部門間連携が生む創薬イノベーション。数千の化合物から創薬につなぐ開発の舞台裏

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本インタビューに回答する社員

"技術ドリブン創薬"により、"最高の品質を持った"開発分子を創り出す研究本部の創薬化学研究部と、そこで生まれた高難度開発分子に対して最先端技術を駆使した最速開発に貢献する製薬技術本部の製薬研究部。両部署は連携し合うことで、いち早く患者さんのもとに革新的な医薬品を届けることを志している。今回は、マネジャーを務める2人に部門間連携の実際について語ってもらった。

※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm)より転載。記載内容・所属は2025年6月時点のものです

“Quality-Centric”創薬を支える連携。部門を越えて最高品質を届ける

中外製薬の低中分子医薬品創出における化合物合成において、創薬化学研究部と製薬研究部は、医薬品の創出および開発において重要な役割を担っている。


椎名 私たち創薬化学研究部の役割は、世界最高水準の創薬技術を活用して化合物をデザインし、合成、そして合成された化合物について動物試験で評価を行い臨床候補品を創出することです。創薬化学研究部の中で、合成化学グループでは主に動物試験用の化合物合成を行い、合成に役立つ新規技術を検討します。開発ステージが進んで臨床試験につながっていくタイミングで、製薬技術本部と化合物合成方法の共同開発を行います。

われわれが検討した内容を「はい、どうぞ」と渡すのではなく、課題を共有しながら、一緒に汗を流して研究したり、時には大量合成で力仕事をする期間が数カ月から半年程度あります。その中で、これまでの知見や課題を一緒に議論しながら進めていくのが、この部門間連携の特徴です。


岩村 研究本部で数年かけて薬のタネになる化合物を発見し、最適化して、3つほどの臨床開発候補化合物が選ばれてきた時から、われわれの部署が参画していきます。研究段階から臨床開発へと進むにつれて、大量に作れることはもちろん、スピード、品質、コストに加えて、安全かつ堅牢性の高い製法の確立が必要です。

また、サプライチェーン最適化や環境負荷低減などの生産技術の革新が求められます。以前は1つの候補化合物が選ばれてから製薬技術本部は参画していましたが、いち早く患者さんにお届けするために、より早い段階から関わるようになりました。


部門間連携の特徴について、2人はそれぞれの考えを述べる。


椎名 他社と比べると、非臨床試験段階から後期の開発を意識し、合成プロセスの設計・改良を行っているのが特徴です。開発のスピードが年々加速してきているため、途中でトラブルが起きないよう、早めに両部署で連携した共同開発を心がけています。

また、当社開発の医薬品は、臨床試験の成功率が比較的高いことも特徴です。当社ではブレークスルーセラピー(※)に指定される医薬品も多く、早期開発に備えて合成法の作り直しが起きないよう、しっかりと早期の連携を行っています。


※ ブレークスルーセラピー:米国FDA(食品医薬品局)が、重篤な疾患や生命を脅かす疾患に対する治療薬の開発と審査を迅速化するために設けた制度。既存の治療法と比較して、臨床的に重要な評価項目において、著しい改善を示す可能性のある薬剤が対象となる


岩村 私は前職でも医薬品のプロセス化学に関わってきましたが、確かに当社は開発パイプラインが豊富で、臨床試験の成功確率は高いと感じています。プロセスケミストにとって、患者さんに薬をお届けする機会に恵まれやすいことを意味しており、仕事のやりがいにつながっています。

また、成功確率が高いことから、目先の供給にこだわるだけでなく、中長期的な視点をもって製造技術開発に向き合えることは、研究者として大きな成長機会となっています。

また、このような部署間の密接な連携が自然とできるのは、当社に組織間の連携を重要視する風土があるからだと考えます。当社はロシュ社と戦略的アライアンスによるビジネスモデルを成功させており、経営層からは常に「中外製薬がロシュにとって不可欠なパートナーとなる」ことの重要性について語られています。

異なる組織が成長しおのおのの強みを持ち、欠かせない存在となって同じ目標に向かって協力することの大切さを、一人ひとりが腹落ちしているように思います。


椎名 中外製薬では“Quality-Centric創薬”を最重要視しています。最も優れたものを出そうという信念で、作り込んで磨き上げた最高の医薬品を世に出そうとしています。

その結果として、臨床試験の成功率が高くなっています。臨床試験の成功確率が高くなれば、創薬に投入したリソースが無駄になることは少なくなります。早期に共同開発を進めてリソースが無駄になるリスクよりも、開発が円滑に進むベネフィットが上回るケースが多いです。

