独自のサイエンス力と技術力でアンメットメディカルニーズに挑む

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本インタビューに回答する社員

アカデミアを経て中外製薬に入社した堀部。創薬化学研究部の研究員として低・中分子の医薬品候補化合物の非臨床試験用原薬の合成および初期合成プロセス開発に携わってきた。スピードと品質の両面に秀でた合成方法の開発をめざして合成技術や合成手法に磨きをかける堀部が、同社で創薬研究に関わる醍醐味を語る。 

※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm)より転載。記載内容・所属は2023年8月時点のものです

非臨床試験用原薬の合成を担当。めざすのは、スピーディーかつ高品質な原薬の供給

堀部が籍を置くのは研究本部 創薬化学研究部。入社以来、医薬品候補化合物の有機合成に携わってきた。


「有機合成とは、反応しやすい物質と物質を混ぜて違う物質を人工的につくる作業のこと。たとえば、がん細胞がターゲットであれば、がんの発生の原因となる変異タンパク質を阻害する化合物などをつくっています。


中でも私が扱うのが低・中分子の医薬品候補化合物です。非臨床の段階では、ひとつないしはふたつに絞り込まれた候補化合物の有効性や安全性の確認を複数の動物種で行います。私はそうした非臨床試験に必要な原薬を数十~数百g、多いときで1kgほどのまとまった量を供給しています。


医薬品候補の開発は、医薬品の種となる化合物を化学変換し数千の種に増やすステージ、増やした種を評価し数個に絞り込むステージ、1個の種を臨床に上げていくステージに大きく分けられます。このうち私が参画するタイミングは数個の種に絞り込むステージ。候補化合物の供給だけでなく、合成法や失敗事例などスケールアップの過程で得た情報を含め、商用スケールの製造を担当する製薬技術研究部に技術移管するところまでがわれわれの仕事です」


創薬化学研究部のメディシナルケミスト(※)(以下、メドケム)らが評価結果をもとに選び抜いた最有力候補をスケールアップに耐えられる合成法にしていくことが堀部のミッション。求められるのは、スピーディーかつ高品質な原薬の供給だ。


※ 低・中分子医薬品(化学合成医薬品)の研究現場で活躍する創薬化学者


「患者さんに1日でも早く薬を届けるためには、良質な原薬を供給するだけでは不十分です。良いものをできるだけ完成度の高い製法で、できるだけ速くつくることができなければ意味がありません。


スピードと品質を両立させた合成方法の開発を一朝一夕で成し遂げることはできないため、日頃から合成技術や合成手法に磨きをかけることを心がけてきました。迅速な原薬供給の実現をめざし、最新の研究論文や他社の情報をベンチマークして自身の業務に取り入れることができないか検討を重ねながら、常にベストな方法を模索しています」 

幼少期に芽生えた医療への関心。研究に没頭できる環境を求め、中外製薬へ

本インタビューに回答する社員

幼少期から医療機関にかかることが多かった堀部。自然に創薬に関心を持つようになっていったと言う。


「定期的に病院に通っていたので、医師や医療機関に恩返ししたいという気持ちがずっとあって。お世話になった先生のように、自分も困っている人たちの力になれたらと考えていました。


創薬研究の道に進むことを決めたのは大学生のとき。工学部に所属していましたが、薬をつくるための研究がしたいと考えて有機化学を専攻しました」


大学院の博士課程を修了後、堀部はアメリカ西海岸を代表する名門大学へ。世界水準の研究ができる環境を求めてのことだった。


「日本の大学に在学中に3カ月間ほどアメリカに滞在した際に、自分の研究者としての未熟さを思い知りました。世界に通用するような研究者にならなくては研究者として生き残れない、国内にいては大きな成長が望めないとの危機感から、渡米する道を選びました。


各国から優秀な研究者が集まる世界トップクラスの研究室に入り、彼ら、彼女の考えや研究スタイル、アウトプットを間近で見られたことは貴重な経験になりました。専門的な会話ができるだけの英語力がついたことも収穫のひとつです」


帰国後、堀部は母校である名古屋大学の工学研究科に採用されたものの、特任助教としての5年任期が終わるころにキャリアチェンジを意識するように。


「これまで有機化学を活かしながら、アカデミア以外で最先端の研究ができないだろうか。人の役に立つ研究に打ち込みたいと考えて出した答えが、企業の研究者となることでした」


数ある製薬会社の中から堀部が選んだのが中外製薬。研究本部長の方針に共感したことが決め手になったと振り返る。


「入社前、当社の研究本部長や創薬化学研究部長のインタビュー記事を目にする機会がありました。その中で印象的だったのが、『中外製薬の強みは研究。社内で確立した研究基盤や技術を核として競争優位性を獲得し、増強していく』と力強く話されていたこと。他社には有機合成を縮小しようとする傾向もある中、私が専門とする研究に引き続き力を入れていくことが明言されているのを見て入社を決めました」


