「世の中の役に立つくすりをつくる」。創業より100年受け継ぐ志を新たに、中外製薬が目指す未来

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2025年5月に行われた中外製薬の100周年記念式典の写真

2025年3月10日に創業100周年を迎えた中外製薬は、同年5月に「創業100周年記念式典」を開催しました。記念式典には、日頃より当社にご支援を頂いている国内外のご来賓252名にご参加いただき、これまでの100年の歩みを振り返るとともに、次の100年に向けた決意を新たにする貴重な機会となりました。本記事では、記念式典で語られた当社の100年の軌跡、そして社外有識者をパネリストにお迎えしたパネルディスカッションの様子を振り返り、中外製薬が次の100年に向けて目指す、創薬の未来を紹介します。

創業の志を受け継ぐ中外製薬、100年の軌跡とは

式典では中外製薬CEOの奥田と名誉会長の永山が登壇し、創業から現在にいたる当社の100年の歴史を振り返りました。

 

創業1925年。関東大震災の惨禍と深刻な医薬品不足を目の当たりにした創業者・上野十藏の強い使命感から中外製薬は始まりました。「世の中の役に立つくすりをつくる」という志を胸に、わずか7名の社員とともに歩み始めた一歩が、今日の当社の原点です。

 

上野十藏は1920年代にニューヨークに駐在していたほどの国際派であり、その上野が1950年にスイスのロシュ社を訪問した際、「実に立派。日本に帰ったら中外もこのような素晴らしい会社にしたい」と語りました。この創業者のロシュ社との出会いと憧憬が、後に当社とロシュとの戦略的アライアンス締結へとつながる運命的な縁の始まりだったのです。

2025年5月に行われた中外製薬の100周年記念式典にて、当社の100年の歴史を振り返っている時の写真

中外製薬は戦後復興期における栄養剤の工業化成功を皮切りに、一般用医薬品から医療用医薬品事業の強化、1980年代からのバイオテクノロジーを駆使した創薬への挑戦まで、常に時代の先を読み、挑戦を続けてきました。

 

そして2002年、ロシュとの戦略的アライアンスがスタートします。バイオ医薬に注力する当社にとって、研究開発への原資確保が急務であったことを背景に、当時のロシュ社のCEOであったDr. Franz B. Humerと医薬品産業の将来展望について対話を重ね、アライアンス締結に至ったことを振り返りました。永山は「30年先を見据えた時に経営に何が必要なのかが重要。先々のビジョンを描き、将来も社会に価値を出すために何をすべきかを常に考えてきた」と語りました。

 

奥田は、これまでの100年を「常に未開拓の分野に果敢に挑み続け、革新を創出してきた軌跡」と振り返り、決して平坦な道のりではなかったこの100年の軌跡には一貫して、患者さんへの想いを原動力としたイノベーション創出への強い意志があったことを熱く語りました。

パネルディスカッション「Unmet Social Needsを満たす革新への挑戦」

式典の後半では、「Unmet Social Needsを満たす革新への挑戦」をテーマとしたパネルディスカッションを開催。

埼玉医科大学学長の竹内勤先生、自治医科大学名誉教授・信州大学医学部招待教授・東京医科大学理事の桃井眞里子先生(当社社外取締役)、当社研究本部長の井川智之、メディカルアフェアーズ本部長西和彦が登壇。モデレーターはForbes JAPAN Web編集長の谷本有香さんが務めました。

自治医科大学名誉教授・信州大学医学部招待教授・東京医科大学理事の桃井眞里子先生がお話されている様子
自治医科大学名誉教授・信州大学医学部招待教授・東京医科大学理事 桃井眞里子先生

社会のニーズに対し、創薬・育薬と医療現場がどのような課題解決を見出していくかを探る本セッション。

 

