「患者中心」の理念が導く臨床開発の新時代──グループの総力で新たな医療価値に挑む

  • 研究開発
  • 採用
  • 開発
  • PHARMONY

医薬品開発では、患者さんの視点や経験を重視する動きが加速している。中外製薬でもコアバリューの最上段に「患者中心」を掲げ、Patient Centricity活動を3つの柱で展開してきた。患者さん中心の持続可能な医療をめざし、グループの総力を結集して新しい臨床開発の価値創造に挑む現場の取り組みを追う。

3つの柱でめざす「患者中心」の臨床開発。グループの連携が新たな価値を生み出す力に

コアバリューの最上段に「患者中心」を掲げる中外製薬。患者さん中心の持続可能な医療をめざし、Patient Centricity(以下、PC)活動に力を入れている。

「臨床開発の分野では、患者さんの視点や経験を重視するPC活動が2010年代後半から本格化しています。当社でも、患者さんを医薬品開発のパートナーと位置づけ、以下の3つの柱を中心に取り組みを行ってきました。

まず、「医薬品開発に患者さんの視点や声を活かす取り組み」です。治験実施計画書や同意説明文書について、医療従事者だけでなく患者さんからもご意見をいただいています。また、治験に参加した方へのアンケートを実施し、いただいたフィードバックをもとに、より参加しやすい治験へと改善することをめざしています。

また、「中外製薬の治験情報を広く伝える取り組み・治験に参加された方に想いを届ける取り組み」として、当社のウェブサイトや公的データベース「jRCT」で治験情報を公開しています。さらに、治験に参加された患者さんにはサンキューレターをお送りして、治験参加への感謝の気持ちをお伝えしています。

そして、「治験に参加される患者さんの負担軽減に向けた取り組み」として、オンライン診断、訪問看護サービス、在宅医療といった診療場所の選択肢の提供や、検査の一部を近隣の医療機関で実施できる仕組みづくりなどを行っています(加藤)」。

患者さんと共に進める医薬品開発を実現するためには、中外臨床研究センター(以下、CCRC)をはじめとするグループ会社間の連携が欠かせない。各社の強みを活かす有機的な協働を通じて、同社の「患者中心」に対する価値を生み出してきた。

「私が所属するCCRCは、主に臨床開発のオペレーションを担っています。医療機関や患者さんに近い立場にあり、現場の情報や患者さんの声を汲み上げるだけでなく、それらをいかに臨床開発に反映していくかを考えることも私たちの役割です。

企業ごとに専門分野は異なりますが、組織の枠を超えて、同じ課題意識と目標を共有するメンバーがワンチームとなり、患者さん中心の臨床開発に向けて取り組んでいます(秋葉)」。

「私は後期開発を担当し、ロシュ社と共同実施しているグローバル試験のスタディチームに所属しています。その中で、レイパーソンサマリー(試験結果を簡易な言葉でまとめた要約)を作成する際、CCRCのメンバーと協力し、患者さんに文書を確認していただき、意見をうかがう場を設けました。

また、サンキューレターの作成でもCCRCが大きな役割を果たしており、秋葉さんを含むCCRCメンバーが中心となって、小児向けのサンキューレターを中外製薬メンバーと一緒につくり上げたこともありました。

さらに、医療機関や患者さんから「小児患者向けの治験結果をまとめたレイパーソンサマリーを公開してほしい」という声が寄せられ、これをCCRCメンバーと協力し合いながらロシュ社と検討した結果、グローバル全体でサマリーが作成・公開されることになりました。

もはや「連携」という言葉では物足りないほど、中外製薬とCCRCとが患者さん中心の臨床開発にむけた一体感をもって取り組んでいる実感があります(佐藤)」。

「私が担当する早期開発では、中外製薬がオペレーションの一部を担いますが、CCRCのメンバーに大きく助けられています。

また、早期開発では中外製薬が中心になってプロトコルを検討しており、ここでもCCRCが大きな役割を果たしています。現場経験が豊富な彼らの視点や意見が加わることで、患者さんがより参加しやすく、臨床現場で実現しやすいプロトコルや、わかりやすい同意説明文書につながっていると感じています(加藤)」。

想いを、力に。一人ひとりの情熱が紡ぐ「患者中心」の医療

異なる専門分野で活躍する3人。それぞれが特別な想いを持ってPC活動に取り組んできた。

「以前は、臨床開発における患者さんとの直接交流に対して慎重な考え方が根付いていました。しかし近年、PCの考え方が浸透し、患者さんの声を医薬品開発に活かす重要性が認識されるにつれて、私自身も患者さんの意見を反映した臨床開発に携わりたいと思うようになり、2018年ごろからPCタスク活動に参加しています。

当時、中外製薬の臨床開発におけるPCの定義や具体的な取り組みを、一から検討するところからのスタートでした。現在ではメンバーの数も増え、経験値も着実に積み重なっています(佐藤)」。

「CRCCは臨床開発のオペレーションを担っていますが、2020年頃まではモニタリング業務が中心でした。

当時、CCRCのモニターは、治験に入ってくださった患者さんのカルテを見たり、医療機関の方と話す機会に恵まれていましたが、そこで得た情報が中外製薬のメンバーと十分に共有されていませんでした。患者さんや医療機関の方とより密接に連携しながら試験を運営したいと考えていたところ、PCタスク活動の存在を知って参加を決めました。

