"社員が自らの意思でキャリアを築ける組織へ"。そうした想いから、中外製薬では「3つの個」(描く・磨く・輝く)を軸とした人財マネジメント戦略に力を入れている。 「個」の成長と挑戦に焦点を当て、個が変わり、会社が変わり、ひいては中外製薬全体の成長につながることをめざして。戦略のねらいとその取り組み、求める人財像について、人事部長の髙田が語る。
※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm)より転載。記載内容・所属は2025年6月時点のものです
革新的な新薬の創出に挑み続ける、世界のトップイノベーターをめざして
ヘルスケア産業における世界のトップイノベーターをめざし、新たな成長戦略を掲げている中外製薬。約8,000人の社員と共に、革新的な医薬品を研究・開発し、世界中の患者さんに届けている。
「当社は特定の疾患や領域に限定することなく、ヘルスケア領域全体に新しい価値を創造することをめざしています。そのために重要なのは、当社の理念に共感し、この戦略に資する人財を採用・育成することです」
そう語るのは、人事部の部長を務める髙田。2020年代に入り、コロナ禍やAIの台頭など予測困難な時代を迎える中で、人財マネジメントの在り方も変化しているという。
「2010年代までは連携や協働が重視されてきましたが、いまの時代は一人ひとりが強くなり、強い個同士がぶつかり合っています。その上で、これからは自らを主導して変革していくことが求められているのです。
子どもの頃は『将来何になりたいの?』と聞かれることはありますが、成人になり、とくに会社に入ると、そうように問いかけられることはなくなりますね。自分の想いよりも、組織のために頑張ることが良い社会人像だと思われてきた時代がありました」
そこで、同社は2023年から「個」の成長と挑戦に焦点を当て、人財マネジメント戦略として「3つの個」(個を描く、個を磨く、個が輝く)展開。社員一人ひとりが自身の強みや価値観を理解し、会社の方向性とすり合わせながら挑戦、成長していくための仕組みを整えている。
「突き詰めていくと、自分自身が何者かを理解し、どうように生きていくかを悩み、自らが決めていくことが重要です。そのための自己理解のステップは、一見遠回りに思えるかもしれませんが、実はこれこそが一番の近道なのです。
自分の強みや弱み、仕事で大切にしたい価値観を一人ひとりが深く理解し、その方向性と会社のめざす方向を重ね合わせていく。両者がしっかりと合致した時、自分と組織が対等な関係で共に成長し、まさに『個が輝く』状態が生まれ、生きがいを持って働くことができると考えています」
一人ひとりの主体性を引き出す。人財マネジメントの3つの要素

社員の主体性を引き出すための施策に取り組む人事部。「個を描き、個を磨き、個が輝く」という3つの要素について、髙田は以下のように説明する。
「『個を描く』とは、一人ひとりが自らの価値観をもとに、キャリアゴールを具体的に思い描くことです。実は、これが3段階の中で最も重要で難しい取り組みだと考えています。
明確なキャリアビジョンを描けた方は、その後の成長過程がスムーズに進んでいきますが、まだ描けていない方にとっては、この作業がとくに苦しい部分だとよく聞きます」
そこで同社では、社員自身がキャリアの主導権を持ち、自ら未来を描くためのさまざまな仕組みを用意している。
「当社では、“自律と互いの成長に向けて一人ひとりが自分の価値に気づき育む機会を大切にする”という考えのもと、自律的なキャリア開発を推進しています。
自らのキャリア設計を支援するジョブポスティング制度をはじめ、社員が仕事に関する希望や将来のキャリアについて会社に申告することができるキャリア申告制度や、ライフラインチャートなどを用いた、自己理解を深めキャリアについて考える場の提供、上司とのCheck in(1on1)、キャリア相談室の設置など、さまざまな仕組みを整えています。
こうした施策を通じて、自分が何を大切にしてきたのか、どんなことにモチベーションを感じるのか、何に対してアンテナが立っているなどの自己理解を深めながら、自身のキャリアを考えていくのです」
2つめの要素である「個を磨く」は、社員の主体性を尊重し、自律的な学びや専門性の強化を通じて成長実感を促す人財育成だ。
「キャリアゴールと次の目標が定まれば、そこに向かって自身を磨く意欲が高まります。このタイミングを逃さず、ビジネススキルや専門スキル、語学など、自身のキャリア形成に必要なスキルを無制限で学ぶことができるe-learningや、デジタル人財の育成などの部門別スキル強化研修などを行っています。
また、社内インターンシップ制度や、半年間、別の部署を兼務できる社内副業制度も導入し、他部署での経験を積むことができる仕組みを整えました。
さらに、社会課題に取り組むための海外プログラムや社外団体への出向、ロシュ社との人財交流プログラムなど、社外との接点や学習機会を持てる選択肢も豊富です」
中でも特徴的なのが、学びの楽しさを再発見できる場の創出だ。
「『中外アカデミア』という取り組みでは、社員が自発的に学びたいテーマを持ち寄り、4~5人のグループで学習して発表し合います。1人では継続が難しい学びも、仲間と一緒なら楽しく続けられます。互いに刺激し合いながら成長できる環境を大切にしています」
3つめの要素「個が輝く」では、社員が自身の力を最大限に発揮できるよう、主体的な挑戦や活躍を可能にする環境整備やインクルーシブな組織文化の醸成に取り組んでいる。
「会社として2つのアプローチを実践しています。1つは、健康管理や育児・介護の両立支援など、多様な背景を持つ社員が安心して働き続けられる基盤の整備です。
もう1つは、イノベーションを生み出すために不可欠なダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進です。さまざまな意見が建設的にぶつかり合える環境を作り、ダイナミックに新しいものを生み出していく文化の醸成を重視しています」
働きがい改革も、「個が輝く」ための重要な施策となっている。
「アウトプット重視の考え方に基づき、個人の働き方のスタイルに合わせて柔軟に対応しています。ワーケーションの導入や海外からの勤務も可能にするなど(※)、時間と場所にとらわれない働き方を推進しています。もちろん、制度の適正な運用を確保するための最低限のガイドラインは設けています。
豊かに、幸せに、働きがいのある場にするために。『多様な価値観や専門性から革新は生み出される』という共通認識のもと、誰もが充実して働き続けていくことを目的にさまざまな取り組みを行っています」
※制度の利用には条件があります
自分で仕事やポストを選び、チャレンジする働き方へ。制度と風土で変えていく

