ITソリューション部に所属する佐々木。研究開発領域で利用するアプリケーションの導入から運用までを担うグループのグループマネジャーとして、研究開発部門やロシュ社と共に大規模システムの導入に携わるなど、中外製薬のDXをリードしてきた。システム開発のプロの視点から、同社でビジネスの変革に挑む魅力を語る。

(インタビュイー:佐々木) 

 

※中外製薬公式note(https://note.chugai-pharm.co.jp/)より転載。記載内容・所属は2023年11月時点のものです

グローバルスタンダードなシステム構築を推進。創薬プロセスの再定義に向けて

デジタルトランスフォーメーションユニットに所属する佐々木。グローバル標準の大規模SaaSの導入やアプリケーションのクラウド移行を推進している。

 

「中外製薬の全社成長戦略のKey DriverであるDXをミッションに掲げるデジタルトランスフォーメーションユニットの中でも、私が所属するグループは、研究開発領域で使用されるプラットフォームやアプリケーションの企画や導入、開発、運用、保守を担う部署です。

現在は、臨床開発や製薬などのバリューチェーンの生産性向上をめざし、新たなソリューションの導入に取り組んでいます。これまで中外製薬では日本国内向けの固有システムなどを使用していましたが、新たなビジネス展開を視野に入れ、グローバル標準に対応したシステム構築をめざし、社内の研究開発部門だけでなく戦略的アライアンスを組むロシュ社とも連携しながら、独自の設定や機能の追加を進めているところです(佐々木)」。

 

同プロジェクトで佐々木が務めるのは、研究開発部門とシステム開発部隊とをつなぐ、いわば橋渡し役。双方と密にコミュニケーションを重ねながら、デジタル技術を活用した創薬プロセスの効率化に努めてきた。

 

「臨床開発などに携わるメンバーの要望をシステム上で実現することが私の役割です。海外とのやり取りも多いため、日常的に英語を使用しながら、必要な技術や製品、最適な設定や仕組みについて検討した上で開発を担当するパートナーやベンダーに具体的な要件を伝え、プロジェクトの進行を支援しています(佐々木)」。

 

これまで業界をまたいでシステム開発の最前線で活躍してきた佐々木。創薬DXに携わるやりがいについてこう話す。

 

「バリューチェーンを効率化することで、薬が早く患者さんに届くようになる。ITの立場から社会に貢献できるプロジェクトに参加できていることを誇りに思っています。

また、ヘルスケア産業はデジタル化の余地が多く残されている分野です。デジタル技術を駆使してビジネスを変革し、新たな価値を創造する過程に関われていることもやりがいにつながっています(佐々木)」。

創薬DXの可能性に導かれ、業界のデジタル化をリードする中外製薬へ

前職ではIT基盤の構築や運用支援に携わり、金融、通信、小売など複数の業界のプロジェクトを担当し、システム開発やプロジェクトマネジメントを経験してきた佐々木。中外製薬に転職するに至った経緯をこう振り返る。

 

「ITベンダーとしてではなく、事業会社でビジネスを生み出す当事者の立場でシステム開発に関わってみたいと考えていました。また、製薬業界には法規制など遵守すべき独自のルールが存在します。守るべきものを守りながら、変革を促進する攻めのデジタル技術と組み合わせることは難しいことです。だからこそ、そこに新たなイノベーションを生み出せるのではないかと感じていました。

製薬企業の中でも、当時からとくにDXに力を入れていたのが中外製薬。変革への意志はあっても実質的にDXを推進できていない企業が多い中、全社をあげて本気で改革に取り組んでいる点に惹かれ、入社を決めました(佐々木)」。

 

佐々木が入社したのは、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」のもとで全社DXが推進されているさなか。業界特有のビジネス要件に適応しながら、すでに始まっていた基幹システムの入れ替えやアプリケーションのクラウド移行に携わってきた。

 

「それまで金融などさまざまな業界のプロジェクトに参加してきましたが、人命に関わる業界である製薬業界は初めてです。システムの開発から導入に至るプロセスが法規定に則って厳密に管理されるなど、品質への意識の高さにまず驚きました。

