医療現場を変える。営業力を高め、患者さんに最適な治療を届けたい

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医療現場を変える。営業力を高め、患者さんに最適な治療を届けたい

顧客に求められる業界トップクラスのコンサルティング部隊の確立をめざし、中外製薬はMPP(Medical Partner for the Patient)プログラムを他社に先駆けて始動。その1期生となる3人が、中外製薬の営業力の強み、MPP認定後の意識や行動の変化、患者中心の持続可能な医療に向けた想いを語る。(インタビュイー:川口、大仲、山口) ※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm)より転載。記載内容・所属は2024年3月時点のものです

患者さんのためのメディカルパートナーをめざして。それぞれのビジョンと想い

患者さんのためのメディカルパートナーをめざして。それぞれのビジョンと想い

日本の医療の現場では、エリアごとの医療提供体制、医師・医療従事者不足などさまざまな課題を抱えている。さらに、医療関係者と製薬企業との接点の多様化、患者さんの医療リテラシーの向上によるニーズの高度化など、製薬企業の営業活動を取り巻く環境は大きく変化し、営業活動を担う医療情報担当者(Medical Representative:以下、MR)の進化が求められている。

このような環境下で、中外製薬の営業本部では「医療現場を変える」を目標に掲げ、MRの意識改革とスキルの向上を目的とした、「患者さんのためのメディカルパートナー」を育成する製薬業界初のMPPプログラムが2023年2月からスタートした。

医療関係者と対等に対話するための豊富な知識とスキルの習得、そして「真の患者中心」「常に学ぶ姿勢」のマインド醸成を通じて、顧客から求められる業界トップクラスのコンサルティング部隊となり、医療関係者、患者さんとともに医療課題の解決をめざしていく。それを突き動かすのは、「患者さんに良い治療を届けたい。絶対に治したい」というMRとしての強い使命感と患者さんへの想いがある。

MPPプログラムには全社から630人が応募。そのうち101人が受講し、大仲、川口、山口ら計38人が第1期MPPとして認定を受けた。同プログラムに参加した経緯とビジョンを、3人はそれぞれ次のように語る。

 

川口:中外製薬は2021年に成長戦略「TOP I 2030」を策定し、「患者中心の高度で持続可能な医療を実現する、ヘルスケア産業のトップイノベーター」をめざすことを明言しています。

この大方針に呼応する形で、これまで患者さん、医療関係者、中外製薬が一体となり、同じ価値観を共有するチーム医療の確立を目標としたMR活動を行ってきました。MPPプログラムは、そうした私の信条を体現する取り組みだと感じ、MPPにチャレンジすることを決めました。

 

山口:人と健康に関わる仕事がしたくて製薬業界を志し、MRとして自分の家族にも安心して勧められる治療オプションの提案を心がけてきました。私がMPPプログラムに応募したのは、チームの主軸を担う立場としてリーダーシップを発揮すると同時に、知識とスキルにさらに磨きをかけ、トップクラスのMRをめざしていきたいからです。

また、ここで学んだことをチームに伝え、組織全体をレベルアップさせていきたいと考えています。

 

大仲:私がこれまで大切にしてきたのは、患者さんや医療関係者の役に立ち、求められる存在になることです。この理想を追求するために必要なスキルアップができるチャンスになると思い、応募しました。

中外製薬のMRは一人ひとりが強い信念を持ち、「患者中心」の価値観に基づいて活動しています。一方でそうした想いを周囲と分かち合う文化が十分に根づいていないと感じています。

MPPプログラムを通じて強く実感した患者さんへの想いと、習得したスキルを共有し、MRや組織を盛り上げられるようなリーダーシップを発揮していきたいと思っています。

業界トップクラスのコンサルティング部隊の確立に向けて。直面した壁と学んだこと

業界トップクラスのコンサルティング部隊の確立に向けて。直面した壁と学んだこと

MPPプログラムは、3つの構成でMRの育成を行う。医療関係者と対等な立場でディスカッションができるようになるための「知識」と「スキル」の習得、そして医療現場を変える「マインド」の醸成だ。

「知識」のプログラムでは医師とのロールプレイや医局カンファレンスを模擬的に体験する研修や症例の自己学習、「スキル」ではロジカルシンキングやデジタルマーケティング知識の習得および医師との面談技術を磨く「対話スキル」研修を展開。「マインド」プログラムでは患者さんとのダイアログを通じて、患者さんの真のニーズや想いを理解する。3つのプログラムすべてのアセスメントを経て、ようやくMPPとして認定される。直面した課題や、それらを克服する過程で得た学びについて3人は次のように振り返る。

 

大仲:マーケティング研修でのエリア戦略の立案と発表が印象に残っています。マーケティングの基礎を学び直した上で、外部環境やトレンド分析に基づいたエリア戦略をゼロベースから立案しました。これまでどこか結論ありきで分析し、戦略を立てていたことに気づかされました。