“技術ドリブン創薬”の挑戦。疾患ではなく自らの技術をベースに新薬を探索する研究者

本インタビューに回答する社員

中外製薬では、他社とは異なる独自のアプローチで医薬品開発に取り組んでいる。


椎名 われわれは“技術ドリブン創薬”というユニークな創薬を行っており、対象疾患を決めて開発するわけではなく、自分たちの持っている技術をベースに、どのような医薬品を作れるか探索しています。

患者さんにいち早く良い医薬品を届けるためにも、まずは自分たちで良いコンセプトの化合物を作って、安全性や動態、薬効を評価します。そこでドローバックがあれば再び原因を考えて改良し、再度デザインして合成していきます。このサイクルを繰り返すことで、化合物を磨き上げていくのです。

また、中外製薬の創薬化学は世界トップクラスの化学力を有しており、近年難標的にアプローチするために構造が極めて複雑な化合物の開発を進めています。


岩村 私たち製薬技術本部は、中外製薬独自の質が高い高難度分子を最先端技術を駆使した最速開発に注力しています。構造が極めて複雑な化合物は合成難易度が高く、化合物を最速かつ大量、そして安価に製造するには既存の技術では限界があり、独自の技術の開発が必要です。

また、中外製薬では、患者さんによりよく効いて副作用も減らすために薬理活性の高い医薬品の提供をめざしています。研究者並びに工場の製造担当者への安全や環境にも配慮するために、化合物の高度な封じ込め技術など、生産技術の強化に努めています。安心・安全な医薬品を安定して製造し続けられる技術を確立するには、他部署や工場、協力会社様の連携をしっかりとって進めております。


研究と製薬の連携において重要なのは、開発の背景にある想いを共有することであると椎名は強調する。


椎名 研究者としての情熱や、患者さんに最高の医薬品を早く届けたいという想いを、未来を共に築くメンバーに適切に伝えることも大切だと思っています。いまだ治療法が確立されていない疾患とその標的に対して「私たちはこんな想いで作ってきたんだ」ということを対面で話すと、岩村さんたちも患者さんへの価値に理解・共感してそれに応えてくれるので、互いの仕事のモチベーションが上がります。

それでもやはり、口頭や資料を用いた短時間の説明では十分に伝えきれないところはあるので、半年ほど研究本部と製薬技術本部が連携しながら一緒に研究を進めていけることはありがたいですね。


岩村 研究の中でコミュニケーションをしっかり取ると、次のプロジェクトにつながることも多いです。「今回は時間的にできなかったが、次のプロジェクトでは最初から取り入れてみよう」というような未来に向けた話もできるので、PDCAを効果的に実践する上でも役立っていると思います。


研究本部と製薬技術本部のプロジェクトを通した研究者間の連携に加えて、当社では各部署の連携を促進するさまざまな仕掛けが行われている。


岩村 当社では、約20年前より“ケミストリーシンポジウム”という独自の取り組みを実施しています。これは創薬・製薬から工場の各組織における化学に没頭するメンバーが一堂に会する年次イベントで、おのおのが直面する課題やめざすべき方向性を相互に共有し合う組織文化が根付いています。

ほかにも、約四半期ごとには創薬・製薬両部門の化学機能を統括するマネジャー陣が参集し、現在進行形の課題と将来ビジョンについて建設的な議論を重ねるなど、部門横断的な相互理解の促進に向けた取り組みを戦略的に行っています。

綿密な連携で切り拓いた中分子医薬品。当社ならではの独自性の高いモダリティへの挑戦

本インタビューに回答する社員

現在、中外製薬が注力する中分子医薬品。その製造技術の確立に向けても、研究本部と製薬技術本部は早期から綿密な連携を図ってきた。


椎名 通常のプロジェクトで私たちが連携して一緒に検討するのは半年程度ですが、中分子という新規のモダリティを開拓するにあたっては、より早期から連携をスタートさせていました。具体的には3年ほどの期間、多様なステークホルダーも含めて、じっくりと対面で議論を重ねました。


岩村 従来のペプチド医薬品は、強い生理作用を持つ注射剤が多いために製造量が少ないです。メリフィールド法という現在一般的にペプチドを合成する方法が1960年代にすでに報告されています。中分子の構想を最初に伺った際にはそれほど難しくなくプロセスを開発できるのではと思っていました。

しかし当社が創製をめざすのは、抗体でも低分子でも困難な細胞内の創薬標的を対象とした経口投与が可能な医薬品で、N-アルキルアミノ酸が数多く含まれている環状ペプチドです。そのため、従来のペプチド合成技術では、プロジェクトを進めるために必要な量を供給できる状況ではありませんでした。


