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思春期の子どもとどう付き合う!?
親子コミュニケーションのヒント

監修:心理学者 山脇 由貴子さん

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話しかけても反応なし。口を開いたかと思ったら「うっせえ」「うざい」。つい小言を並べたてたり、はれものを触るように距離を置いてみたりと、思春期真っただ中のわが子とどう向き合えば良いのか戸惑っている親御さんも多いのではないでしょうか。そこで、児童相談所の児童心理士として19年間のキャリアを持つ心理学者の山脇由貴子さんに、思春期の子どもと上手にコミュニケーションを取るコツについてうかがいました。

わが子が全然わからない――いまどきの思春期って?

思春期特有の心理状態である「慢性的なイライラ」に困惑しつつ、ゲームばかり、スマホばかりいじって、やるべきことをやらない子どもに、つい小言を並べては余計にイラッ。ますます親子間のコミュニケーションが取りづらくなる――まさに“思春期の親子あるある”です。

思春期の子どもとはコミュニケーションが取りにくくなりがちです。特に男の子はとにかくしゃべらなくなり、「男の子だから仕方ない」とあきらめてしまうことも多いようです。
でも病気に関する留意事項のチェックはまだまだ必要な年代。例えば、「薬は飲んだ?」「食べてはいけないものは食べなかった?」程度の確認は必要です。
もしも「全部わかっているし、きちんとできているから」と返ってきたら、それ以上は踏み込まないこと。あとは、LINEやメールでもいいので「必要なことは事前に言ってね」と時々釘をさすくらいに留めておきましょう。ある程度の年齢になったら、自分の子育てを信じ、子どもを信じることです。

また、危ないところに行っていないか、危険なことをしてないかは確認しておきたいもの。特に女の子は、しっかりと見守っておきたいですね。
門限を決め、行き先を聞ける関係性を維持するために、大事なことは“干渉しすぎない”ことです。なんでもダメダメと口うるさく言っていると、そのうちうそをつくようになります。行き先を聞いて特に危険がなさそうであれば、さらっと「気を付けて。時間には帰ってくるのよ」と守るべき事柄だけを確認して送り出す。そして、インターネットを通じて危ないことをしていないか、ものの増え方やお金の使い方に変化がないかなどにも、気を配っておくとよいでしょう。

思春期の子どもが一番嫌がるのが「口うるさい」こと。「やるべきことはやってよ!」という怒りはもっともです。でも、オンラインゲームやグループラインは、彼らに言わせれば「自分だけ抜けるとみんなに迷惑がかかるから、急にはやめられない」もの。「つながっていないと不安」症候群はまさに現代病ですが、子どもの世界、彼らの事情を無視して一方的に親の正義を押し付けるやり方は、反発を招くばかりです。

思春期は“自由には責任が伴うことを学ばせる時期”でもある

中高生になると、行動範囲も交友関係もそれまでとは比べ物にならないほど広がります。関心を持つ対象も多様になり、さまざまな誘惑がお子さんを悩ませるでしょう。その善悪を自分一人で判断するには、まだ未熟な部分もあるのが思春期です。

そのため親としては、社会規範はもとより、病気との兼ね合いで行動をどこまで制限し、どこまで許すかを常に考えておく必要があります。ただし、たとえば「新宿には行っちゃだめ」などと、ある種の偏見でむやみに行動を制限するのはNGです。
思春期は、“悪いことをしたら、自分で責任を取らねばならない”ことを学ぶ時期でもあります。法に触れる行為はもちろんですが、病気についても子ども自身に“ルールを守らなかった結果”を引き受けさせるくらいの覚悟が必要なのです。

過干渉でも放任でもなく、子どもの成長をサポートする親のあり方とは?

慢性的な疾患をもつ子どもが思春期に一度は抱くのが、「なぜ治療を受けなければいけないの」「なぜ制限のある生活を強いられるの」という疑念です。

これまでは病気のこと、治療のこと、生活上の留意点との折り合いなど、親が当人に代わって選択して環境を整え、守ってきました。でも、思春期を迎え、自立への道を歩み始めたわが子には、これまでとは違った関わり方が必要です。
何もかも「ダメダメ」と親から言われても反発するばかり。お子さんが病気のことをある程度理解できるようになったら、「この先、こういうことがあるだろうけど、あなたはこういう病気があるから、できないことをわかっておいてね」と見通しを立ててあげるのも親の大事な役目です。

そもそも子どもとは危ないことをしたがるのが常。その行動をどう安全な枠の中に収めるか、というのが親のしつけです。社会的な逸脱をしないために、培われるべきは「これをやったらお母さん(お父さん)はどう思うかな」という気持ち。最終的には自己を律する“円”を自分の中で作っていきます。それはおそらく病気との付き合い方でも同じです。「これをしたら具合が悪くなった」という経験を積むことで、自然と自ら安全な円の中に収まっていくでしょう。

時に親だけでは手に負えないこともあるでしょう。そんなときはぜひ第三者の力を借りてください。病気に関することなら医師に直接説明してもらう方法もありますし、学校の先生やカウンセラーが適任者である場合もあります。

実際、子どもたちには親以外に信頼できる第三者=『内緒話のできる大人』を持つことをすすめています。家族や家庭に対する不満を心置きなく言える相手(場所)があることはとても重要です。大人が自分の気持ちに共感してくれることで、子どもはすごく楽になります。また、第三者が入ることで親子のコミュニケーションの懸け橋となり、双方の本音を受け入れやすい言葉に翻訳し、互いの理解を助けてくれます。

親は子どもの病気に負い目を感じがちですが、決して子どもの将来を悲観してはいけません。親には弱点に見えることが、実際には子どもの将来に役立つかもしれないからです。勝手にハンデキャップだと決めつけずに、「この子は大丈夫」と信じ、肯定的な子育てや声掛けをしてほしいと思います。

心理学者 山脇 由貴子(やまわき ゆきこ)さん

横浜市立大学心理学専攻卒。都内の児童相談所に心理の専門家(児童心理司)として19年間勤務したのち、『山脇由貴子心理オフィス』を開設。以降、女性の生き方アドバイザー、家族問題カウンセラーとして活動する傍ら、映像メディアにも多数出演、国内外で講演活動も行っている。著書には現代のいじめ問題を扱ったベストセラー『教室の悪魔』(ポプラ社)などがある。

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