同時に、デジタル推進は、スピード感も求められます。品質とスピードという、一見相反するふたつの要素を両立させることの難しさを痛感しました。周囲のサポートや研修制度を通じて業界のルールを学ぶ中で、チームとして自身の価値を発揮することの大切さをあらためて感じています。

一方私は、さまざまな業界でITプロジェクトの経験を積んできました。他にもいろいろな背景を持った専門家が社内にいます。適切な方法で社内の各分野の専門家らと連携してチームを効果的に機能させ、プロジェクトの成果を最大化していくことが、私の果たすべき責務だと考えています(佐々木)」。

独自のビジネスモデルが生み出す、中外製薬だからこそのベストプラクティス

前職でアメリカのグループ会社に出向し、RMソリューションの提案や導入を担当した経験のある佐々木。日本と欧米の組織の違いを知る立場から、中外製薬の魅力についてこう述べる。

 

「当社は国内のトップファーマでありロシュ・グループの一員でもあります。自主独立経営を維持し、独自性と多様性を重視してイノベーションに集中する独自のビジネスモデルを展開しているのが最大の強み。丁寧に業務を進行管理する日本らしい細やかさがある一方、欧米特有のスピード感や大胆さを兼ね備えている点に、大きな魅力を感じています(佐々木)」。

 

また、マネジャーとしてグループを束ねる佐々木。多様な人財が集まる同社ならではのおもしろさもあると言う。

 

「『この案件にはコンサルティングとシステム構築の両方の要素があるから、コンサル経験が豊富なあのメンバーとSIer出身のあのメンバーが最適だろう』といった具合に、各メンバーの得意分野と不得意分野を把握しながらチームを組成することができます。

これは、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが在籍しているからこそ実現できること。どのようにメンバーを組み合わせ成果へとつなげていくかにマネジャーとしての手腕が問われています(佐々木)」。

 

そうやって多様な人財が存分に力を発揮できるのは、風通しの良い職場環境があるからこそ。佐々木はこう続ける。

 

「性別や国籍、勤続年数によらず互いを尊重し挑戦を推奨する風土、上司と部下間の定期的な1on1、社員同士の感謝を見える化し全社で共有するツールなど、当社にはオープンな組織文化が浸透しています。部門を超えたコミュニケーションが取りづらいと感じたことも一度もありません(佐々木)」。

 

佐々木がグループマネジャーに任命されたのは、入社してからわずか1年半後のこと。平等に活躍の機会が与えられるのも同社ならではだ。

 

「予想よりも早いタイミングでマネジャー職に打診されたので、とても驚きました。性別や年次はもちろん、新卒と中途採用の区別なく、責任あるポジションを任せてもらえる会社だと思います(佐々木)」。

信じるのは、チームの力。IT専門家としての知見を中外製薬のビジネス変革の原動力に

新たなプロジェクトの立ち上げに意欲を示す一方、グループマネジャーとしてめざす姿についてこう話す。

 

「マネジャーにとって、自分の基準を部下に当てはめないことが重要だと感じています。自分と同じやり方を期待されると部下は苦しいだけですし、それぞれがバックグラウンドで培ってきた個性も失われかねません。どんどん任せて、このチームならではの成果につなげていけたらと考えています。

自分ひとりではできないことを実現できるのが、チームワークの醍醐味。新しいことや可能性の幅を広げることに対して、常に前向きでありたいと願っています(佐々木)」。

 

また、製薬業界で、中外製薬で自身が果たすべき役割に対するビジョンも明確だ。

 

「法規制を遵守することはもちろん大前提ですが、そこを過度に意識しすぎると、スピード感が損なわれてしまいます。守るべき規則はしっかり守った上で、ITの専門家として創薬プロセスをより効率的にしていくことが私の役割です。人間とデジタル技術のより良い関係のあり方を模索していきたいと考えています。

業界特有の進め方は、製薬業界に限らずどの分野にもあるものです。幸いなことに、当社にはEラーニングなどを通じて学ぶ環境が整っていますし、デジタル化や変革に対して積極的で、規制産業であることをハンディキャップに感じたこともありません。

むしろ、そこにデジタルを導入することに新しい価値があると思うので、業界のことを知らない部外者としてではなく、当事者として貢献できるよう、これからも経験を積んでいくつもりです(佐々木)」。