現在では、「患者中心」という共通の目標が意識され始めたことで状況が少しずつ変化し、グループ間の連携も次第に強化されてきたと感じています(秋葉)」。

「以前はモニターを担当しておりましたが、業務の内容がプロトコルの立案・検討や試験全体のマネジメントへと変化することで、患者さんとの距離が徐々に大きくなっていることに葛藤を感じていました。私たちの最終的なゴールは、患者さんに喜んでいただける治療法を提供することです。「患者さんのそばで、解像度を上げて開発を進めるべきだ」と考え、PCタスク活動に参加しました。

そもそも私が中外製薬への転職を決めたのも、「患者中心」の医療を推進していることを知っていたからです。前職でのPC活動が、サンキューレターを検討することでしたが、実際に当社で活動に参加してみて、その先進性に非常に驚かされたのを覚えています(加藤)」。

直接対話が開く新たな扉。患者さんと共に創る医薬品開発の未来

患者さんと共に医薬品開発に取り組んできた3人。直接対話する経験を通じて、あらためて一人ひとりに寄り添うことの大切さを実感していると話す。

「がん患者さんへの理解を深めるために参加した講演会で、実際に患者さんとお話ししたときのことをいまでも鮮明に覚えています。長く治験に携わっていると、患者さんを集団として捉えてしまいがちですが、実際には一人ひとり考え方も違えば、症状も異なります。それに対して誠実に応えていくことが、私たち製薬会社の責務であることを再認識しました。

患者さんがどのような気持ちで治験に参加し、私たちにどのような情報を求めているのかを直接知ることができたことは、非常に貴重な経験だったと思います(加藤)」。

「先日、患者さんを当社にお招きして社員と対話するイベントを開催し、「治験に参加して一番嫌だったこと」をうかがう機会がありました。すると、社員たちのあいだで、現在担当している試験や今後予定している試験において、どう取り入れられるかがその場で議論になったんです。

患者さんの生の声には、臨床開発の人間を大きく突き動かすパワーがあるとあらためて感じました。この体験を通じて、今後もPC活動に積極的に携わりたいという想いがいっそう強くなっています(秋葉)」。

「私は、レイパーソンサマリーを実際に患者さんに見ていただき、いただいたフィードバックをもとに意見交換を行ったときのことが印象に残っています。

たとえば、「この指標では、何点から何点に上がりました」という治験結果の記載に対して、「点数を構成する具体的な要素が知りたい」というご意見を患者さんからいただきました。

わかりやすさを意識して文章を作成しているつもりでしたが、実際の対話を通じて新たに気づかされることが多く、患者さんと実際に話すことの重要性を実感しています(佐藤)」。

グループ間の連携を強化し、リーディングカンパニーとしてPC活動の次なるステージへ

患者さんにとっての真の価値を追求するために。3人には、PC活動に取り組み続ける明確な理由がある。

「患者さんのご意見を伺うことで、「患者さんのために仕事をしている」という価値観を再認識できることが、PC活動に携わる最大の醍醐味です。また、業界全体で患者さんの声を取り入れようとする流れがある中で、新たな取り組みを推進し、臨床開発職のあり方を変えていけることにもやりがいを感じています(佐藤)」。



「製薬業界において当社がPC活動をリードしているという自負があり、まだ誰も挑戦していないことに取り組めるのは大きなやりがいです。さらに、実際に行動へ移す中で新たな知見や発想を得られることが多く、それが新たな価値創出につながっていると実感しています(加藤)」。

「10月に社内イベント「CHUGAI PHARMONY DAY 2024」が開かれた際、患者団体の代表の方からサンキューレターを高く評価していただきました。内容やデザインだけでなく、お渡しするタイミングについても徹底的に議論を重ねたので、患者さんに想いが届いたことは本当にうれしかったです。こうして患者さんから直接フィードバックをいただけることが、やりがいにつながっています(秋葉)」。

そして3人にはすでに、その先に思い描く未来がある。

「患者さんの声を拾い上げ、それを臨床試験に活かすことで、より患者さんの負担が少ない臨床開発を実現していきたいと考えています。グループ間の連携をさらに強化し、「中外製薬は患者の声をきちんと聞いてくれる」と思っていただけるよう、社会や患者さんの幸せに貢献し続けることが目標です(秋葉)」。

「私も同じ想いを持っています。患者さん一人ひとりの声に耳を傾け、「参加してよかった」と感じてもらえる治験を増やしていきたいです。また、既存の治療法や病状に対するニーズを探索し、早期開発からプロトコルに反映し評価することをめざしています。PC活動を通じて患者さんのニーズを早期から評価できる仕組みを確立していき、患者さんの求める医薬品を届けたいです(加藤)」。

「私は、患者さんの意見を反映した臨床開発が当たり前になる未来をめざしています。患者さんの声を聞き、患者さんと共に新しい価値を生み出すことができる製薬会社になることが目標です。

さらに、日本の患者さんの声をグローバルな開発計画に反映させる取り組みも進めていきたいと考えています。とくに後期開発では、日本の患者さんの意見が反映されないまま計画が進むことが少なくありません。

グループの一体感を高め、スピード感ときめ細やかさを両立させながら、新たな価値創出に貢献していきたいと思っています(佐藤)」。

※ 記載内容は2024年12月時点のものです