入社後、大学での経験を活かしながら、比較的スケールの小さなものから大きなものへと有機合成の分野で段階的にステップを踏みながらキャリアを重ね、現在に至っている。

テックベンチャーのように主体性が奨励される文化の中、成長を実感

本インタビューに回答する社員

 アカデミアから中外製薬に移って大きく変化したことがふたつあると話す堀部。ひとつは時間の感覚、もうひとつは候補化合物の評価結果を自ら判断する習慣ができたことだ。


「アカデミアも企業も研究であることに変わりはありませんが、研究室と違って企業ではスピード感がとても重視されます。大学ではできるだけ質の高い研究をすることが最優先されるのに対し、中外製薬で求められるのは質とスピードの両方。会議や事務作業も含め、仕事を少しでも速く進めるにはどうすべきかを常に考えるようになりました。


また、原薬をつくるだけでなく、候補化合物の評価結果を自分で判断できるようになったのも入社してからのことです。生のデータを読み込みながら有力な候補化合物を見分けていく作業に携わる中で、多くの学びが得られていると感じます」


以前とは異なる環境で慣れない作業に携わる中、堀部にとって頼もしい支えとなったのが周囲のメンバーの存在だ。


「こちらが質問したことにただ答えるのではなく、成長するために必要なサポートを必要な場面でしてもらっていると感じます。自ら積極的に学んでキャリアを実現するためのラーニングプラットフォーム『I-Learning』が導入されていることからもわかる通り、自己研鑽を大切にするのが中外製薬全体の文化。日々、成長を実感することができています」


研究に没頭できる環境に惹かれて入社した堀部。4年目を迎えるいま、中外製薬にこんな魅力も感じていると言う。


「年次に関係なく積極的に提案することが奨励されますし、また受け入れられやすい環境があります。年功序列を感じることもなければ、上司に言われたことをひたすらこなすようなこともなく、良い意味で大企業らしさがありません。個人的にはテックベンチャーに近い印象を持っています。


実際、原薬製法開発の過程でこんなことがありました。当初、メドケムルートでの合成が進められていましたが、スケールアップに向いていない合成ルートでした。そこで、上司とともに別ルートを考案し、合成ルート検討と原薬供給を行いました。現在製薬技術研究部では、私が検討していたルートの大部分を利用した商用スケールの製造に向けて動いています」 

臨床との橋渡しを担う存在に。研究を重んじる環境だから実現するキャリアをめざして

本インタビューに回答する社員

 堀部が入社してもっとも驚いたと話すのが、アカデミアと中外製薬の研究に対する向き合い方の違い。同社で創薬研究に携わる魅力をこんな言葉で表現する。


「とくに創薬化学研究部には実験データを大事にする方がとても多いと感じます。大学の研究室では、誤差はあって当然のものとみなされ、実験の担い手である学生がそれぞれの手法で導き出したデータを比較検討しながら研究が進められていました。それに対して、創薬化学研究部では実験装置やデータ取得方法にも徹底して配慮するなど、誤差が生じないような進め方が常に模索されています。


出てきた数字をもとに議論を深め、より良いものを追求しようとする姿勢があるのも創薬化学研究部の特徴です。研究者にとってとても刺激的な環境があると思います」


そんな堀部がめざすのが、非臨床から臨床への橋渡しを担うエキスパート。これからも創薬研究の最前線に立ち続けるつもりだ。


「入社以来、臨床から近い立ち位置で研究に携わってきました。非臨床と臨床の双方が理解できるユニークなポジションで培ってきた知見を活かしたキャリアを歩んでいけたらと思っています。


そのためにも、データと誠実に向き合いながらまずはプロジェクトの進め方を修得することがいまの目標です。場数も踏むこともさることながら、過去プロジェクトや社外ベンチマークからも積極的に学びながら糧にしていきたいと考えています」


また、入社前に目にした研究所トップのメッセージにあった通り、中外製薬には研究を大事にする風土があると言う堀部。これから共に創薬の未来を担うことになる新たな仲間に向けてこう呼びかける。


「以前、新しいことを追求できるのはアカデミアであって企業の研究部門ではないと考えていましたが、誤りでした。創薬化学研究部が取り組んでいるのは、まさに創薬の最先端。最前列に身を置きたいと考えている方にふさわしい場所だと思います。


当社は研究が好きで向学心のある方に向いている会社です。互いに影響を与え切磋琢磨しながら成長していけるような方と一緒に働けることを楽しみにしています」