独立社外取締役の視点
当社の成長戦略やガバナンス、企業価値創造に対する外部からの視点を紹介するため、独立社外取締役による対談のほか、資本市場との対話における発言内容を掲載しています。
アニュアルレポート2025より転載
本対談は2026年2月に実施された内容に基づいています
【独立社外取締役対談】
100周年という節目を新たな出発点と捉え、
非財務面の強化を含む成長戦略の進捗を確認し、
不確実性の高い環境下においても機動的な経営を監督していきます
「TOP I 2030」折り返し地点としての評価は――
立石 「TOP I 2030」前半5年で、RED SHIFT、Open Innovation、DXという3つのKey Driversが驚くべきスピードで進展したと評価しています。また、投資家との対話を通じても、中外製薬の創薬技術プラットフォームに対する期待が確かな信頼へと変わっていることを肌で感じています。時価総額から純資産を差し引いた、いわゆる非財務の企業価値は約11.8兆円*1。非財務価値比率は約85%と日本国内の製薬業界ではトップレベルの水準となっています。
- *1 2025年12月30日時点
寺本 「TOP I 2030」の進捗は業績も含め、非常に順調ですね。特にRED SHIFTは、よくここまで質とスピードを上げてきたと感心すら覚えます。その結果、後半5年での取り組みを通じて、2030年の目標である「R&Dアウトプット倍増」と「自社グローバル品毎年上市」の達成も視野に入ってきました。一方、新製品や主力製品による国内での成長も忘れてはいけません。人口減少や薬価制度をはじめ厳しい環境の国内市場において、患者さんに価値を的確に届け、成長を遂げている意義は大きいと考えます。
立石 はい。中外製薬は、患者さんへの貢献を起点とした価値創造モデルを確立し、戦略と現場、財務を一貫させた取り組みが社内で共有されています。私は、「会社を動かすのは人である」という信念を持っていますが、社員一人ひとりが明快な意志を持ち、ビジネスモデル変革に取り組んでいることが、こうした成果を生んでいると捉えています。
寺本 そうですね。経営陣の議論は一層活発化していますし、社内の会議に参加したり、研究拠点や工場に訪問したりしても、風通しの良さを感じます。こうした率直かつ多様な意見が交わされる、オープンで前向きな組織風土が、成長そしてイノベーションの源泉になっていると思います。
取締役会や各諮問委員会が
中長期的な価値創造に向けた対話の場として、
さらに進化するよう尽力していきます
立石 文雄
これまで取締役会等で重点的にモニタリングしてきた点はーー
寺本 私がモニタリングに注力した項目は主に3点あり、まずは、一丁目一番地の研究開発です。2年ほど前から会議資料の改善によりパイプラインの戦略性や期待度、進捗の要諦が可視化されたり、重要案件に対する事前説明がなされたりすることで、議論が深まっています。次に、資本配分。自身が金融業界の出身であることから元々関心は高く、現状1兆円規模となっているキャッシュの使途について、株主還元や成長投資、手元資金の適正水準などの観点からCFOの谷口さんをはじめ経営陣と議論を重ねてきました。3点目は人財・組織風土です。新人事制度の導入を含め、前向きな変化が進んでいると認識していますが、制度に対する社内の多様な意見も踏まえ、今後どのように展開・対応されていくのかについて引き続き注視していきます。
立石 私は、経営資源における選択と集中が、人間の創造性を最大化させる方向に向いているのかを注視しています。そのため、RED SHIFTを進める中で、研究者のイノベーションや中長期的な基盤構築に寄与するかどうかを重点的に確認してきました。また、知的財産、品質、組織風土などの目に見えない資産の強化施策も注視しています。
寺本 選択と集中について言えば、早期開発品の5品目一括自社開発中止とGo/No-Go判断基準の設定は、研究者のモチベーション低下などを懸念し、多くの意見交換を行いましたね。加えて、私たちのような製薬業の門外漢が当初疑問に思った点は、資本市場に対しても的確な説明を行う必要があります。具体的には、外部の技術・開発品への投資では、自社の研究開発活動同様の精緻な見極めが必要であることや、Eli Lillyに導出した「オルホルグリプロン」とロシュに導出した「emugrobart(GYM329)」の肥満症領域でのすみ分けなどが挙げられます。
立石 取締役会の運営では、ロシュからの非業務執行取締役3名が中外製薬の自主独立経営を尊重しており、成長に向けたグローバル視点でのロシュからのアドバイスを受け、建設的な議論を行っていることが印象的です。3名それぞれの発言からも、中外製薬がロシュから信頼を得ていることを肌で感じています。
