チーム力で創薬に挑む。プロセス開発と技術開発の2軸で革新的な薬を患者さんのもとへ

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製薬研究部に所属する近藤。グループの中では、中分子医薬候補品のプロセス開発や製造の技術移転を担当するほか、新規技術開発に関する提案なども行っている。他社でもプロセス開発に携わってきた立場から、同社の強みや可能性、ここにしかないやりがいを語る。

(インタビュイー:近藤)

※中外製薬公式talentbook(https://www.talent-book.jp/chugai-pharm/)より転載。記載内容・所属は2023年9月時点のものです

中分子化合物のプロセス開発と技術開発を担当。 次世代の合成プロセスの確立に向けて

製薬研究部に所属する近藤。現在は中分子医薬候補品のプロセス開発を主に担当している。

 

「中外製薬では、これまでのふたつの大きな柱だった低分子医薬と抗体医薬に加え、近年は中分子医薬という新しいモダリティにも注力しています。私が携わるのは、その中分子化合物のプロセス開発です。これから薬になる可能性のある化合物の合成方法を探索、最適化することで、高い生産性と安定した品質を両立するためのプロセスの確立に努めています。

新しい薬を多くの患者さんに届けるためには、工場の数千リットル以上の大きな生産設備で繰り返し製造しても、毎回再現性良く高い品質が保たれなくてはなりません。そのために環境負荷に配慮した上で、堅牢性の高い製造方法を確立する必要があります。低分子化合物と比較し、分子量が大きく複雑な構造をもつ中分子化合物の化学合成においてそれらを実現することが私の主な仕事です(近藤)」。

 

プロセス開発と並行して、近藤は新規技術開発の提案にも携わってきた。

 

「革新的な新薬を素早く患者さんへ届けるため、新規技術開発は常に欠かせません。とくに私は連続生産に関する技術開発の提案を進めています。連続生産とは、原料から薬を製造する工程の一つひとつを切れ目なく行う製造方法のこと。

学会や論文で情報収集しながら検討を行い、競争領域における特許の出願も視野に入れる一方、オープンイノベーションによる他社や大学など社外の研究機関との連携を通した、技術革新の実現と新たな価値の創出に向けても準備を進めているところです(近藤)」。

 

プロセス開発や技術開発を担う上で近藤が大切にしてきたのが、チーム一体となって創薬に取り組む姿勢。相手目線に立ったコミュニケーションを心がけてきた。

 

「製薬研究部だけで薬をつくっているわけではありません。革新的な医薬品をいち早く患者さんにお届けするためには、工程に携わるすべてのメンバーが同じチームの一員としての意識を持ち、組織力を発揮することが大切だと思っています。

そのために欠かせないのが、必要な情報を同じ目線で理解できるよう関係各所としっかり共有すること。たとえば工場に技術移転する際、必ずしも化学に精通していない方々を相手にするケースもあるため、製法のポイントや注意点などを、ロジカルかつわかりやすく説明することを心がけています。同時に、生産技術・設備のエキスパートである工場メンバーからの意見・提案をプロセス開発に反映させています(近藤)」。

分子の力に魅せられ薬学の道へ。化学によるものづくりへの情熱が導いた中外との出会い

近藤が医薬に関心を持つようになったのは高校生のころ。小さな分子が人体に対して大きく作用することに興味を掻き立てられ、薬学を志すように。中でも惹かれたのが化学だったと言う。

 

「新しい反応を見出すことや、反応が起こる仕組みを解明していくことにおもしろさを感じていました。大学では、新しい有機反応を開発する反応開発という分野の研究をしていました(近藤)」。

 

大学院に進み薬科学の博士号を取得した後、近藤は研究開発の道へ。製薬会社に就職し、研究職としてキャリアを歩み始めた。

 

「前職では、低分子化合物の初期プロセス開発やニューモダリティを用いた医薬候補品の初期プロセス開発に携わりました。とくに印象深かったのが、自分が開発した製法で薬がつくられるところを工場で初めて見たときのこと。
1,000リットルの大きな釜の中で化合物の溶液がぐるぐる回るのを目にし、自分の仕事がかたちになっていく様子を肌で感じられたことは、プロセス開発に取り組む意欲を高めることにつながりました(近藤)」。

 

やがて、化学を基盤とした創薬や技術開発にさらに専念できる環境を求めて辿り着いたのが、中外製薬だった。

 

「創薬におけるパラダイムシフトが起きたことを受け、ベンチャー企業から技術導入を進めるなど、自社での技術開発の方針変更を打ち出していました。そんな中、抗体や低分子に引き続き注力しながら、中分子の可能性にも新たに注目するなど、自社技術を生かした創薬を追求する姿勢を明確に表明していたのが中外製薬。ここでなら自分のやりたい研究ができると確信し応募しました。