まず、桃井先生は、医療の本質を「病気による不利益を最小化すること」と定義し、医療が届いていない領域にサービスを提供することが「アンメットメディカルニーズの解決」であると説明されました。この解決において、これまで創薬が果たしてきた役割は非常に大きく、将来においてもその重要性は変わらないと強調されました。その上で、これからの医療では従来の病気そのものによる不利益の解消に留まらず、医療におけるさまざまな不利益—治療に伴う苦痛や副作用、効果が見えないことへの不安、受診にかかる時間的負担、個人と社会が負う経済的負担―これらへの包括的な視点での対応が必要であるとの考えが示されました。

桃井先生は、病気と医療による不利益を包括的に最小化する取り組みを「アンメットソーシャルニーズ」という新しい概念として提唱され、それに創薬・育薬が果たす重要性を改めて強調されました。

 

竹内先生は、医療ニーズ=社会ニーズというのは当然の帰結であると捉え、医療が日進月歩で進化する中、その先の社会を見据えた医薬品開発が必要だとお話されました。「医薬品は承認・発売がゴールではなく、むしろスタート。

患者さんの暮らし・ご家族など社会に目を向けていく必要があります」と述べられ、薬を作ることが単にメディカルニーズを満足するだけではなく、同時にソーシャルニーズを満足させなければいけないという視点の重要性をお話されました。

埼玉医科大学学長の竹内勤先生がお話されている様子
埼玉医科大学学長 竹内勤先生

井川は、当社の創薬戦略について触れ、「当社の研究開発の考え方・行動原理をまとめた『R&Dプリンシプル』のもと、Technology-Driven、Quality-Centricを軸とした創薬で、単にアンメットメディカルニーズを解決する新しい薬を作るのではなく、世界の医療のあり方そのものを根本から変革するパラダイムシフトを起こし、アンメットソーシャルニーズを解決できるような新薬を創りたい」と語り、「創薬で、治療を変える」という当社の創薬が目指す未来に向けた、3つのビジョンを紹介しました。

当社研究本部長の井川智之が話している様子
中外製薬 研究本部長 井川智之

西は、「医薬品の価値はモノ+情報」であり、従来のメディカルニーズに対するエビデンス創出から、患者さんを起点とした疾患特有のニーズ、患者さんのライフスタイルに応じたニーズに対するエビデンス創出を強化していく必要があると強調。「患者さん一人ひとりが治療に対して重視することは違ってきます。患者さんにとって最適な治療の選択肢を創出し、届けることが私たちの使命です」と述べました。リアルワールドデータの活用や、患者さんの生活の質(QOL)向上を重視した治療法の開発、医療関係者への教育・情報提供の充実などの具体的な施策を紹介。また、デジタルヘルス技術を活用した患者さんのモニタリングシステムの開発や、患者さんの声を直接製品開発に反映させるPatient Engagement活動の強化についても言及し、従来の製薬会社の枠を超えた包括的な価値提供を目指していることを話しました。

当社メディカルアフェアーズ本部長の西和彦が話している様子
中外製薬 メディカルアフェアーズ本部長 西和彦

セッションの総括では、創薬の可能性を再認識するとともに、中外製薬独自の技術とサイエンスを活かした創薬に邁進していくことが表明されました。今後、多様なステークホルダーとの共創により、課題や認識を共有しながら解決策を導き出すことで、新しい治療と価値の創造のサイクルが加速し、患者さんや社会により早く価値を届けることができることが強調されました。

中外製薬は創業の志「世の中の役に立つくすりをつくる」を胸に、次の100年も社会課題の解決に貢献していく決意を示しました。

次の100年へ

奥田は本式典を通じ「世界中の患者さんから信頼され、期待される『世界のトップイノベーター』となることを目指す。創薬で治療を変え、患者さん一人ひとりに最適な医療を届けることで、社会課題を解決し、社会全体の発展に貢献していく」と力強く宣言しました。

 

100年の歴史に培われた挑戦の精神を受け継ぎながら、次の100年も革新的な医薬品の創出を通じて社会に貢献していきます。

 

記載内容・所属は2025年5月時点のものです。