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2022年03月28日

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眼科領域における初のバイスペシフィック抗体バビースモ、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性および糖尿病黄斑浮腫に対し製造販売承認を取得

  • 眼科領域における初のバイスペシフィック抗体「バビースモ」が、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)に対し製造販売承認を取得
  • 血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害するバイスペシフィック抗体により、nAMD、DMEに関与する2つの疾患経路を阻害
  • nAMD、DMEに対し、眼内注射剤の第III相臨床試験において初めて最長16週間隔の持続性を達成した治療薬

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、抗VEGF/抗Ang-2バイスペシフィック抗体バビースモ®硝子体内注射液120 mg/mL[一般名:ファリシマブ(遺伝子組換え)](以下、バビースモ)について、「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性」および「糖尿病黄斑浮腫(DME)」を効能又は効果として、本日、厚生労働省より製造販売承認を取得したことをお知らせいたします。中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性は、一般的に新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)として知られています。

 代表取締役社長 CEOの奥田 修は、「バビースモは、眼科領域で初めてのバイスペシフィック抗体です。視力喪失につながりうる二つの疾患に対し、新規作用機序に基づく治療選択肢となるバビースモが承認されたことを大変嬉しく思います」と述べるとともに、「中外製薬は、初めて眼科領域に本格参入します。視力改善とともに、16週の投与間隔による治療負担の軽減が期待できる本剤をいち早く治療にお役立ていただけるよう、発売に向け準備を進めてまいります」と語っています。

 nAMDは、加齢による脈絡膜新生血管が網膜下に伸長することで、浸出液や血液が漏出し、網膜浮腫や浸出液の貯留が視力障害を引き起こす疾患です。世界的に60歳以上の視力喪失の主な原因の一つに数えられ、国内患者数は約88万人と推計されています1。DMEは、糖尿病網膜症の合併症の一つであり、国内患者数は71万人以上と推計されています2。網膜の血管から血漿成分が漏出し、黄斑部に浮腫が生じて視力障害が起こるもので、視力喪失に至る場合もあります。

 バビースモは、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害することで、多くの網膜疾患に関与する2つの疾患経路を阻害するよう設計されています3。今回の承認の基礎となった4本のグローバル第III相臨床試験(DME: YOSEMITE試験およびRHINE試験、nAMD: TENAYA試験およびLUCERNE試験)において、既存薬(アフリベルセプト)に対する非劣性を示し、主要評価項目を達成するとともに、眼内注射剤の第III相臨床試験において初めて最長16週間隔の持続性を実現しています。0.5%以上の頻度で認められた試験眼の有害事象は、眼内炎症(ぶどう膜炎等)、眼圧上昇、網膜色素上皮裂孔、硝子体浮遊物等でした。

電子化された添付文書情報

販売名:バビースモ®硝子体内注射液120 mg/mL

一般名:ファリシマブ(遺伝子組換え)

効能又は効果:

  • 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
  • 糖尿病黄斑浮腫

用法及び用量:

〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉

ファリシマブ(遺伝子組換え)として6.0 mg(0.05 mL)を4週ごとに1回、通常、連続4回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期においては、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。

〈糖尿病黄斑浮腫〉

ファリシマブ(遺伝子組換え)として6.0 mg(0.05 mL)を4週ごとに1回、通常、連続4回硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後は、投与間隔を徐々に延長し、通常、16週ごとに1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、4週以上あけること。

【参考情報】

・YOSEMITE試験およびRHINE試験
ファリシマブが失明の主な原因のひとつである糖尿病黄斑浮腫に対する2つの第III相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、良好な持続性を示す(2020年12月21日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20201221153000_1054.html

・TENAYA試験およびLUCERNE試験
ファリシマブが新生血管を伴う加齢黄斑変性を対象とした2つの第III相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、投与間隔を最長16週まで延長できる可能性を示す(2021年1月25日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210125153001_1066.html

ファリシマブの新たな第III相臨床試験により、視力障害の主な原因である2つの疾患において、初めて治療間隔を最大4カ月まで延長し、治療負担軽減の可能性がある眼内注射剤であることが示される(2021年2月16日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210216170000_1080.html

眼科領域初のバイスペシフィック抗体 ファリシマブ、糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対し、国内で製造販売承認申請(2021年6月11日プレスリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210611170000_1114.html

バビースモ(ファリシマブ)について
 バビースモ(ファリシマブ)は眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり4、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としています5。過剰なAng-2とVEGF-Aは、血管構造の不安定化や新生血管の形成を促し、滲出液の漏出や炎症による視力低下の原因のひとつになると考えられています3。バビースモは、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されています3

中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)について
 加齢黄斑変性(AMD)は、読書などの際に必要とされる鮮明な中心視力に関わる眼の器官に影響を及ぼす疾患です6。中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)は、AMDの進行型であり、急速かつ重度の視力喪失の原因となりうる疾患です7,8。異常な新生血管が黄斑下で無制御に増殖することで発症し、滲出液漏出、網膜浮腫、炎症、線維化を引き起こします8。世界全体で約2,000万人がnAMDに罹患しており、60歳以上における視力喪失の主な原因となるとともに、高齢化の世界的進行による患者数の増加が見込まれています6,9,10

糖尿病黄斑浮腫(DME)について
 世界で約2,100万人が罹患しているとされる糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症のひとつです11。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こります12。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えるとともに、浮腫が生じます13。DMEは、この損傷した血管からの漏出とそれに伴う浮腫が、網膜の中心領域で、読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る黄斑部に生じる疾患です12,14。糖尿病の有病率が上昇するにしたがって、DMEの患者数は増加することが予想されます 15。DMEは治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながります12,16。DMEは依然として大きなアンメットニーズがあり、より有効で持続性のある治療薬が求められています3

