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姿勢のクセを修正し、
すっきりと若々しく見える体に!

監修:有吉与志恵先生

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持病を抱えていたり、療養生活をしていたりするなかでも、体力を回復し、かつ若々しさを維持するために筋力アップは重要です。とはいえ、「すぐ疲れてしまう」「体が硬くて動きにくい」など、なかなか運動に取り組めないこともあるでしょう。そんなとき、試してほしいのが、トレーナーの有吉 与志恵(ありよし よしえ)先生が開発したコンディショニングという方法です。今回は、悪い姿勢のクセを脱却し、健康的ですっきりした姿勢を取り戻すために、座った姿勢でラクにできる首、腕、背骨のコンディショニングをご紹介します。

コンディショニングとは?

体を「鍛える」のではなく「整える」という考え方。姿勢や動きのクセによる筋肉の疲れや緊張(コリ)を整えることで体のバランスを調整し、筋肉が正しく動くようにして、その人のもともと持つ筋力を発揮しやすくします。
疲れた筋肉のクセを整える「リセットコンディショニング」、使えていない筋肉を動くようにする「アクティブコンディショニング」のセットで行うのが基本です。

首、腕、背骨のコンディショニングで、姿勢よく、呼吸も深く

猫背でうつむきがちの姿勢が多いと、首や背骨に負担がかかって疲れやすく、肩こりや頭痛も感じやすくなります。悪い姿勢のクセを脱却し、健康的ですっきりした姿勢を取り戻しましょう。ここでは座った姿勢で、首、腕、背骨のコンディショニングを行います。姿勢がよくなると肺が開きやすくなり、深くゆっくりした呼吸もできるように。いい姿勢は見た目が若々しく見えるだけでなく、内臓にもいい影響が期待できます。

取り⼊れる⽬安の回数
「リセットコンディショニング」
体感で「よくなった」と感じるようになるまで
「アクティブコンディショニング」
20回(10回2セットでもOK)を目安に
1⾸のコンディショニング
リセットコンディショニング
【 ⾸のクルクルトントン 】

重い頭蓋骨を支え続けている首は、常に緊張し、負担のかかりやすい状態です。長年の姿勢のクセが、首のコリやだるさの原因になっているかもしれません。まず、首回りの筋肉の緊張をとり、悪いクセをリセットしましょう。
リセットコンディショニングの動きに共通するのは、力を抜いて「ゆらす」「そっと押し上げる」などのゆるい動きであることです。

  1. 1.両手の指を、首を包むように当てます。
    <座り方のポイント>

    イスの座面1/3ぐらいに浅く腰かけ、両足をそろえて背すじを伸ばします。坐骨(尾てい骨の左右にあるお尻の骨)を立てるように座ると背中がスッと伸び、背骨や肩に余分な力が入らないので筋肉をリセットしやすくなります。

    <手のポイント>

    左右の手の指が、首の骨のポコポコした部分にあたるように軽く組みます。

  2. 2.息を吐きながら、頭を「イエス、イエス」と上下に小さく振ります。
  3. 3.続いて「ノー、ノー」と小さく左右に振ります。
    <ポイント>

    首の骨(頸椎)を両手の指でしっかり支え、首の力は抜いたままで上下、左右に軽く動かしましょう。脱力したゆるい動きを何度か繰り返していくことで筋肉がリセットされ、首まわりがラクになるのを実感してください。

アクティブコンディショニング
【 首伸展(くびしんてん) 】

リセットした首の筋肉を縮めて、動きやすい筋肉にしていきます。首は、脊髄(せきずい)につながる細い神経が何本も通っていて、とても繊細な場所です。手で支えずにグルグル首回しをしたり、強くもんだりすると逆に首を痛める危険もあるので注意しましょう。
アクティブコンディショニングは体の軸(中心線)を意識し、筋肉を意識して動かします。こちらは、信号を送る感覚です。
無理なくできるので、朝の起床時、体のコリや疲れが気になるとき、お風呂タイムなど、いつでも行うことができます。

