中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。

2020年12月21日

ファリシマブが失明の主な原因のひとつである糖尿病黄斑浮腫に対する 2つの第III相グローバル臨床試験で主要評価項目を達成し、 良好な持続性を示す

News Summary

本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が12月21日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/investors/updates/inv-update-2020-12-21.htmをご覧ください。

  • ファリシマブの8週間隔の固定投与群および個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群は、視力改善効果においてアフリベルセプトの8週間隔投与群に対する非劣性を示す
  • 個別に投与間隔を調整したファリシマブ投与群のうち、半数以上が1年時点で16週間隔投与を達成し、糖尿病黄斑浮腫に対する第III相臨床試験で初めての水準となる持続性を示す
  • ファリシマブは、網膜疾患の原因となる2つの異なる経路を標的とした、眼科領域における初のアンジオポエチン-2(Ang-2)とVEGF-A のバイスペシフィック抗体
  • ファリシマブの忍容性は概ね良好であり、新たな安全性上の懸念は示されず

 ロシュ社は本日、糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して開発中のバイスペシフィック抗体ファリシマブを評価した同一デザインの第III相グローバル臨床試験であるYOSEMITE試験およびRHINE試験の良好なトップライン結果を発表しました。両試験ともに主要評価項目を達成し、ファリシマブの8週間隔の固定投与群および個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群において、アフリベルセプトの8週間隔投与群と比較し、1年時点の視力の転帰において非劣性が示されました。ファリシマブの忍容性は概ね良好であり、新たな安全性上の懸念は示されませんでした。両試験はいずれも3群で実施され、参加者はファリシマブもしくはアフリベルセプトの導入期投与後8週間隔の固定投与群、またはファリシマブの導入期投与後個々の治験参加者に応じた最長16週間隔投与群のいずれかにランダム化割付けされました。

 両試験の副次的評価項目については、個別に投与間隔を調整したファリシマブ投与群において、1年時点で半数以上が16週間隔投与を達成し、これまでにDMEに対する新薬候補化合物で実施された第III相臨床試験の中では初めての水準となる持続性を示しました。

 両試験の詳細な結果は2021年2月にマイアミ・ミラー医科大学バスコム・パルマー眼科研究所で開催される医学シンポジウムAngiogenesis, Exudation and Degeneration 2021で発表されるとともに、各国の規制当局に対してDMEに対する承認申請が行われる予定です。

YOSEMITE試験およびRHINE試験について1,2,3
 YOSEMITE(NCT03622580)試験およびRHINE(NCT03622593)試験は同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第III相グローバル臨床試験です。糖尿病黄斑浮腫患者1,891名(YOSEMITE試験は940例、RHINE試験は951例)を対象とし、ファリシマブの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。両試験では、ファリシマブ 6.0 mgを導入期投与後個々の参加者に応じて最長16週間隔で投与する群、ファリシマブ 6.0 mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群、アフリベルセプト 2.0 mgを導入期投与後8週間隔固定で投与する群の3群が設定されました。3つの群全てにおいて、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(訳注:硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされました。
 本試験の主要評価項目は、1年時点におけるベースラインからの最高矯正視力(BCVA、メガネ等で矯正した場合を含め、視力表の文字を読む際に達成可能な最高の状態における視力)スコアの平均変化量です。副次評価項目は、安全性、個々の参加者に応じた投与間隔群の52週時点における4、8、12または16週間隔で投与した参加者の割合、52週時点における糖尿病網膜症の重症度がベースラインから2段階以上の改善した参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、及び中心領域網膜厚のベースラインからの変化量の経時変化が含まれます。

糖尿病黄斑浮腫(DME)について
 世界全体において、約2,100万人が罹患しているとされる糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症です4。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こります5。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えると共に、浮腫が生じます6。DMEはこの損傷した血管からの漏出とそれに伴う浮腫が黄斑部、すなわち読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる疾患です5,7。糖尿病の有病率が上昇するにしたがって、DMEの患者数は増加することが予想されます8。DMEは治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながります5,9。DMEは依然として大きなアンメットニーズがあり、より有効で持続性のある治療薬が求められています10

ファリシマブについて
 ファリシマブは眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり1、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としています11。Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになっています10。ファリシマブは、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されています10

参考情報
 ファリシマブの日本における開発は中外製薬が実施しており、国内からYOSEMITE試験に参加しています。

出典

  1. Roche data on file.
  2. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab (RO6867461) in participants with diabetic macular edema (YOSEMITE) [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03622580.
  3. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab (RO6867461) in participants with diabetic macular edema (RHINE) [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03622593.
  4. Yau JWY, et al. Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy. Diabetes Care. 2012;35:556-64.
  5. National Eye Institute. Facts about diabetic eye disease [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://nei.nih.gov/health/diabetic/retinopathy.
  6. American Optometric Association. Diabetic retinopathy [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.aoa.org/healthy-eyes/eye-and-vision-conditions/diabetic-retinopathy.
  7. All About Vision. Macula Lutea [Internet; cited 2020 November]. Available from: https://www.allaboutvision.com/resources/macula.
  8. Liu E, et al. Diabetic macular oedema: clinical risk factors and emerging genetic influences. Clinical and Experimental Optometry. 2017;100:569-76.
  9. Park SJ, et al. Extent of exacerbation of chronic health conditions by visual impairment in terms of health-related quality of life. JAMA Ophthalmol. 2015;133:1267–75.
  10. Sahni J, et al. Simultaneous inhibition of angiopoietin-2 and vascular endothelial growth factor-A with faricimab in diabetic macular edema. American Academy of Ophthalmology. 2019;126:1155–70.
  11. Khan M, et al. Targeting Angiopoietin in retinal vascular diseases: A literature review and summary of clinical trials involving faricimab. Cells. 2020;9(8):1869.

以上

  • Facebookのシェア(別ウィンドウで開く)
  • ポストする(別ウィンドウで開く)
  • Lineで送る(別ウィンドウで開く)
  • メールする(メールソフトを起動します)
トップに戻る