中外製薬の歩み

「すべての革新は患者さんのために」この事業哲学を育んだ中外製薬の歴史を紐解きます。

6. 抗体医薬品創製~連続的な革新的医薬品創出 中外製薬の創薬力を証明する抗体エンジニアリング技術の進化

中外製薬の革新的な創薬を担っているのが独自の抗体エンジニアリング技術です。抗体医薬品は人間が生来持つ免疫機能(抗原抗体反応)を利用して治療する医薬品。そのしくみは、がん細胞などの表面の目印となる抗原や、疾患部分の組織から出るタンパク質を抗原と認識してピンポイントではたらきかけ、高い治療効果と副作用の軽減を実現しようとするものです。

中外製薬では国産初の抗体医薬品「アクテムラ®」の創製を皮切りに、抗体医薬品を次々と世に送り出してきました。近年では、この技術をさらに進化させ、リサイクリング抗体®創製技術(SMART-Ig®)、バイスペシフィック抗体生産技術(ART-Ig®)、スイッチ抗体技術(Switch-Ig)などの独自技術を生み出しています。新たな抗体エンジニアリング技術は、これまで治療薬がなかった疾患に対する創薬も期待できるうえ、まだ誰も知らないバイオロジーの発見や治療方法の革新につながる可能性を秘めています。

Point1: 国産初の抗体医薬品「アクテムラ®」誕生。世界に普及する製品へ成長

[2005年6月]

2005年、中外製薬は国産初の抗体医薬品であるヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ®」を発売しました。国内発売から15年、ロシュ・グループのチャンネルを通じ世界110カ国以上で発売される製品へと成長しました。「国内の医薬品を海外へ」という社名に込められた創業時の想いはこのような形となり、宇都宮の工場で製造された製品が、世界中の患者さんのもとへ届けられています。

Point2: 「リサイクリング抗体®」技術を発表、未来に向け、独自の抗体技術を開拓

[2010年10月]

中外製薬は独自の次世代抗体技術開発に注力しています。2010年10月、何度でも抗原と結合でき、薬剤の効果を持続させる革新的な抗体エンジニアリング技術「リサイクリング抗体®」を『Nature Biotechnology』に発表しました。この技術を応用して開発された「スイーピング抗体®」は、少ない抗体で多くの抗原を除去できるのが特徴であり、新しい技術の開発につながっています。2020年8月にはリサイクリング抗体®技術を適用した初めての薬剤「エンスプリング®」が、指定難病に定められている神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療薬として発売されました。

Point3: 6品目、9回にわたる、米国FDAのBreakthrough Therapy指定

[2013年6月~2021年5月時点]

米国FDA(食品医薬品局)は、重篤または致命的な疾患や症状を治療する医薬品の開発と審査の促進を目的として「Breakthrough Therapy指定」を実施しています。この指定を受けるには、革新性を求められますが、指定されると優先審査などにより開発期間を短縮できるなどのメリットがあります。中外製薬では2013年以降6品目、9回にわたって指定を受けています。

Point4: バイスペシフィック抗体技術を駆使した抗血液凝固第IXa/X因子ヒト化二重特異性モノクローナル抗体 血液凝固第VIII因子機能代替製剤「ヘムライブラ®」の誕生

[2018年5月]

通常の抗体は同一の抗原にしか結合しませんが、「バイスペシフィック抗体」は2種類の異なる抗原と結合でき、従来にはないアプローチでの創薬が可能となります。この技術を駆使し、2018年5月に「ヘムライブラ®」を発売しました。アンメットメディカルニーズに応えたいという開発者の強い思いが創薬研究の原動力となり、これまでにない治療が実現しました。

Point5: 抗体医薬品の弱点を解決するスイッチ抗体技術を発表

[2019年]

抗体医薬品は低分子医薬品にない治療アプローチをかなえる技術ですが課題もあります。その一つが標的分子に結合すると毒性が高まる「オンターゲット毒性」です。その解決につながる技術が、2019年に中外製薬が公表したスイッチ抗体技術です。これは腫瘍組織で細胞外濃度が高くなる低分子(スイッチ分子)に着目し、正常組織では抗原に結合せず(スイッチオフ)、腫瘍細胞微小環境下でのみ標的抗原に結合(スイッチオン)するように設計したもの。これにより従来は毒性が高まるために狙えなかった標的分子も狙うことができるようになり、創薬の可能性が大きく広がりました。当該技術を用いた創薬プロジェクトも進んでいます。

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