この研修を通して、自分が把握しているデータや顧客情報だけでなく、エリアを取り巻く課題を踏まえて分析するようになり、説得力の高い立案ができるようになったと感じています。

「知っていること」と「身についていること」の違いを痛感したからこそ、マーケティングの知識を営業活動で実践し、MRとしてさらに大きく成長するため、研鑽を積んでいきたいと思っています。

 

山口:マーケティング研修は非常に大変でした。以前からエリア戦略の立案に取り組んできましたが、外部環境から徹底的に分析したのは今回が初めて。苦戦しながらも、支店のメンバーとの検討会や、研修担当の方との面談を通じて、これまでにない新しい戦略の立案につながりました。何よりもマーケティングに時間をかける価値を実感できたことは大きな収穫です。

 

川口:マーケティング戦略は本社マーケティング部や営業のマネジャーなど専門知識を有する人が携わる業務と捉えていました。PEST・3C・SWOT分析から、KSF・KPIを設計し、仮説・検証・実行を繰り返しながら、精度の高いエリア戦略を策定しました。

自身の経験による状況判断で戦略や営業活動の方向性を決めてしまうことのリスクに気づかされ、環境分析と複数の関係者を巻き込みながら、広い視野で1つの流れを捉え検証していく必要性を学びました。絵に描いた餅にならないように、担当エリアにおけるエリアプランを策定し、メンバーと供覧する時間を設けることで、互いの意識を高め合っています。

 

医師とのロールプレイや患者さんとのダイアログについてはいかがでしたか? 

 

山口:医師とのロールプレイでは患者さんについて深く理解することの難しさを再認識しました。患者さんの想いや、ご家族のことを意識していたつもりでも、実際に医師と対面するとデータのことばかり話してしまい、患者さんの状況に十分に踏み込めなかったりします。今回の研修でそのことをあらためて認識し、多くの気づきを得ることができました。

 

大仲:これまで、患者さんの情報について医師にどこまで詳しく聞いてよいのかわからず、一定の線を引いてしまっていました。なので、私はあえて意識的に患者さんの情報に深く踏み込むことを試みました。医師の反応を見ながら進退を繰り返すプロセスは、非常に多くの学びをもたらす経験となりました。

 

川口:「最終的な治療目標は?」「患者さんにどのような状態になってほしいのか?」といった問いかけを軸に、医師や患者さんの視点に焦点を当てながら対話を進めることを心がけました。医師が必要とする情報を提供しつつ、薬剤の話題をひとつのオプションとして取り入れたところ、双方にとって有益な場になったと感じています。

 

大仲:私にとって深く心を動かされたのが、患者さんとのダイアログです。私は肺がん治療を受けている患者さんのお話を聞きました。がんの告知を受け落ち込み、いろいろな心の葛藤を経てようやく前向きに治療を受け始めた途端直後に、医師とは別の職員さんから終末医療の話をされ、またひどく落ち込まれたそうです。

このお話を聞くまで、私も終末医療や緩和ケアは患者さんやご家族の人生設計のために大切で良いものだと捉えていました。医療関係者や私たちが「患者さんのため」と思っていることが、必ずしも患者さん自身にとって良いものではないということをリアルな体験に触れることで痛感しました。

 

山口:私も、5年生存率が約2%と言われているがん種の患者さんが、生きたいという想いを強く持ち、前向きな気持ちを持ち続けていること、そしてその患者さんの想いに寄り添い、最適な治療を模索し共に闘う医師の姿に、強く心を打たれました。

疾患の知識があると、データ分析などからこれらのがん種を「治らない病気」と判断しがちですが、もし自分が当事者であれば、たとえ治癒する見込みが非常に低い病気であっても、少しでも希望をもって治療と向き合いたいと思うはずなんです。入社して以来、がん領域を担当し、疾患の理解やデータ解釈などに関して、気づかぬうちに固定観念を持ってしまっていたことに気づきました。

医療現場では、私たちの想像を超えることが日々起きています。17年のキャリアを積んできましたが、今回、一人ひとりの患者さんに寄り添うことの大切さをあらためて深く実感しました。

 

川口:私たちMRは直接患者さんとお会いする機会が原則ありません。それでも私たちは患者さん一人ひとりの「ペイシェントジャーニー(※)」を意識し、活動することが重要だと実感しました。

これまで医薬品の情報や副作用について説明する際、「薬剤」や「中外製薬」が話の主語になっていました。患者さんとのダイアログを通じ、患者さんの治療段階が診断直後なのか、緩和ケアのフェーズにあるのか、患者さんの気持ちの変化まで配慮するようなり、結果として、医師との関わり方も大きく変化したと感じています。

