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2019年11月08日

サトラリズマブ、米国、欧州に続き日本で視神経脊髄炎スペクトラムに対し製造販売承認申請

  • サトラリズマブはNMOSDに対する新たな治療アプローチとなる可能性
  • 単剤およびベースライン治療との併用療法の2本のポジティブな試験成績に基づく申請
  • 承認審査は優先審査の対象として実施

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:小坂 達朗)は、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体サトラリズマブ(開発コード:SA237)について、視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:neuromyelitis optica spectrum disorder)に対する製造販売承認申請を、本日、厚生労働省に行いましたので、お知らせいたします。サトラリズマブは、本年9月12日に希少疾病用医薬品の指定を厚生労働省より受けており、優先審査の対象となります。

 上席執行役員 プロジェクト・ライフサイクルマネジメント共同ユニット長の伊東 康は、「サトラリズマブはNMOSDの病態に関与している炎症性サイトカインであるIL-6シグナル伝達を阻害するようデザインされ、中外製薬独自のリサイクリング抗体技術により4週間隔の皮下投与が可能です。抗アクアポリン4抗体陽性および陰性を含む、NMOSD患者さん全体を対象に実施した臨床試験において、単剤、ベースライン治療との併用のいずれにおいても臨床的に意味のある治療効果を示しました」と述べるとともに、「このようにサトラリズマブが示した有効性と安全性は、新たな治療選択肢の提供に繋がると信じています。患者さんに1日でも早くこの新たな治療法をお届けできるよう、承認取得に向け取り組んでまいります」と語っています。

 今回の承認申請は、NMOSDを対象に実施された第III相国際共同治験SAkuraStar試験およびSAkuraSky試験の成績に基づいています。SAkuraStar試験はサトラリズマブの単剤療法、SAkuraSky試験はサトラリズマブのベースライン治療との併用療法の試験です。

 サトラリズマブはこれまでに欧州および米国にて承認申請しており、欧州医薬品委員会(CHMP)および米国食品医薬品局(FDA)が2020年中にそれぞれ承認勧告の判断および承認の判断を行う予定です。

※投与開始後2週目までは2週間隔投与、以降は4週間隔での皮下投与

【参考情報】

サトラリズマブについて  
サトラリズマブは中外製薬が創製した、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体です。視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD:neuromyelitis optica spectrum disorder)の病態に深くかかわっているとされるIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制することが期待されています。NMOSDの患者さんを対象とした2つの第III相国際共同治験において、ベースライン治療に対する上乗せ投与および単剤投与でそれぞれ主要評価項目を達成しました。これらの2試験は希少疾患に行われた大規模な臨床試験の一つです。サトラリズマブは、日本で視神経脊髄炎及び視神経脊髄炎関連疾患を対象として希少疾病用医薬品の指定を受け、欧州および米国においても同じ疾患群に対して希少疾病用医薬品の指定を受けています。また、2018年12月には米国食品医薬品局(FDA)からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けました。本年に欧州医薬品庁(EMA)およびFDAより承認申請が受理されています。

視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)について
NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患であり、永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じます。NMOSDの患者さんは、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積されます。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下などが現れます。症状の発生が致死的な結果となる場合もあります。NMOSDの3分の2以上の患者さんでは、病原性の抗体であるアクアポリン4(AQP4)抗体が検出されており、AQP4抗体はアストロサイトと呼ばれる中枢神経に存在する細胞を標的とし、視神経や脊髄、脳に炎症を引き起こすことが知られています1-4。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつあります5-8。2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎(NMO:Neuromyelitis Optica)の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの診断基準が提唱されました。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられています9。NMOSDに対する日本語訳として視神経脊髄炎スペクトラムや視神経脊髄炎関連疾患等が用いられています。

出典

    1. Jarius S, Ruprecht K, Wildemann B et al. Contrasting disease patterns in seropositive and seronegative neuromyelitis optica: A multicentre study of 175 patients. J Neuroinflammation 2012;9:14.
    2. Lennon VA, Wingerchuk DM, Kryzer TJ et al. A serum autoantibody marker of neuromyelitis optica: distinction from multiple sclerosis. Lancet 2004;364:2106-12.
    3. Marignier R, Bernard-Valnet R, Giraudon P et al. Aquaporin-4 antibody-negative neuromyelitis optica: Distinct assay sensitivity-dependent entity. Neurology 2013;80:2194-200.
    4. Takahashi T, Fujihara K, Nakashima I et al. Anti-aquaporin-4 antibody is involved in the pathogenesis of NMO: a study on antibody titre. Brain 2007;130:1235-43.
    5. Kimura A, Kishimoto T. IL-6: regulator of Treg/Th17 balance. Eur J Immunol 2010;40:1830-5.
    6. Lin J, Li X, Xia J. Th17 cells in neuromyelitis optica spectrum disorder: a review. Int J Neurosci2016;126:1051-60.
    7. Takeshita Y, Obermeier B, Cotleur AC, et al. Effects of neuromyelitis optica-IgG at the blood-brain barrier in vitro. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2016;4(1):e311.
    8. Obermeier B, Daneman R, Ransohoff RM. Development, maintenance and disruption of the blood-brain barrier. Nat Med 2013;19:1584-96.
    9. Wingerchuk DM, Banwell B, Bennett JL et al. International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders. Neurology 2015;85:177-89.

以上

本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部

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