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就活で病気を持つ自分を魅力的に伝えるには?
キャリアコンサルタントが解説

監修:国家資格キャリアコンサルタント/
産業カウンセラー 岡田 晃さん

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志望する企業の印象に残る自己PRをするには、事前の準備が欠かせません。自分の抱える病気を就活のマイナス要素にせず、「働ける」「働きたい」という自分の意思と魅力をしっかりと伝えるには、どうしたらよいのでしょうか。国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラーとして、病気を抱える方の就職支援・就労支援に深く携わる岡田 晃さん(一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット-ブリッジ所属)がアドバイスします。

伝え方次第で、一見短所に見えることが長所になる!

例えば、病気のことが気になり、面接時に言葉尻や表現の仕方がネガティブで自信がなさそうな人がいたとします。企業の採用者だったら、その人を採用したいと思うでしょうか。きっと、発言がポジティブで明るい表情の人と一緒に働きたいと思いますよね。

では、自分を少しでもポジティブな印象に見せるには、どうすればよいでしょうか。自己PRを考える学生さんには、物事をとらえる枠組みを変えて違う視点で考える「リフレーミング」をおすすめしています。
例えば円柱は、真上から見れば円の形ですが、真横から見ると四角形に見えます。同じものでも、上から見るのと横から見るのとでは形が違いますよね。つまり、見る方向が異なるだけで、実態は一つだということです。それは、自分自身も同じです。短所だと思っていたことも、見方によっては長所になるのです。

ネガティブに捉えられがちな病気についても、見方を変えれば印象が大きく変わります。例えば、何年にもわたって入院したことを辛い経験としてではなく、「それに耐え得るだけの精神力や生きる力が備わった」「入院中にいろいろな大人たちとコミュニケーションを図って学んだ」など、プラスの経験として考えることができると思います。
「転んでも、ただでは起きない作戦」と私は呼んでいますが、ぜひポジティブな思考でアピールしてください 。ただし、「自分だけで考えていてもリフレーミングなど思いつかない」ということも少なくないでしょう。そのときは、ぜひ、就労支援の専門家と一緒に考えることをおすすめします。

企業に伝えるべきは、病名や治療法ではなく
「仕事への影響」について

企業側に自分の病気を伝えるかどうかについては悩まれるところでしょう。病気の「開示・非開示」については、大前提としてふたつお伝えしたいことがあります。

ひとつ目は、志望する企業への病気の開示や非開示については、「必ずこうしなければならない」というような決まりごとがあるわけではなく、人それぞれでよいということ。一方、企業には安全配慮義務があるため、病気が業務に直接影響をおよぼす場合は伝えておく必要がありますが、仕事に関わらない場合その必要はありません。

ふたつ目は、具体的な病名については要配慮個人情報なので、必ずしも自分から積極的に企業に伝える必要はないということです。伝えることが効果的に働くのは、病気の状況や治療によって与える仕事への影響です。
例えば、「週5日、フルタイムの事務職」という業務内容に対して関わってくるのは、「白血病」というではなく、「治療や通院のために月に2回の休みが必要」というです。また、「治療について伝えておきたい」と考えた場合、「抗がん剤治療」という治療法を伝えるというより、「薬の影響で足がしびれるので、長時間の立ち仕事は難しいです」と説明してみてください。これなら、企業側に配慮を求めたいことだけが伝わるでしょう。

病気のことを伝える場合の最適なタイミングとは?

就活において病気のことを伝える場合、「いつ伝えるか」というタイミングも大事です。タイミングとしては、大きく以下のような5つのパターンがあります。

  1. ①応募時、大学の職員やハローワークの職員が企業に確認する際に伝える
    (応募は締め切っていないか、応募条件にあっているかなどの確認時)
  2. ②履歴書やエントリーシートに書く
  3. ③面接時に自分の口から伝える
  4. ④入社後、半年〜1年ぐらい経過し、周囲の人とコミュニケーションが取れてから伝える
  5. ⑤採用時も入社後も伝えない

どのタイミングが適切だと思いますか?

①を選ぶ人も多いかもしれませんが、私の経験上、その後採用いただいたケースが多いと感じるのが、③の「面接時」です。それはなぜだと思いますか?
例えば、見た目で持病があるかどうかがわからないことも少なくなく、面接官と直接やり取りができれば、病気のことを告げても「問題なく働けそうだ」と企業側が納得しやくなります。また、「これは難しいけれど、こんなことでカバーできます」など、面接のときであれば自分の状況をより前向きに伝えることも可能です。

また、本人が希望すれば、①のタイミングで大学職員やハローワークの職員が本人の代わりに企業に伝えることもできます。私の経験上、ここで応募を断られるケースはここ最近では、ほぼなくなってきています。職員は伝え方のコツを知っているし、受け入れ側(企業など)の理解が進んできているからです。

病気が仕事内容に影響しない場合は、④や⑤の選択肢も考えられます。ただし、②の「履歴書に書く」は、おすすめできません。履歴書は、一方通行の伝え方で相手がどう受け取るかわかりませんし、企業側の多数の人の目に触れる可能性があります。わざわざ書面に残さないほうがよいでしょう。

病気に負けない就活には戦略と支援者が必要

これまでご紹介したように、「病気のことを伝えるか伝えないか」「どのように伝えるのか」「いつ伝えるか」については、自分なりの戦略が必要です。その大切さを強く感じたエピソードがありますので、ご紹介しましょう。

病院の受付事務の採用面接を受けた、ある難病患者さんの話です。この方は面接を受けた際、やり取りの中で自分の病名を開示しました。その時、面接官のひとりである看護師さんは病名を聞いた途端、ガクッと首を落としたというのです。つまり、看護師さんは、その病気の症状や病気の経過がわかっているだけに、ある意味ショックを受け、それが仕草として出てしまったようなのです。
ですが、こうした反応もこの患者さんは想定内でした。このようなことも考えられたので、私は事前にご本人と話し合い、面接の際に病気のことを伝えるだけでなく、ポジティブで、かつ、相手が安心するような言葉も添えるように助言しました。その言葉とは、「現在、自分は元気になっており、仕事ができる状態で、かつ、医師からも『就労制限なし』のお墨付きをもらっている」というものです。これらの言葉の安心感が看護師さんを納得に導いたようで、結果、採用となりました。

この話を通じてお伝えしたいのは、病気がある場合の就活では、一般の就活の戦略に加えて、『有病者ゆえの特有な』戦略が重要だということ。そして、戦略を立てる際には、ひとりで考えて悩むよりも、就労に詳しい支援者とともに知恵を絞ったほうがよいということです。大規模病院の相談支援センターや患者会、ハローワークの「長期療養者就職支援窓口」などで相談に応じてもらえます。

支援者といっしょにしっかりと対策を練ることで、不安も和らぎます。自信を持って、志望する企業に自分の魅力を存分に伝え、内定を勝ち取れるように祈っています。

国家資格キャリアコンサルタント/
産業カウンセラー
一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット-ブリッジ所属

岡田 晃(おかだ あきら)さん

国家資格キャリアコンサルタント/産業カウンセラー。ハローワークの就職支援ナビゲーターとして、さまざまな立場の人たちの就労支援に長く携わる。特に、長期療養者の就労支援や連携先拠点病院での出張相談を行い、長く病気を抱える人たちの就労支援のスペシャリストとして活躍。また、大学のキャリアセンターなどでの就活相談も行い、大学生の就活の現状にもくわしい。「一般社団法人 仕事と治療の両立支援ネット-ブリッジ」の活動にも参加し、広く支援の手を差し伸べている。

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