※ 患者さんが病気を認知し、医療機関で診断・治療を進めていくプロセスで、どのように感じ・考え・行動するかといった全体像

患者さんのためのメディカルパートナーとして。社内外から期待される新たな役割

患者さんのためのメディカルパートナーとして。社内外から期待される新たな役割

MPP認定資格を得た3人。知識・スキルと、真の患者中心のマインドを周囲に還元している。自身の意識の変化もさることながら、周囲からの反響が大きいと口を揃える。

 

山口:私がリーダーを務めるチームで、マーケティング勉強会を始めました。各自が抱える課題を共有し、それを分析し、ディスカッションを行っています。これまでの勉強会では、PEST分析によるエリアの環境分析や、担当している製品のSWOT分析などを行ってきました。

とくにPEST分析では、エリア特有の課題や、競合他社の情報など、外部環境を把握することの重要性を全員が再認識しました。エリアにインパクトを与える戦略・戦術を実践していくために、日頃から精度の高い情報収集をし、マーケティングの視点に基づいた営業活動を心がけるようになったことが、私にとっては大きな意識改革です。

 

川口:私の所属する統括支店でも、8人のMPP認定者が自身の役割を自覚し、自発的に議論の場を設けることで、次世代メンバー育成に向けた取り組みを推進しています。

 

大仲:営業活動でお会いする人の範囲を意図的に広げています。その結果、より幅広い情報が入手できるようになり、以前は見過ごしていた課題に気づくようになってきました。一朝一夕に変わるものではないですが、少しずつ変わり始めたかなと感じています。

社内での立ち位置は大きく変わりました。MPPの認知度が社内で高まり、関心も高まっています。他の合格者と共に支店のメンバーにMPPで習得した情報を説明するなど、良い意味でプレッシャーを感じています。

 

山口:MRのキャリアについて考える新しい取り組みも始まっています。MPPプログラムの体験談について、次のMPPをめざすメンバーに向けて話す機会がありました。

 

川口:社外からも反響がありました。先日、担当する大学病院を訪問した際、看護師さんにMPP認定の話をしたところ「チーム医療の実現に向けた新しい取り組みは中外さんならではですね。今後の活動を期待しています」と、励ましの言葉をいただき、嬉しさと共に身が引き締まる思いになりました。

医療関係者と患者さん、そして中外製薬が同じ価値観を共有できるチーム医療をめざして

MPP第一期生の認定を祝う会
MPP第一期生の認定を祝う会

Medical Partner for Patientとして。それぞれがMRとしてめざすビジョンを語った。

大仲:常に患者さんの不安や困り事に向き合い、ペイシェントジャーニーに即したニーズに応えられるようになりたいです。チーム医療に貢献できる情報を提供し、より効果的に連携できるよう仕組みを変えていきたい。幅広いスキルを磨き、行動力を持って自ら変革を起こせるMRになりたいです。

 

川口:患者さんと医療関係者と同じ価値観を共有できるようなチーム医療の確立をリードしていきたいです。そのためには、固定観念に捉われることなく、さまざまな業種業界を巻き込んでいく必要があります。医療関係者と製薬業界以外の企業を交えた勉強会の企画運営をしています。

 

山口:医療関係者とのコミュニケーションを強固にし、実診療で得られた情報と当社の最新のエビデンスから得た知見で、世界中の患者さんの医療に貢献したいです。またこれらの知見を周囲のMRと積極的に共有し、中外製薬の営業力を高めていきたいです。

 

中外製薬の営業力の強み、そして患者中心の高度で持続可能な医療の実現に向けてこう抱負を続ける。

 

川口:勤勉さと誠実さで医師と強固な信頼関係を築けることが当社MRの強みと感じています。これからも医師との対話を通じ、患者さんの真のニーズを把握し、患者さんに最適な治療を届けていきたいです。

手探りで挑んだMPPプログラムですが、患者さんや医療関係者、そして自分自身にとって良い成果につながっていくと信じています。周囲からヘルスケア産業のトップイノベーターとして認められるよう、医療関係者や患者さんに最適な医療提供活動を続けていきます。

山口:中外製薬のMRは専門性が高く、誠実で真摯な営業姿勢が評価されていると感じています。それは、患者さんが安心して薬を使えるよう、医療関係者に医薬品の適正使用を推進するなど、患者さん中心の営業活動をMR全員がしているからだと実感しています。

これからも一人ひとりが専門性を発揮できるよう多様な価値観を尊重し、相互補完的に連携できる中外製薬ならではの協働性を発揮していきたいです。

MPPプログラムと業務の両立は、正直簡単ではありませんでした。ですから、MPPプログラムをこれから受けるMRがさらなる成果を出せるよう、全力で支援します。

 

大仲:勤勉さや誠実さだけでなく、勝負強さを併せ持つことができれば、当社のMRの可能性が大きく開けると信じています。最終的な目標は、MPPが特別ではなく、中外製薬のMR全員がMPPとして活動できる組織づくりです。MPPプログラムを受講したメンバーを中心に学び合う文化を醸成していきたいと考えています。