イノベーションの源泉は「人」。個を描き、磨き、輝かせる育成プログラムにかける想い

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中外製薬は世界のトップイノベーターをめざすため、新成長戦略「TOP I 2030」を掲げている。この実現に向けた原動力は「人」であるという考えから、人財マネジメント方針を策定。人事部で人財育成に携わる2人が、「個を描き、個を磨き、個が輝く」ための人財育成体系、そしてそこにかける想いについて語る。

(インタビュイー:尾崎、藤)

※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm)より転載。記載内容・所属は2024年8月時点のものです

「中外なら期待できる」。世界のトップイノベーターをめざすための5つの改革

国内トップクラスの製薬企業から、ヘルスケア領域におけるイノベーションをリードする企業へ──患者さん中心の高度で持続的な医療を実現するイノベーターとなるべく、中外製薬が2021年に策定した新成長戦略「TOP I 2030」(2030年トップイノベーター像)。

そこでは、「世界の患者さんが期待する」「世界の人財とプレイヤーを惹きつける」「世界のロールモデルになる」というトップイノベーター像を提示している。

人事部の尾崎は、トップイノベーター像についてこう解説する。

尾崎:世界中の患者さんから「中外なら新たな治療法を生み出してくれる」と期待され、ヘルスケアにかかわる世界中のプレーヤーから「中外と組めば新しいものを生み出せる」と想起され、社会課題解決をリードする企業として世界のロールモデルとなる。これが、私たちのめざすトップイノベーター像です。

このトップイノベーター像の実現に向けて掲げた成長戦略が、「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」の2つの柱である。

1点目の「世界最高水準の創薬の実現」では、独自の創薬アイデアを具現化する技術基盤を拡張・構築し、デジタル活用やグローバル先進プレーヤーとの連携を強化することで、さらなる創薬力の向上を図る。

一方、2点目の「先進的事業モデルの構築」では、デジタルを活用したプロセスや価値創出モデルの再構築によって、バリューチェーン全体にわたる生産性の飛躍的向上と、患者価値・製品価値の拡大をめざす。PHCソリューションにより、医薬品の価値最大化を進める。

尾崎:この2本柱を実現するための具体策として、「創薬」、「開発」、「製薬」、「Value Delivery」、各バリューチェーンとそれを支える「成長基盤」を合わせた5つの改革を掲げています。

まずは「創薬」。既存技術基盤の拡張と新規技術基盤の構築、そして、グローバル先進プレイヤーとの連携強化によるイノベーション機会の加速をめざします。次に「開発」。プロジェクト価値最大化と効率的な臨床開発オペレーションの実現を目標に掲げています。続いて「製薬」。世界水準の製薬技術の確立と品質・スピード・コストのすべてにおいて高い競争力を実現し、安定供給と高品質を両立する供給体制を確立しようとしています。

さらに「Value Delivery」では、独自のエビデンス創出による個別化医療と、革新的な顧客エンゲージメントモデル構築による顧客価値最大化の実現を追求しようとています。

バリューチェーンに即したこれらの改革を支えるのが「成長基盤」。人財マネジメント方針、デジタルビジョンやQualityビジョンを掲げるとともに、サステナブルな基盤を強化したり、PHCソリューションによる医薬品の価値最大化を実現したりすることをめざします。

成長基盤の核は人財。社員一人ひとりが自律的にキャリア形成に取り組む

トップイノベーター像をめざす土台とも言える成長基盤の核となるのが「人財」。中外製薬では、イノベーションの源泉は「人」であると捉え、人財マネジメント方針を策定。掲げられた3つのテーマは、「個を描く」「個を磨く」「個が輝く」

尾崎:会社が変わるためには、社員一人ひとりが変わらなければいけません。そのためには、トップイノベーター像とリンクさせながら自身のありたい姿を描くこと、その姿を実現するために専門性やコンピテンシーを磨きながら挑戦すること、そして自身の力を最大限に発揮することで輝くことが必要であると考えています。

 

重要なことは、社員一人ひとりが主体性を持ってキャリア形成に取り組むこと。そのため、人財育成においては、「自律的学びの文化醸成と相互研鑽を通じた成長」を目的として、自らを磨き続ける人財を徹底的に支援する体制づくりを始めている。

 

尾崎とともに育成チームで自律的学びを企画・立案する藤は、こう意気込む。

 

藤:まずは自分のありたい姿を描いた上で、どんな強みを伸ばしていくのかを自身で言語化し、磨く方法を選択することが大切です。私たちは、強みを伸ばすための研修やe-ラーニングなどのさまざまな選択肢を用意し、個が輝くための体制を作っていきたいと考えています。

入社30年超の尾崎は、「個」にフォーカスしたテーマに強く共感し、自身も刺激を受けていると話す。

 

尾崎:私たちが入社した当時は、「組織のために」が前面にありました。しかし、これから専門性やスキルを持った人財が切磋琢磨して高みをめざすには、個の強さが必要です。私自身、人財育成に関する専門性をしっかり磨かなければいけないと感じました。

一方、人事のキャリアを歩んできて2023年に入社した藤は、中外製薬の人財の層の厚さに驚いたと話す。

 

藤:近年、社会全体でキャリア形成の主体が会社から個人に移りつつありますが、中外製薬はすでに社員一人ひとりが高い専門性を持っていて、人財の層がとても厚いので、実現の可能性が高いのではないかと感じました。

ただ、人によっては強みを言語化するサポートが必要だったり、専門性を高めるためのガイド役が必要だったり、さまざまな支援が求められるはずです。その役割を担いながら、私自身も人事のキャリアを探求できることにワクワクしています。