TENAYA試験とLUCERNE試験について17
 TENAYA試験(NCT03823287)とLUCERNE試験(NCT03823300)は、同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第III相グローバル臨床試験です。新生血管を伴う加齢黄斑変性患者1,329名(TENAYA試験は671例、LUCERNE試験は658例)を対象とし、バビースモの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。両試験では、バビースモ6.0 mgを導入期投与後、20週および24週時点に行う疾患活動性の客観的評価に応じて8、12、16週毎の間隔で固定投与する群、アフリベルセプト2.0 mgを導入期投与後8週間隔で固定投与する群の2群が設定されました。両群とも、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(訳注:硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされました。

 両試験の主要評価項目は、48週までのベースラインからの最高矯正視力(BCVA、メガネ等で矯正した場合を含め、視力表の文字を読む際に達成可能な最高の状態における視力)スコアの平均変化量です。副次評価項目は、安全性、バビースモ群の8、12、16週間隔で投与を受けた参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、および中心領域網膜厚(CST)のベースラインからの変化量の経時変化が含まれます。

YOSEMITE試験およびRHINE試験について18
 YOSEMITE(NCT03622580)試験およびRHINE(NCT03622593)試験は同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第III相グローバル臨床試験です。糖尿病黄斑浮腫患者1,891名(YOSEMITE試験は940例、RHINE試験は951例)を対象とし、バビースモの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。両試験では、バビースモ6.0 mg月1回を4回投与後、最長16週間隔で投与する治療間隔延長群、バビースモ6.0 mg月1回を6回投与後、8週間隔で固定投与する群、アフリベルセプトの月1回を5回投与後、8週間隔で固定投与する群の3群が設定されました。治療間隔延長群を含む投与スケジュールは、CSTと視力により、決定されました。3つの群全てにおいて、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与がなされました。

 両試験の主要評価項目は、48週、52週、56週の平均における1年時点のベースラインからのBCVAスコアの平均変化量です。副次評価項目は、安全性、投与間隔延長群の52週時点における4、8、12または16週間隔のバビースモの投与割合、52週時点における糖尿病網膜症の重症度がベースラインから2段階以上の改善した参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、CSTのベースラインからの経時変化、及び網膜内液が消失した参加者の割合が含まれます。

上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。

出典:

  1. 安田美穂.久山町研究.あたらしい眼科 2016;33:1247-51.
  2. Yau JW, Rogers SL, Kawasaki R, Lamoureux EL, Kowalski JW, Bek T, et al; Meta-Analysis for Eye Disease (META-EYE) Study Group. Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy. Diabetes Care 2012;35:556-64.
  3. Sahni J, et al. Simultaneous inhibition of angiopoietin-2 and vascular endothelial growth factor-A with faricimab in diabetic macular edema. American Academy of Ophthalmology. 2019;126:1155–70.
  4. Sharma, et al. Faricimab phase 3 DME trial significance of personalized treatment intervals (PTI) regime for future DME trials. Eye. 2021; https://doi.org/10.1038/s41433-021-01831-4.
  5. Khan M, et al. Targeting Angiopoietin in retinal vascular diseases: A literature review and summary of clinical trials involving faricimab. Cells. 2020;9(8):1869.
  6. Bright Focus Foundation. Age-Related Macular Degeneration: Facts & Figures. [Internet; cited December 2020]. Available from: https://www.brightfocus.org/macular/article/age-related-macular-facts-figures
  7. Pennington KL, DeAngelis MM. Epidemiology of age-related macular degeneration (AMD): associations with cardiovascular disease phenotypes and lipid factors. Eye and Vision. 2016;3:34.
  8. Little K., et al. Myofibroblasts in macular fibrosis secondary to neovascular age-related macular degeneration-the potential sources and molecular cues for their recruitment and activation. EBioMedicine. 2018;38:283-91.
  9. Connolly E, et al. Prevalence of age-related macular degeneration associated genetic risk factors and 4-year progression data in the Irish population. Br J Ophthalmol. 2018;102:1691-95.
  10. Wong WL ,et al. Global prevalence of age-related macular degeneration and disease burden projection for 2020 and 2040: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Global Health. 2014;2:106-16
  11. Yau JWY, et al. Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy. Diabetes Care. 2012;35:556-64.
  12. National Eye Institute. Facts about diabetic eye disease [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://nei.nih.gov/health/diabetic/retinopathy.
  13. American Optometric Association. Diabetic retinopathy [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.aoa.org/healthy-eyes/eye-and-vision-conditions/diabetic-retinopathy.
  14. All About Vision. Macula Lutea [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.allaboutvision.com/resources/macula.
  15. Liu E, et al. Diabetic macular oedema: clinical risk factors and emerging genetic influences. Clinical and Experimental Optometry. 2017;100:569-76.
  16. Park SJ, et al. Extent of exacerbation of chronic health conditions by visual impairment in terms of health-related quality of life. JAMA Ophthalmol. 2015;133:1267–75.
  17. Heier JS, et al.  Efficacy, durability, and safety of intravitreal faricimab up to every 16 weeks for neovascular age-related macular degeneration (TENAYA and LUCERNE): two randomised, double-masked, phase 3, non-inferiority trials. Lancet. 2022 Jan.
  18. Wykoff CC, et al. FDA. Highlights of prescribing information, Lucentis. 2006. Efficacy, durability, and safety of intravitreal faricimab with extended dosing up to every 16 weeks in patients with diabetic macular oedema (YOSEMITE and RHINE): two randomised, double-masked, phase 3 trials. Lancet. 2022 Jan.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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