2026年03月04日

ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援

2025年報告

グローバルヘルス

中外製薬は、ブータンにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)*¹のさらなる進展に貢献するため、2021年からブータン子宮頸がん撲滅プロジェクトを支援しています。中外製薬からの支援金は、ブータン保健省が主導する国家がん検診プログラムの実施を補完する形で活用されています。

*1 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):すべての個人とコミュニティが、経済的困難に陥ることなく、あらゆる種類の必要不可欠で質の高い保険サービスを享受できる状態

  • 背景
    国連人口基金と中外製薬による第1フェーズのパートナーシップ*²の成果を基盤として、第2フェーズ*³では、子宮頸がん撲滅の加速に向け、検診および治療の質、診断精度の向上を目的にブータン保健省への支援を拡充しています。
    第2フェーズでは、サービス・ガイドラインの策定および制度化を通じて検診および治療の質の向上を図るとともに、診断精度の向上を目的とした細胞検査技師および病理医、検診・治療に従事する看護師、診断・治療の高度化を担う医師を対象とした人材育成を行います。
    具体的には、ブータン保健省の「国家子宮頸がん撲滅戦略」を効果的に実施できるよう「検診及び早期発見」、「診断及び治療」、「医療の質の保証及び研究」の3重点分野において取り組みを進めることで、医療システム全体の能力強化を図り、ブータンにおける子宮頸がんの予防および治療の大幅な改善を目指します。

  • 概要
    2025年は、ブータン全土における子宮頸がん検診および治療サービスの継続性を確保するとともに、臨床基準の制度化に重点を置いて実施されました。在職中の研修及び標準化されたガイドラインの整備を通じて、本プロジェクトでは、二次医療体制の構築を着実に進めています。

  • 成果
  1. 臨床基準の制度化および臨床的インパクト
    本プログラムは、「子宮頸部前がんに対するコルポスコピーおよび治療に関する実践ガイドライン」の全国的な普及を通じて、政策と現場実践との間に存在していた乖離を効果的に解消しました。具体的には、医療関係者の能力強化を目的として、9ヶ所の救急産科・新生児ケア・センターに所属する産婦人科医および専門看護師を含む計65名の医療従事者が、コルポスコピー、LEEP およびサーモコアギュレーション(補)に関する標準化された診療プロトコルを習得しました。これにより、対象となる9県において女性および少女を対象とした検診後フォローアップサービスの提供体制が確保され、コルポスコピーおよびLEEPサービスを受けるための移動に伴う患者の自己負担医療費の軽減に寄与しています。また、ガイドライン普及の過程において実施された実践的臨床研修の統合により、HPV陽性女性20名に対して、LEEPおよびコルポスコピーによる即時の診断および治療が行われました。

    補足:
    ・コルポスコピー(Colposcopy)子宮頸部を拡大して観察する検査
    ・LEEP(Loop Electrosurgical Excision Procedure)電気メスを使った子宮頸部の切除術
    ・サーモコアギュレーション(Thermocoagulation)熱凝固による子宮頸部の治療法

  2. サービス継続性の確保
    国家レベルで深刻化する医療資材不足に対応するため、HPV 検査キット4,500セットの調達および全国配布により、検診サービスは全国的に途切れることなく提供され、検診体制の維持・強化が図られました。

  3. 医療の質の保証および説明責任の強化
    長期的な臨床の質の確保を目的として、本プログラムは強固なモニタリングおよび医療の質の保証枠組みの構築に着手しました。具体的には、ゲレフ中央地域紹介病院およびツィラン県立病院において実施された臨床監査により、国家レベルのコルポスコピー基準への遵守状況について、初めて現場に即した評価が行われました。また、これらの評価を通じて、2026年に向けた重点介入分野として、標準化された画像記録の必要性、フォローアップの中断を防ぐための正式な紹介・連携経路の整備、及びコルポスコピーを担う看護師の認証制度の構築といった重要課題が明確化されました。

写真1

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写真: UNFPAブータン事務所提供
写真1: ブータンにおけるコルポスコピーと子宮頸部前癌治療の実践ガイドラインに関する啓発ワークショップの様子
写真2: 婦人科腫瘍専門医で指導医でありモニタリングチームのリーダーであるナムカ・ドルジ医師がゲレフ中央紹介病院の医療スタッフチームへ
   子宮頸がんに関する意識啓発を行う
写真3: ナムカ・ドルジ医師がブータンのブムタン病院でLEEP の実践トレーニングを行っている様子
写真4: 婦人科腫瘍専門医で指導医であるナムカ・ドルジ医師がゲレフ中央地域紹介病院にて婦人科医によるLEEP手術を観察している様子

 

参照
*2 ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援 ~2022-2023年 活動報告~ (2024年04月18日)
*3 ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援 2024年活動報告 (2025年03月18日)