寺本 現在の成長の背景には、ロシュとの戦略的アライアンスをもとにした独自のビジネスモデルがあります。少数株主利益の保護などには留意が必要ですが、ロシュとの関係については、中外製薬が独自に開発し創出してきた価値そのものがロシュ・グループから高く評価され、尊重されている点が重要だと考えています。経営でも事業でも、ロシュの素晴らしいケイパビリティやネットワーク、インテリジェンスを活用しながら、自主独立経営ができる点は、改めて稀有なビジネスモデルだと捉えています。
「TOP I 2030」後半5年および今後の成長に向けた重要論点はーー
寺本 「TOP I 2030」後半5年は、5つの「狙い」を定めています。先日、後半戦に向けて取り組むべき内容を議論・検討する社内会合で幹部社員と対話しましたが、彼ら自身の注力点が明確になるうえ、私たち独立社外取締役にとってもモニタリングポイントが明確になりました。ここまで順調にきているので、この成長モメンタムがペースダウンしないよう、不確実性の高まる環境の変化に対応した、機動性・柔軟性のある経営が重要になります。
立石 同感です。私は、今後の成長の鍵は、いかにAIや技術が進歩しても、人間の可能性を信じる企業風土を保ち続けることだと考えています。AIの発展により創薬の在り方も変わるでしょうが、この薬で患者さんの未来を変えると決断して、最終的に責任をとるのは人間です。執行側の皆さんには、社員が持つ潜在能力を解き放つような、より大胆なエンゲージメント施策や戦略を打ち出すとともに、失敗を恐れずに挑戦できる心理的安全性の高い組織づくりを期待しています。
寺本 リスク要因としては、短期的には次世代ERP導入プログラム「ASPIRE」*2やサイバーセキュリティが挙げられます。生命に関わる事業ゆえ、システムトラブルの影響は極めて多大です。執行側には確実に本稼働させるとともに、さまざまな事態を想定したメンテナンスのリソースを維持することを求めています。また中長期的には、ゲームチェンジャーの登場にアンテナを張り巡らせ、多様なシナリオを用意していくことが大切だと考えています。
- *2 最先端のグローバル標準プロセス、ならびに次世代ERP(基幹業務基盤)を中外製薬全体に展開する、ビジネスおよびデジタルトランスフォーメーションプログラムの名称
立石 経営には、10年後、15年後の社会のあるべき姿を描き、そこからバックキャストする視点が欠かせません。中外製薬は2030年の長期ビジョンに加え、毎年「次の10年」を見据えた大まかな業績見通しを描き、将来を考える材料としています。 ビジネスサイクルの長い製薬企業にとって、長期的な展望を定期的に確認することは非常に重要であり、これによって戦略の柔軟性や精度も高まっていると考えます。
今後のガバナンス進化に向けてーー
立石 ガバナンスの進化とは形式論ではなく、意思決定の質を追求していくことだと考えます。そのため、取締役会や各諮問委員会が中長期的な価値創造に向けた対話の場として、さらに進化するよう尽力していきます。特に今後は、次世代リーダーのサクセッションプランや投資家との対話などが重要論点です。
寺本 全く同意見です。ガバナンスは、その実効性を向上し続けることに意義があります。コーポレートガバナンス・コードの「コンプライ・オア・エクスプレイン」は、形式的なコンプライを必須とするものではないと理解していますので、中外製薬の独立社外取締役比率に対する懸念の声などに対しては、引き続きエクスプレインをしていく努力が必要だと思います。また株価については、開発状況などによるイベントドリブンになりがちな面があります。ボラティリティを抑える観点からも、ファンダメンタルな創薬力や開発・生産・Value Deliveryといった事業基盤の価値、すなわち製薬本来の力を資本市場に適切に評価いただけるよう対話を進めていきます。
立石 取締役会の運営では、2年前から、年1回の実効性評価に加え、取締役会後に「アフターレビュー」という意見交換を行っており、PDCAサイクルが迅速化しています。そのほか、取締役会以外での情報共有や対話の機会も増やしています。こうしたプログラムをベースに、議論の質も深化させていきたいですね。
寺本 おっしゃる通りですし、各種会議や拠点への訪問を通じて、マネジメントや現場の社員の目線、考え方も共有されてきました。今後も、積極的に現場に足を運ぶとともに、執行側での議論の経緯なども共有してもらい、さらに立体的な理解と踏み込んだ議論を行っていきましょう。
立石さん、本日はありがとうございました。
立石 こちらこそ、ありがとうございました。
中外製薬のファンダメンタルな価値である
製薬本来の力を資本市場に
理解していただけるよう、
積極的な対話を進めていきます
寺本 秀雄
イベントレポート
サステナビリティ説明会(2025年11月27日実施)
- ~資本市場とつながる~ガバナンスの強化と今後の課題
- 独立社外取締役 寺本 秀雄
中外製薬 IR Day(2024年10月1日実施)
独立社外取締役 立石 文雄
独立社外取締役 寺本 秀雄