  1. 1.右手の指は首の後ろのポコポコした骨に当てたまま、左手の指をそろえてあごの下に当てます。
    <ポイント>

    右手は首の後ろ、左手はあごの下に当てて頭部をしっかり支えます。

  2. 2.あごの下の指をグーっと上に押し上げます。そして、上げ下げを何度か繰り返します。これにより、リセットされた首回りの筋肉が収縮し、筋肉の動きをよくしていきます。
  3. 3.左右の手を入れ替え、左手を首の後ろに、右手をあごの下において同様に繰り返しましょう。両方とも行うことで、左右の首の筋肉が調整され、動きがスムーズになります。
2肩のコンディショニング
リセットコンディショニング
【 肩ブラ 】

「肩に力が入る」のは緊張してガチガチな状態を指す例えですが、日頃から肩や背中がそんな「過緊張」の状態になっていませんか?「肩ブラ」は肩の力を抜いたまま、腕を小さく動かす、小さく回す動きです。ささやかな動作ですが、肩に入っていた余分な力が抜けて肩こりを和らげたり、腕が動かしやすくなったりします。

  1. 1.肩の端に手をのせ、指を肩関節と腕関節の間のくぼみにひっかけるように置きます。これにより、肩にムダな力が入らないよう支えています。
  2. 2.肩の力を抜いて腕をだらりと下げ、指先が服のすそをスリスリとこする感じで前後に振ります。
  3. 3.次に、腕を体につけたまま、外側から内側へクルクルと回します。手先を動かそうとせず、肘を意識しましょう。
  4. 4.片手が終わったら、反対側の手で1、2を行います。肩リセットが終わると、肺のまわりの呼吸筋といわれる筋肉もリラックスするため、呼吸がラクになってきます。
【有吉先生の豆知識】

肩や腕を使いすぎると、腕をまっすぐ体の横に下ろしても体にくっつかず、肘のあたりに空間ができてしまいます。そんな人は肩のリセットを行ってみましょう。

アクティブコンディショニング
【 ペンギン体操 】

肩の筋肉がリセットできたら、ふだん使われにくい肩の裏側の筋肉を動きやすくしましょう。「つい背中が丸まってしまう」という人は、ぜひ毎日の習慣にしてください。

  1. 1.足をそろえて、膝の真ん中と体の真ん中を意識して座りましょう。
    腕を下ろして肩を外側に回します。胸が広がり、ややあごが上向きになります。
    肘を伸ばし、手首を後ろに少し折ってペンギンのようなポーズに。
  2. 2.息を吐きながら、腕を数センチ横に広げて体にトントントン…と当てます。脇が締まるような感覚です。
  3. 3.小さな動きですが、腕が体にぴったりとつき、肩甲骨が下がるのを意識しましょう。
3背⾻のコンディショニング
リセットコンディショニング
【 背骨クルクル 】(背⾻の回旋運動)

背骨のリセットで背骨と背骨の間のつまりをゆるめることは、すっきりしたきれいな姿勢をつくるだけでなく、腰痛予防にも役立ちます。立ち方、座り方のクセにより、筋肉にかかる負担は人それぞれ。毎日、背骨クルクルで背中の筋疲労をリセットするのもおすすめです。

  1. 1.イスに浅く座って足をそろえ、上半身(頭、肩、腕)の力を全部抜きながら頭をゆっくりと深く落とします。足をまっすぐにそろえ、体の中心線に沿って頭を落とすのがポイント。
  2. 2.脱力した状態で、背骨を中心軸として背中全体を左右に小刻みにゆらします。
    クルクルとゆらすたびに、背骨周りの緊張がとれていくのを実感してください。
  3. 3.クルクルとゆらしながら、頭の高さを少しずつ上げていきます。頭の高さに
    よって筋肉がリセットされる位置が変わっていくのがわかりますか?
  4. 4.頭の高さを変えながら、筋肉がほぐれて気持ちのよい位置(高さ)を見つけてみましょう。
  5. 5.背中がラクになったと感じたら、ゆっくりと頭を上げていきます。無理は禁物。
    2~3分ずつ、毎日続けてみましょう。
【有吉先生の豆知識】

背骨は、頸椎(7個)、胸椎(12個)、腰椎(5個)の骨が積み木のように積み重なってできていて、周囲の筋肉が「立つ」「座る」姿勢を支えています。長年使われるうちに背骨周りの筋肉は収縮し、背骨と背骨の間が狭くなり、背中痛や腰痛の原因にもなります。しっかりとリセットをして、正しい姿勢を取り戻しましょう!

