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2021年02月16日

ファリシマブの新たな第III相臨床試験により、 視力障害の主な原因である2つの疾患において、初めて治療間隔を最大4カ月まで延長し、治療負担軽減の可能性がある眼内注射剤であることが示される

News Summary

本資料は、中外製薬と戦略的アライアンスを締結しているエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社が2月12日(バーゼル発)に発表したプレスリリースの一部を和訳・編集し、参考資料として配布するものです。正式言語が英語のため、表現や内容は英文が優先されることにご留意ください。
原文は、https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2021-02-12.htmをご覧ください。
  • 糖尿病黄斑浮腫(DME)および新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)を対象とした4つの臨床試験において、ファリシマブを投与された試験参加者の約半数が、1年時点で4カ月の治療間隔を達成
  • ファリシマブを投与群された参加者の約4分の3が、1年時点で3カ月以上の治療間隔を達成
  • ファリシマブはいずれの試験においても中心窩網膜厚を含む解剖学的転帰の早期かつ一貫した改善を示す
  • 承認された場合、ファリシマブはnAMDに対して15年ぶり、DMEに対して約10年ぶりの新たなクラスの薬剤となる

 ロシュ社は2月12日、糖尿病黄斑浮腫(DME)および新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD、滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)とも呼ばれる)に対して開発中のバイスペシフィック抗体ファリシマブの4つの第III相臨床試験の詳細な結果を発表しました。これらの試験において、最長4カ月の複数の投与間隔によるファリシマブの投与群において、アフリベルセプトの2カ月間隔投与群と比較し、一貫して視力の改善における非劣性が示されました。DMEを対象としたYOSEMITE試験およびRHINE試験、nAMDを対象としたTENAYA試験およびLUCERNE試験において、ファリシマブの投与間隔延長可能と判断された参加者のうち、約半数が1年時点で4カ月間隔投与を達成しました。ファリシマブはDMEおよびnAMDを対象とした第III相臨床試験において、このような4カ月の治療間隔を達成した初の眼内注射剤です。さらに、投与間隔延長可能と判断された参加者の約4分の3は、1年時点で3カ月以上の治療間隔が可能でした。ファリシマブの忍容性は4つの臨床試験すべてにおいて概ね良好であり、新規または予期せぬ安全性上の懸念は確認されませんでした。

 試験の結果は、2月13日(土)にマイアミ・ミラー医科大学バスコム・パルマー眼科研究所で開催される医療シンポジウム「Angiogenesis, Exudation, and Degeneration 2021」で発表されました。

試験結果1,2,3,4

 DMEを対象としたYOSEMITE試験およびRHINE試験では、ファリシマブを2カ月間隔投与群または個々の治験参加者に応じた最長4カ月間隔(PTI: personalized treatment intervals)投与群の2つの投与レジメンを、アフリベルセプトの2カ月間隔投与群と比較して評価しました。PTI群の参加者は、疾患活動性に応じて1、2、3、もしくは4カ月間隔で治療されました。両試験ともに主要評価項目を達成し、ファリシマブは視力改善において一貫してアフリベルセプトに対する非劣性を示しました。YOSEMITE試験では、ベースラインからの平均視力改善効果は、ファリシマブPTI投与群および2カ月間隔投与群でそれぞれ+11.6文字、+10.7文字、アフリベルセプト群で+10.9文字でした。RHINE試験では、ベースラインからの平均視力改善度は、ファリシマブPTI投与群および2カ月間隔投与群でそれぞれ+10.8、+11.8文字、アフリベルセプト群で+10.3文字でした。

 両試験の副次的評価項目として、ファリシマブPTI群における、1年時点で3または4カ月間隔の投与スケジュールを達成した参加者の割合を評価しました。ファリシマブ PTI投与群の参加者うち、YOSEMITE試験で52.8% (n=151/286)、RHINE試験では51.0% (n=157/308)が1年時点において4カ月間隔投与を達成しました。加えて、ファリシマブ PTI投与群の参加者うち、YOSEMITE試験で21% (n=60/286)、RHINE試験では20.1% (n=62/308)が3カ月間隔投与を達成しました。これらをあわせると、ファリシマブPTI投与群の参加者のうち70%以上が、1年時点において3カ月以上の治療間隔が可能となりました。両試験において、ファリシマブの最長4カ月間隔投与群は、アフリベルセプトの2カ月間隔投与と比較して、中心窩網膜厚(CST)の顕著な減少が示されました。

