2025年07月17日
患者さん中心で実現する希少疾患データベースの構築
血液凝固異常症レジストリ構築プロジェクト
中外製薬は「患者中心」の価値観のもと、日本血栓止血学会(JSTH)と共同で血液凝固異常症レジストリを構築しています。レジストリとは、特定の病気を持つ患者さんの症状や治療経過などの情報を継続的に収集・蓄積するデータベースのことです。
本プロジェクトは、希少な血液凝固異常症と共に生きる患者さんが、より良い医療を平等に受けられる社会の実現を目指しています。2021年から患者会、学会、企業(中外製薬)の3者が緊密に協力し、一人ひとりの経験や状況を体系的に理解するレジストリを作り上げてきました。2025年4月、ついに初めての患者さんデータ登録が実現しました。

埼玉医科大学総合医療センターの松本剛史先生(写真右 血液凝固異常症レジストリ運営委員長)と当社社員が、米国で開催された国際血栓止血学会で発表した際の様子
レジストリが切り拓く可能性
血友病などの血液凝固異常症は患者数が少なく症状も多様です。統一的な情報収集が診療向上に不可欠なため、このレジストリでは、疫学情報、臨床症状、合併症、QOLデータなどを体系的に収集し、実臨床における最適な治療選択に活かします。
加えて、本プロジェクトでは患者さん自身が日常の投薬記録や出血症状を記録できるアプリケーション(アプリ)も開発しました。これにより患者さんはご自身の治療経過を把握しやすくなります。患者さんがアプリを通じて入力したデータは、医療関係者と共有され、より良い治療法を共に考える基盤となり、治療の発展につながります。
「このレジストリは単なるデータベースではなく、患者さん一人ひとりの声を治療の発展につなげる架け橋です」(日本血栓止血学会理事)
産学患連携による真の協働
2018年1月にJSTH内に血友病診療連携委員会が設置されたことを皮切りとして、2021年3月には、JSTHと患者団体が連携する血液凝固異常症レジストリ運営委員会の運営体制が確立されました。患者視点からの貴重な知見を提供する血友病患者会との対話と協働がこのプロジェクトの重要な原動力となりました。そして、中外製薬はこのプロジェクトが目指す姿に共感し、参画することとしました。
技術的先進性と未来への展望
構築された本レジストリは医薬品の開発や安全性監視に必要な厳格な品質基準に対応しています。医薬品の承認申請や安全性確保のための公的な手続きにも活用できる設計となっているため、今後は治験*や市販後調査などへの活用が期待されます。将来は一般社団法人日本血液凝固異常症調査研究機構による運営へ移行し、本血液凝固異常症レジストリは、ナショナルレジストリとして、永続的に患者さんのQOL向上に貢献していきます。
*臨床試験(人を対象とした試験)のうち、製造販売の承認を得るための試験のこと。