原点にある想いを大切に、会社のめざす姿と社員のありたい姿をかなえる

トップイノベーター像という共通のめざす姿はあるが、当然ながら「描きたい姿」は人それぞれ。会社と個人のめざす方向性をすり合わせながらも、社員が学びたいことをかなえる環境を作っていくことが、育成チームのミッションとなる。

 

尾崎:自律的な学びとは何か、実現するにはどのような条件が必要なのかをチームで話し合い、トップイノベーター像に必要なコンピテンシーはある程度見えてきました。

しかし、PHCソリューションの領域にもビジネスを展開していくには、どのような知識やスキルを持った人財が必要なのか。社員が今、何を欲しているのか。私たちは、そのギャップをしっかり捉え、社員のニーズに応えなれければいけません。

各部門へのヒアリングや社員へのアンケートを通じて、会社の方針と社員の声の双方から研修プログラムを検討する中で、藤はあらためて中外製薬の想いの強さに触れていると言う。

 

藤:会社のビジョンやミッションに共感している社員が多いですし、「患者さんのために」という想いが強くて深いんです。だからこそ、チームワークで課題を克服していくことができるのだと思います。

ですから人事部として、議論をする際も「こうした社員の活躍のためにできることは何か」を追求しています。そこが魅力ですし、患者さんのために掲げた会社の戦略と人財マネジメント戦略の連動性を体感しながら仕事ができていると感じます。

オンライン学習や社内英会話サークルなど、さまざまな形で能動的に学べる機会を提供

「自律的学びの文化醸成と相互研鑽を通じた成長」を実現するため、ロミンガーの法則(※)を参考に、OJTが6割、異動・配置・登用が3割、Off-JTが1割という方針を掲げて多様な学びの場や自律的なキャリア形成の推進に取り組んでいる。

 

米国のリーダーシップ研究機関であるロミンガー社が提唱する人材育成の法則。「70:20:10の法則」とも言われる。育成の要素は、「業務経験7割:薫陶2割:研修1割」の割合が最適解であるとされる

 

尾崎と藤が担うのは、全社員向けの研修体系の構築で、主に3つの領域がある。

 

藤:1つめは、役割認識やコンピテンシー強化を基軸にしたプログラム。マネジャー・幹部社員や新入社員など役割や階層別に実施するプログラムや、社外での経験を通して特定のスキルを強化する実践型研修も実施しています。社員の主体性を重視するため、公募制の研修もあります。

2つめは、各部門において実施している専門性を強化するプログラム。デジタル分野においては「中外デジタルアカデミー」という専門の教育体制もありますし、MR職向けの研修、メディカルドクター向けの施策など、職種に応じたプログラムを用意しています。

3つめは、自己啓発。キャリア自律を支援する目的で、自分で学ぶという意味を込めたオンライン学習プラットフォーム「I Learning」(アイ・ラーニング)を運用しています。この中には、コミュニケーションスキルやテクニカルスキル、英語力を含むコミュニケーションスキルなど、さまざまなビジネススキルを学べるプログラムが含まれています。また、自己啓発学習に対して会社が一定の補助をする「SIP」(セルフイノベーションプログラム)という制度もあります。

 

尾崎:私自身、SIPを活用して通信教育を受けたり、社内で同期と英会話サークルを立ち上げたりしました。とくに英会話サークルは、仲間同士で研鑽できる点が魅力です。

 

藤:個人の主体性に重きをおいたプログラムもあれば、社員同士で学び合う勉強会もあるので能動的な学習ができると思います。

すべての革新は患者さんのために──困難も乗り越えられる知識とスキルを磨ける環境をめざして

トップイノベーター像の実現に向け、社員のニーズに耳を傾けながら、さらに研修を強化していきたいと語る2人。創薬にとどまらないビジネス領域への進出・発展に必要な幅広い知識・スキルを身につけられる研修を充実させていきたいと話す。

 

尾崎:世界最高水準の創薬やPHCソリューションを含む先進的事業モデル構築の実現に向けて必要な専門性はもちろん、グローバルにビジネスを展開し、そこで活躍していくためには、さまざまな国の価値観を理解し、多文化な環境に対応できるコミュニケーション能力やポータブルスキルも必要です。

自分のキャリアの方向性をどう定めるべきかと悩んでいる社員もいるはずですから、もう一歩、二歩と踏み込んだプログラムも用意していきたいです。

 

藤:事業を推進していくためにはどのようなスキルを持った人財を育成していく必要があるのか。会社の戦略との連動性をさらに高めていきたいと考えています。

 

尾崎:当社には専門性の高い社員が多数いますので、互いに教えあったり、各自が持っているスキルを共有したりすることでシナジーが生まれるはずです。「I Learning」を活用し、そういった仕組み作りにも挑戦していきたいと思います。

 

そして、さらに先も見据えながら、長期的に育成に取り組み、一人ひとりが輝くための環境を作っていきたいと続ける。

 

藤:「自分で決めた」という自覚を持てることは、幸福度の向上にもつながると言われています。育成の仕事は、まさにそのサポートをできる魅力的な仕事ですし、人事として自己決定を支援する立場であることを常に心がけています。

自分がめざしたい方向に進むために学ぶ機会がたくさんある会社だと思ってもらえるように取り組んでいきたいです。

 

尾崎:人財育成には時間が必要ですし、到達すべきレベルも上がってきています。まずは2030年をめざしながら、2035年、40年も見据えた取り組みにも挑戦していきたいと思います。社員が将来、「あの時取り組んでおいて良かった」と思えるような施策を探索していきます。

すべての革新は患者さんのために、世界の医療と人びとの健康のために、という想いを実現していくためには困難なこともたくさんあります。しかし、それを乗り越えるための知識やスキルを身につけられる環境を私たちが作っていきますので、この想いに共感してくださる方々と一緒に挑戦していきたいです。