アクティブコンディショニング
【 呼吸 】

背中の緊張がとれると、深い呼吸がしやすくなり全身に酸素が行き渡ります。息をしっかり吐くことでおなかに胴巻きのように巻いている腹横筋が収縮します。すると、おなかの底で臓器を支えている骨盤底筋群も刺激され、尿もれ予防にも役立ちます。
そして、背骨を支えている多裂筋という筋肉も刺激され、背すじがきちんと伸びて体を支えてくれます。

※血圧の高い人、息を吐き切って頭痛がするようなときはこのトレーニングを避けてください。
  1. 1.足をぴったり閉じて座り、両手はウエスト(ろっ骨の下)に置きます。
  2. 2.一度息を吸い、おなかをへこませながら「ハーーーッ」と一度で軽く息を吐きます。手のひらでおなかを押し込むイメージです。
  3. 3.次に、吸った息を3~5回に分けて「ハ、ハ、ハ、ハ、ハー」と短い息で吐き出し、
    最後に吐き切ります。短い息を吐くことで腹部の筋肉が刺激され、正しい体幹トレーニング法が身に付きます。
    <ポイント>

    足がうまく閉じられない方は、浅く座って丸めたタオルを股間に挟み、内ももを意識しながら1~3の呼吸をしてみましょう。骨盤底筋トレーニングにもなるので、尿もれ(腹圧性尿失禁)が気になる人にもおすすめです。

アクティブコンディショニング
【 回旋 】

きれいな姿勢とは、左右のゆがみがない状態でもあります。まっすぐ立つには中心軸をイメージすることがとても重要。このアクティブコンディショニングを取り入れることで、中心軸がとれるようになると、動きがぶれないので疲れにくく、サッサッと歩け、転倒予防にもなります。

  1. 1.両足をそろえて座り、体の中心軸を意識しながら手を胸の前で合わせます。
  2. 2.体の中心軸を意識しながら、右肩だけ後ろに引きます。
    左手はそのまま前に伸ばしています。
  3. 3.右肩を十分後ろに引いても、体の中心軸はズレません。
    このトレーニングを毎日行うことで、体が中心軸を覚えて、日常の動作でも左右にぶれない動きができるようになります。「歩いていて左右に体がぶれる」といった方におすすめです。

<肩を後ろに下げる動き(2~3)がうまくできない場合はこちら>

  1. 1.中心線を意識しながら、右手を反対側のろっ骨の下に当てます。
  2. 2.右手の角度をそのまま維持しながら、肩を後ろに引いてみましょう。上と同様の動きがうまくできましたか?
まずは体を動かす習慣として。
1日2~3個の動きを、無理のない程度で始めましょう

ご紹介した動きは、どれも2~3分ででき、体に負担がかかりにくいものばかり。いつ、どの動きから始めてもかまいません。朝、起きぬけに体を目覚めさせるために行ってもいいし、体のコリやだるさを感じる部位のリセットから毎日の習慣にしてもいいでしょう。体を動かす習慣を持つだけで体は変わり、気分転換にもなります。元気と若々しさの維持につなげませんか?
シリーズ記事「②⾜腰しっかり編」「③⽣活らくらく編」のコンディショニングにも、ぜひチャレンジしてください。

コンディショニングトレーナー
有吉 与志恵(ありよし よしえ)先⽣

一般社団法人日本コンディショニング協会(NCA)会長。株式会社ハースコーポレーション最高技術責任者(CTO)。
福岡県出身、日本体育大学卒業。健康な肉体づくりのプロとして30年以上のキャリアを生かし、“筋肉を鍛えるよりも整える”ことで姿勢と体調を改善できる「コンディショニングメソッド」を確立。陸上、クライミング、テニスをはじめとする日本代表アスリートのトレーニングからシニアの運動指導まで延べ1万人以上のトレーニング、美容、健康づくりを指導。学校や企業向けの講演、高齢者の運動指導、指導者の育成にも情熱を注いでいる。「疲れをとる40歳からの回復筋トレ」「“頑張らない運動”で若返る! シニアのクルクルトントン体操」等著書多数。

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