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大人はわかってくれない!?
親に自分の気持ちをうまく伝えるには?

監修:心理学者 山脇 由貴子さん

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「うざい」「むかつく」「わかってない!」――これまで病気も含め、いろいろなことに二人三脚で向き合ってきたのに、このところ親との関係がギクシャクして「どうしていいかわからない」。思春期真っただ中のあなたがそんなふうに思うのは、ごく自然なことです。思春期は、これまで親に守られる存在だったあなたが、自立した“ひとりの人間”に成長するために欠かせない期間でもあります。でも、ずっと親とすれ違ったままでは、困るのも事実です。そこで、心理学者の山脇由貴子さんが、親とよい関係を保つことのメリットやスムーズにコミュニケーションをとるコツなどをアドバイスします。

あるある! 親は全然わかってくれない!

中学や高校に入って環境が新しくなると、友人関係や自分の居場所をつくるために、大きなエネルギーを使いますよね。しかも、心も身体も大きな変化を迎える思春期の真っただ中。いつもならスルーできるはずのちょっとしたことやまわりの言動が、いちいちストレスになって、モヤモヤしたり、やる気が起きなかったり、やたらと攻撃的になったり。「感情がコントロールできない!」と感じているのではないでしょうか。

親も思春期のあなたが何に怒り、何に悩み、何を求めているのかわからず、それを理解するために言葉での説明を求めてきます。でも、あなたからすれば、言えないことや言いたくないことも多いはず。そもそも「自分でも何にイラついているのかわからない」という戸惑いもあるのでは? それがさらなるイライラや親への拒否感、気分の落ち込みにつながって、「うざい」「何を言ってもムダ」「もう何も話したくない」と、親との会話をシャットダウンしてしまうのかもしれません。

そんな気分に追い打ちをかけるように、親から、「勉強しなさい」「スマホを置きなさい」「早くご飯を食べなさい」「ゲームをやめなさい」「早く寝なさい」などと小言を言われたり、逆に“はれもの”に触るような扱いをされたりすれば、ますます関係は悪くなってしまいます。これ、まさに思春期の親子関係の“あるある”です。

とはいえ、そんな状態を”思春期だから仕方ない“とあきらめるのはあなた自身のためにはなりません。なぜなら、中高生にとって精神面はともかく経済面での自立は難しいですよね。とりわけ病気とともに生きるあなたには、まだまだ親の助けが必要だからです。

自分も少しラクになれる、親とのいい関係のつくり方

おそらく思春期のあなたが一番イヤだと感じるのは、「どこに行くの」「誰と行くの」「何時に帰ってくるの」「何をするの」など、何もかも知りたがる・管理したがる親の“過干渉”ではないでしょうか。これまでは親の言いつけに従ってきたあなたも、だんだん自由を求めるようになります。外にも出たい、夜遊びもしたい、周りの子と同じようなことをしたい!――なぜ自分だけダメなの?と納得できないことも増えてきますよね。
そんなとき、もしあなたが自分の病気についてきちんと理解しているのであれば、一度、「自分のことはきちんとできるから、口出ししないで」と親にはっきりと伝えましょう。もちろん、その言葉だけでは親は納得しません。“自分は大丈夫”だということをしっかり行動で示すことが大切です。そうすることで、親からの不要な干渉は減らせます。

一方、あなたの自由にやらせてくれる、よく言えば“意思尊重”型、悪く言えば“放任・放置”型の親に対しては、少しだけがんばって、あなたの率直な気持ちを伝えてみましょう。親もあなたのことは心配だけど、どう接したらいいのか、どう手助けしていいのかわからないだけなのです。例えば「これができないんだけど」「ちょっと具合が悪くて」など、あなたが何に困っているのか、何がつらいと感じているのかを伝えれば、あなたが求める手助けを喜んでしてくれるはずです。

また、あなた自身がイライラや不安、怒りの原因がわからない場合にも、「どうしたら良いかわからない」状態であることを親にうまく伝えられれば、関係性はぐっと変わってきます。あなたが「怒っているわけではなく、助けを求めている」とわかれば、内心ほっとしながらも解決法を探ってくれるはず。たとえよい方法が見つからなくても、少なくとも「〇〇しなさい!」「なぜ〇〇しないの?」といった見当はずれな干渉は減るでしょう。

親以外に『内緒話ができる』大人を作りましょう

もし、「親に相談を持ちかけるのなんて無理!」、または「親に気持ちがうまく伝わらずに毎回けんかになってしまう!」のであれば、親以外の第三者である『内緒話のできる大人』を見つけて、話を聞いてもらいましょう。

例えば、おじさんやおばさんなどの親戚でもよいし、学校の先生や養護教諭、スクールカウンセラーなどでもよいでしょう。大切なのは“親からも信頼される”大人であること、“対面で、身近で、話しやすい”大人であることです。親との間に入って仲介役を務めてくれたり、親への伝え方をアドバイスしてくれたりと、“親以外の頼れる大人の存在”はこの先もあなたが生きていくうえで頼りになるはずです。

ところで、思春期のあなたにとって親とはどんな存在でしょうか?
――男の子であれば、例えば、お腹がすいたらご飯を出してくれたり、修学旅行の費用が必要であればお金を用意してくれたりする人、かもしれません。つまり、親は“生活しやすい環境を整えてくれる人”くらいに捉えると、気持ちもラクになるかもしれません。一方、女の子にとっては、例えば同性である母親は“何かあった時に助けてくれる人”が理想的なのかもしれません。そう思えるような親子関係が作れていれば、あなた自身がより安心して毎日を過ごせるのではないでしょうか。

心理学者 山脇 由貴子(やまわき ゆきこ)さん

横浜市立大学心理学専攻卒。都内の児童相談所に心理の専門家(児童心理司)として19年間勤務したのち、『山脇由貴子心理オフィス』を開設。以降、女性の生き方アドバイザー、家族問題カウンセラーとして活動する傍ら、映像メディアにも多数出演、国内外で講演活動も行っている。著書には現代のいじめ問題を扱ったベストセラー『教室の悪魔』(ポプラ社)などがある。

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