 nAMDを対象としたTENAYA試験およびLUCERNE試験では、ファリシマブを、20週および24週時点における疾患活動性に基づき、2、3、または4カ月の固定間隔で投与した群を、アフリベルセプトの2カ月間隔投与群と比較して評価しました。両試験とも主要評価項目を達成し、ファリシマブは視力改善において一貫してアフリベルセプトに対する非劣性を示しました。TENAYA試験およびLUCERNE試験では、ファリシマブ投与群におけるベースラインからの平均視力改善効果はそれぞれ+5.8文字、+6.6文字、アフリベルセプト群では+5.1文字および+6.6文字でした。

 両試験では、ファリシマブ投与群のうち、1年時点で3または4カ月間隔の投与スケジュールで治療を受けた参加者の割合も評価しました。TENAYA試験の参加者の45.7% (n=144/315)、LUCERNE試験の参加者の44.9% (n=142/316)が、1年時点において4カ月間隔投与を達成しました。加えて、TENAYA試験では34% (n=107/315)、LUCERNE試験では32.9% (n=104/316)の参加者が3カ月間隔投与を達成しました。これらをあわせると、ファリシマブを投与された参加者の80%近くが、最初の1年間において3カ月以上の治療間隔が可能となりました。両試験において、ファリシマブの最長4カ月間隔投与群は、アフリベルセプトの2カ月間隔投与群と比較して、同程度のCSTの減少が示されました。

 4つの臨床試験結果は、DMEおよびnAMDの治療に対する承認検討の為に、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)を含む各国の規制当局に提出される予定です。

YOSEMITE試験およびRHINE試験について1,2

 YOSEMITE(NCT03622580)試験およびRHINE(NCT03622593)試験は同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第III相グローバル臨床試験です。糖尿病黄斑浮腫患者1,891名(YOSEMITE試験は940例、RHINE試験は951例)を対象とし、ファリシマブの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。両試験では、ファリシマブ 6.0 mgを導入期投与後個々の参加者に応じて最長4カ月間隔で投与する群、ファリシマブ 6.0 mgを導入期投与後2カ月間隔固定で投与する群、アフリベルセプト 2.0 mgを導入期投与後2カ月間隔固定で投与する群の3群が設定されました。3つの群全てにおいて、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(訳注:硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされました。

 本試験の主要評価項目は、1年時点におけるベースラインからの最高矯正視力(BCVA、メガネ等で矯正した場合を含め、視力表の文字を読む際に達成可能な最高の状態における視力)スコアの平均変化量です。副次評価項目は、安全性、個々の参加者に応じた投与間隔群の52週時点における4、8、12または16週間隔で投与した参加者の割合、52週時点における糖尿病網膜症の重症度がベースラインから2段階以上の改善した参加者の割合、視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、及び中心領域網膜厚のベースラインからの変化量の経時変化が含まれます。

TENAYA試験とLUCERNE試験について3,4

 TENAYA試験(NCT03823287)とLUCERNE試験(NCT03823300)は、同一デザインの無作為化多施設二重遮蔽第III相グローバル臨床試験です。新生血管を伴う加齢黄斑変性患者1,329名(TENAYA試験は671例、LUCERNE試験は658例)を対象とし、ファリシマブの有効性と安全性をアフリベルセプトと比較し評価しました。両試験では、ファリシマブ6.0 mgを導入期投与後、20週および24週時点に行う疾患活動性の客観的評価に応じて8、12、16週毎の間隔で固定投与する群、アフリベルセプト2.0 mgを導入期投与後8週間隔で固定投与する群の2群が設定されました。両群とも、治験責任医師や参加者の遮蔽化を維持するために、薬剤が投与されない来院日にはシャム投与(訳注:硝子体内投与の代わりに、針のないシリンジを局所麻酔下で眼球にあてる措置)がなされました。

 両試験の主要評価項目は、48週までのベースラインからの最高矯正視力(BCVA)スコアの平均変化量です。副次評価項目は、安全性、ファリシマブ群の2、3、4カ月間隔で投与を受けた参加者の割合、BCVAでベースラインから15文字以上の視力改善が認められた参加者の割合の経時変化、BCVAでベースラインから15文字以上の視力低下が避けられた参加者の割合の経時変化、および中心領域網膜厚のベースラインからの変化量の経時変化が含まれます。