従来の「決められたルールの中で与えられた仕事をこなす」働き方から、社員が主体的にキャリアを築く新しい働き方へ。その象徴的な取り組みが、ジョブポスティング制度だ。
「会社主導によって決められた異動から、自ら仕事を選んで成長していく。これが、新しい時代に求められる働き方です。当社では3,000を超えるポジションについて必要なスキルや責任を明確化し、社内に開示することで、社員が自らキャリアを設計できるようにしています」
キャリアパスについても、マネジメントポジションと専門性を活かしたプロフェッショナルポジションの複数を用意。今回の制度改革では、数百のプロフェッショナルポジションを設け、研究開発やDX、営業、コーポレートなど各分野で専門性を深められる仕組みを構築している。
「キャリアパスは、マネジメントのポジションだけではなく、専門性を深めていくポジションも重要です。両者の間を柔軟に行き来することも可能で、自分の専門性をどのように組み合わせながらめざすゴールへ向かうのか、社員一人ひとりが主体的に描けるようにしています」
こうした制度の整備と並行して、チャレンジする風土の醸成にも力を入れている。
「2022年に『中外リーダーシップ原則』を策定しました。これは、中外製薬のリーダーに求められる価値観・行動を明文化したものです。未来を語り、人を巻き込んでいくことの重要性や、自律的・主体的な行動の大切さを示しています。
また、経営陣が自らの言葉を各事業所で語り、実践することを重視しています。経営者自身が率先して実践し、緊張感を持って風土づくりにコミットすることが、イノベーションを生み出す源泉になると信じています」
自律的な成長を促すためには、俯瞰したアプローチも欠かせないと高田は語る。
「とくに日本の組織の中では、周囲の行動が個人の意識変革に大きな影響を与えます。そこで、まずは一定数の社員が自発的に動き出すような仕組みを戦略的に推進しています。
あらゆる研修や対話の場を通じて、またジョブポスティングなどで同僚が積極的に新しい仕事にチャレンジする姿を共有することで、『自分も挑戦してみよう』という前向きな連鎖反応が生まれていくのです」
仲間と共に、社会に新たな価値を。未来を切り拓く志をもって

中外製薬が求める人財について、髙田は明確な想いを話す。
「入社を検討されている方にぜひお伝えしたいのは、自分のやりたいことを決めて、それが中外製薬で実現できるかを見極めていただきたいということです。自身が実現したいことと中外製薬が向かっていく方向が合っていることが重要で、対等な関係であるべきだと考えています。
会社は場を提供し、社員には自分が成長する機会を存分に活用してもらう。そして会社と個人が共に成長する。お互いに選び、選ばれる関係になるというのが大切です。『会社に指示されたから』という意識ではなく、自分が選んでこの仕事をやるという姿勢を持った方と共に、当社も成長していきたいと考えています」
中外製薬で働く魅力について問いかけると、髙田は創業100年の歴史を振り返りながらその本質を語った。
「社員の誰もが口にするのは『真面目で誠実』という言葉です。これは社員のDNAに深く刻まれていると思います。中外製薬では、歴史の中で新薬開発が途切れるなど、非常に経営が厳しい時期もありました。
この時に経営陣が、経済的に厳しい時でも『薬は社会に貢献するものであって、それを作る人の人間性が大事だ』という信念を貫きました。その時期の真面目で誠実な先輩方を見て育ち、私たちの世代も多くのことを学びました」
その価値観は、現在も脈々と受け継がれている。
「時に苦しい場面があっても、世の中のために真摯に努力し、病に苦しむ患者さんに貢献する。この想いを共有する人たちが集まっているのが当社です。この土台があって、その上に技術や専門的な知識、スキルが積み重なっていくのだと考えています。
どんな専門性がある人でも、根底にこの誠実さを持っていてほしい。そして、自分が成し遂げたいことを主体的に考えキャリアを構築し、それを当社のミッションと一致させられる方に、ぜひ来ていただきたい。共に成長し、新しい価値を創造していきましょう」