椎名 中外製薬の中分子創薬は非常に独自性が高く、既存の技術を活用すれば作れるというものではありませんでした。分子の独自性が高いがゆえに、独自の合成戦略を立てていく必要があったのです。その分難易度も高かったのですが、一方で画期的な新モダリティの創薬に関われることにやりがいも感じていましたね。


困難をどのように乗り越えたのか。2人が当時を振り返る。


椎名 中外製薬のカルチャーの素晴らしいところは、一度やると決めたら絶対にやり遂げることです。中分子創薬は技術的には困難なものでしたし、これまで世の中で知られていないような課題もたくさん出てきました。それでも「なんとしてでも一致団結してやり遂げる」という思いが、研究を成功に導いたと思います。


岩村 これまで、抗体・低分子医薬品に取り組んできた当社において、中分子への参入は前例のないチャレンジでした。原薬・製剤の製造技術開発はもちろん、分析技術の確立、品質保証、薬事対応、サプライチェーンの構築など、製薬・生産技術における課題の一つひとつに立ち向かっていきました。

乗り越えることができたのは、各部署のメンバー全員が「将来の中外製薬を支える革新的な中分子技術を作り上げるのだ」という想いを胸に一丸となったからこそ。中分子に関わるすべての部署が垣根を超えて、それぞれの専門性を活かしながら困難な課題にチャレンジし続けたのが、現在の成果を生み出した原動力と思います。

思うように結果が出ない不安も楽しみに変える。創薬現場が求める研究者マインド

本インタビューに回答する社員

初期から後期のプロセス開発の現場を牽引してきた2人が中外製薬の魅力について、あらためて語る。


椎名 当社の魅力は、技術ドリブンの創薬を行っていることに加えて、研究自体に強い想いを持っているところです。重要な課題に取り組み、世界最先端の科学技術を身につけて、自分たちのサイエンスを進化させていくことが当社のカルチャーとなっています。


岩村 ロシュ社とのアライアンスにより、グローバルトップレベルで挑戦ができるのも魅力の一つです。グローバルミーティングでの議論やロシュ社との人財交流を通して、視野が広がり、イノベーティブなソリューションにたどり着くこともあります。

他社との交流は学会レベルでも可能ですが、学会ではできないようなより深い議論をグローバルパートナーであるロシュグループメンバーとできるのは、当社で働く魅力の一つと思います。


研究環境やそれを実証する設備環境の充実も、両者が共通して挙げる魅力の1つだ。


椎名 ロシュグループにいることで、グローバルな研究基盤をすぐに活用できることは大きなメリットですね。さらに、研究基盤に加えて、最新の合成および分析機器が新研究所“ライフサイエンスパーク横浜”にそろっており、研究環境は大変充実しています。

あとはどんどん自身の専門性を発揮するだけという気持ちで業務に取り組めますし、難易度の高いやりがいのあるプロジェクトが多く、優秀な研究者もたくさんいるので、自身の専門性を向上させる機会が多いのも特徴です。


岩村 製薬技術においては、東京・浮間にCMC (Chemistry, Manufacturing and Control) の充実した研究環境がそろっています。生産技術面でも、グループ会社である中外製薬工業の3つの生産拠点(藤枝、浮間、宇都宮)で次世代工場の建築や製造設備の増強が進行中です。

プロセスケミストにとって自ら開発した製法を工場で大量生産できるようにするのが仕事の醍醐味の一つです。工場スタッフと密に連携しながら、革新的な製造技術を徹底的に磨き上げることで、患者さんに必要な医薬品を安定してお届けできるようになります。


最高の品質を持った開発分子の最速開発をめざす中外製薬で求められる人財とは。


椎名 低中分子分野においては、有機合成の専門性を深く持ち、研究に没頭できる方と一緒に働きたいです。技術的にただ「できる」だけではなく、何が起きているのかを観察して化学的に証明できる、高度なPDCAを回せる方が理想的ですね。

また、これから新しいモダリティが出てくる可能性もありますので、新しいことにワクワクしながらチャレンジできる方と一緒に働けることを期待しています。


岩村 創薬モダリティの進化とともに、製薬技術の課題は複雑化しています。製薬・生産技術本部では、将来的な課題に先手をうって技術を開発する“Techno”活動を15年以上も継続してきました。製薬技術の基礎研究に注力する、当社独自の取り組みです。

先進的な技術開発においては、思うように成果が得られず不安になることがありますが、そんな困難に情熱を燃やせる方は中外製薬で活躍できると思います。

5年後、10年後のビジョンを想い描きながら研究を進められる方と一緒に仕事ができるとうれしいですね。

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