化学を基盤としたものづくり技術に関心があることを面接官を務めた部長に伝えたところ、『すごくわかるよ』と大きくうなずいてくださったことが印象に残っています。上司となる方が自分の考えに共感してくれたことが入社の決め手になりました(近藤)」。

幅広い経験で育まれた研究者としての資質。中外製薬だから辿れるキャリアの道筋

中外製薬に入社して近藤が最初に携わったのが、中分子化合物の新規技術開発と特許出願に関する業務。研究開発の方針や戦略など、中外製薬を知る上で有意義な時期を過ごしたと振り返る。

 

「入社直後に特許関連の業務を経験しました。中外製薬では、将来的に原薬製造に必要となる関連技術を先回りして開発しています。社内の知財部や、独自の専門性をもった研究部のメンバーなど、さまざまな方と連携する機会に恵まれ、多くを学ばせてもらいました(近藤)」。

 

プロセス開発に携わるようになってからも、近藤が中外製薬に入社して初めて挑戦したことは少なくない。前職の経験も活かしながら、着実に成長を遂げてきた。

 

「商用に耐えうる製法を開発するに当たって、温度や混合比など複数の変数が結果に与える影響について、網羅的にデータを取得しプロセスを理解する必要があります。ここでは実験計画法を用いて効率的にデータを取得、解析しています。アライアンスを組むロシュ社のやり方を参考にできるのは中外製薬ならでは。仕事の幅が広がっている実感があります。

ただ、同じ製薬会社でも前職と中外製薬では言語や考え方に微妙な違いがあるのを感じます。こちらの意図を相手に的確に伝えるために、説明や資料のつくり方を工夫する必要がありましたが、ベースになっているものは同じ。プロセス開発を通して培ってきた前職の知見や視点が大いに役に立っています(近藤)」。

 

入社以来、学びや自己研鑽を後押しする中外製薬の風土を身をもって感じてきた近藤。キャリア入社した立場から、同社の魅力について語る。

 

「中外製薬では、製薬技術本部が中心となり、5〜10年先を見据えた技術開発のプロジェクトが複数進行していて、私も参加しています。

また、デジタル人材育成のための研修も実施されています。その一例が、『中外デジタルアカデミー』。座学とハンズオンの両面から体系的な知識や技術が学べるプログラムで、私はPythonを使った統計解析の手法を学ぶ初心者向けの講座を受講しています。

純粋なサイエンスはもちろん、実用的な技術開発を極めたい人、デジタル技術によってビジネスを革新したいと考える人にも道が用意されているのが中外製薬の魅力。挑戦機会に溢れていると感じます(近藤)」。

 

一方、働きやすい職場環境に助けられる場面も多いと言う。

 

「中外製薬ではフレックス制が導入されています。先日も保育園から子どもが熱を出したと連絡があり、上司に報告して快く迎えに送り出してもらったばかり。ほとんどの男性社員が育休を取得していますし、必要に応じて業務量を調整してもらえるなど、自由度の高い働き方をさせてもらっています(近藤)」。

チームワークが製薬研究のかなめ。技術開発でも価値を発揮できる存在に

近藤は新たな仲間に向けて、こんな言葉で参画を呼びかける。

 

「新しい医薬品を患者さんに迅速に届けるためにものを言うのは組織力です。チームで何かを成し遂げたいと考えている方が中外製薬では活躍できると思いますし、そんな方の力が求められていると思います。

また、与えられた仕事をただこなすのではなく、手を挙げればやりたいことにどんどん挑戦させてくれるのが当社の良いところ。私も製薬技術本部のプロジェクトに自ら進んで参加していますが、新しいことへの挑戦意欲が強い方にとって、とても居心地の良い環境だと言えるのではないでしょうか(近藤)」。

 

チャレンジ精神を育む中外製薬のカルチャーのもと、製薬研究に取り組んできた近藤。これからもその軸がブレることはない。

 

「自分が開発に関わった製法でつくった薬を通じて、医療にそして患者さんに貢献したいという想いに変わりはありません。中でも現在、個人的に関心があるのが新規技術開発です。

とくにいま私が取り組んでいるデータサイエンスに基づく製法検討や連続生産といった方法論や技術を通して、開発期間の短縮、生産性の向上を実現できれば、薬をいち早く患者さんのもとに届けることができます。プロセス開発だけでなく、技術開発においてもバリューを発揮できたらと考えています(近藤)」。

 

プロセス開発や技術開発に関わるさまざまな経験を通じて、研究者として可能性の幅を広げてきた近藤。これからも化学を基盤としたものづくりに情熱を傾けながら、アンメットメディカルニーズに挑み続ける。