糖尿病黄斑浮腫(DME)について

 世界全体において、約2,100万人が罹患しているとされる糖尿病黄斑浮腫(DME)は、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症です5。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こります6。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えると共に、浮腫が生じます7。DMEはこの損傷した血管からの漏出とそれに伴う浮腫が黄斑部、すなわち読書や車の運転に必要とされる明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる疾患です6,8。糖尿病の有病率が上昇するにしたがって、DMEの患者数は増加することが予想されます9。DMEは治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながります6,10。DMEは依然として大きなアンメットニーズがあり、より有効で持続性のある治療薬が求められています11

新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)について

 加齢黄斑変性(AMD)は、読書などの活動を行う際に必要とされる鮮明な中心視力に関わる眼の器官に影響を及ぼす疾患です12。滲出型加齢黄斑変性とも呼ばれる新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)は、AMDの進行型であり、急速かつ重度の視力喪失の原因となりうる疾患です13,14。異常な新生血管が黄斑下で無制御に増殖することで発症し、腫脹、出血、および/または線維化を引き起こします14。世界全体では約2,000万人がnAMDに罹患しており、60歳以上における視力喪失の主な原因となるとともに、高齢化の世界的進行による患者数の増加が見込まれています12,15,16

ファリシマブについて

 ファリシマブは眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり17、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としています17。Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになっています11。ファリシマブは、これらAng-2とVEGF-Aの2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されています11

参考情報

 ファリシマブの日本における開発は中外製薬が実施しており、国内からYOSEMITE 試験およびTENAYA試験に参加しています。

出典

  1. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab (RO6867461) in participants with diabetic macular edema (YOSEMITE) [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03622580.
  2. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab (RO6867461) in participants with diabetic macular edema (RHINE) [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03622593.
  3. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab in participants with neovascular age-related macular degeneration (TENAYA) [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03823287.
  4. Clinical Trials.gov. A study to evaluate the efficacy and safety of faricimab in participants with neovascular age-related macular degeneration (LUCERNE) [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03823300.
  5. Yau JWY, et al. Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy. Diabetes Care. 2012;35:556-64.
  6. National Eye Institute. Facts about diabetic eye disease [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://nei.nih.gov/health/diabetic/retinopathy.
  7. American Optometric Association. Diabetic retinopathy [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://www.aoa.org/healthy-eyes/eye-and-vision-conditions/diabetic-retinopathy.
  8. All About Vision. Macula Lutea [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://www.allaboutvision.com/resources/macula.
  9. Liu E, et al. Diabetic macular oedema: clinical risk factors and emerging genetic influences. Clin Exp Optom. 2017;100:569-76.
  10. Park SJ, et al. Extent of exacerbation of chronic health conditions by visual impairment in terms of health-related quality of life. JAMA Ophthalmol. 2015;133:1267-75.
  11. Heier JS, et al. The Angiopoietin/Tie pathway in retinal vascular diseases: a review. Retina-J Ret Vit Dis. 2021;41:1-19.
  12. Bright Focus Foundation. Age-Related Macular Degeneration: Facts & Figures [Internet; cited 2021 February]. Available from: https://www.brightfocus.org/macular/article/age-related-macular-facts-figures.
  13. Pennington KL, DeAngelis MM. Epidemiology of age-related macular degeneration (AMD): associations with cardiovascular disease phenotypes and lipid factors. Eye and Vision. 2016;3:34.
  14. Little K, et al. Myofibroblasts in macular fibrosis secondary to neovascular age-related macular degeneration-the potential sources and molecular cues for their recruitment and activation. EBioMedicine. 2018;38:283-91.
  15. Connolly E, et al. Prevalence of age-related macular degeneration associated genetic risk factors and 4-year progression data in the Irish population. Br J Ophthalmol. 2018;102:1691-5.
  16. Wong WL, et al. Global prevalence of age-related macular degeneration and disease burden projection for 2020 and 2040: a systematic review and meta-analysis. Lancet Glob Health. 2014;2:106-
  17. Khan M, et al. Targeting Angiopoietin in retinal vascular diseases: A literature review and summary of clinical trials involving faricimab. Cells. 2020;9:1869.

以上

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