祖母への想いから薬学を志し、のちに関節リウマチ治療薬の開発に関わることになった経緯を紹介。「原体験からくる、この薬を何とか患者さんに届けたいという想いにみんなが応えてくれた」と語りました。
鈴木さんは「原体験があるから強く動けるし、共感してくれる仲間を巻き込める」と述べ、活動の立ち上げから継続、そして次世代への継承までを視野に入れて取り組んでいることを明かしました。阿部さんは「想いを共有し、責任を持って任せられる仲間を増やすことが、スタートアップには必要」と語り、価値観を共有し、権限委譲することの大切さを強調しました。高橋さんも「科学やテクノロジーの力だけでは社会は動かない。だからこそ“人を動かす”想いをいかに持つかが、研究者にとっても問われている」と述べました。一連の話を受けて、「価値を作るには、ある種常軌を逸したくらいの熱量や想いが必要なんですね」と伊沢さんが皆さんの共通点をまとめました。
共創で築く未来、次の100年に向けて
奥田は総括として、「パイオニアの皆さんに共通していたのは、患者さんのために、という強い想いを自分の言葉で表現して、周りを巻き込んでいることでした。そして、自分で考えて主体的に行動していること。これらは、100年前の中外の創業者、上野十藏も同じだったのではないかと思います。そうした想いを持ち続け、社会ともつながって、次の100年も我々は世界最高のイノベーション集団でありたい」と力を込め、会場とオンラインで参加した社員に向けて呼びかけました。パネリスト全員と中外社員が挑戦した「未来に向けたアクション宣言」も共有され、活気にあふれた会となりました。
マイアクション宣言とは:社員一人ひとりが実現したい未来への想いを「My Action」として宣言し、互いの想いを共有し、次の100年に向けて未来をともに創るプロジェクト 詳しくは中外製薬 創業100周年サイトをご覧ください。

伊沢さん:希望の源としての「知」を届ける
阿部さん:10億人の健康寿命を10年延ばす
高橋さん:健康なまま生涯を終える人を増やす
鈴木さん:経験を価値に変え、挑戦を続ける
奥田:“つながる力”で100年後もイノベーションを生み出す中外にする
参加者の声——対話から生まれた新たな気づき
イベントに参加した中外社員の声をご紹介します。
- 中外製薬にいるからこそ患者さんのためにできることを自分自身再度考えることができました。
- 患者中心を推進するにあたって、困難に立ち向かうマインドセットを登壇者から伺うことができて、自分のスタンスを見直すきっかけになりました。
- “何かを成し遂げるには気持ち(想い)が最も重要”、“挑戦には必ず失敗がある”といった点に特に共感・感銘しました。自身も業務内外にかかわらず、常に挑戦しつづけていきたいと思います。
- これからの医療への貢献として新しい切り口に気付けました。
