2025年02月03日

カンボジアにおける遠隔眼科検診プロジェクト

~失明予防への新たな挑戦、カンボジアの地方医療に光を~

患者さん中心の持続可能な医療 グローバルヘルス 社会貢献 医療

カンボジアでは、眼科医療へのアクセスが都市部に偏り、地方住民が適切な診療を受けることが難しい状況が続いています。白内障は失明の主な原因として特に深刻で、早期発見と治療が急務とされています。この問題に取り組むため、中外製薬は特定非営利活動法人AMDA社会開発機構*1及び、一般社団法人en Vision*2との連携により、地方の住民にも質の高い眼科医療を届けるプロジェクトへ昨年に引き続き2度目の支援を行いました。

【プロジェクトの背景】
カンボジアにおける失明有病率は、一般人口で0.37%、50歳以上では2.5%と推計され、人口増加と高齢化の進展、平均寿命の延伸によって、失明者数は今後も増加していくことが予測されています。失明の原因の92.2%は回避可能であり、そのうち80.9%は治療可能、11.3%は予防可能です。しかし、眼科医のおよそ6割が首都プノンペンに集中しており、それ以外の地域では深刻な眼科医不足が問題となっています。人口100万人あたりの眼科医数は5.12人であり、WHO(世界保健機関)が推奨する10人の半分ほどです。このような背景からカンボジアでは、遠隔検診システムを活用した眼科検診が求められています。*3

【プロジェクトの詳細】
2024年8月6日から9月4日までの約1か月間、カンボジア・カンダール州内の2つの医療施設でプロジェクトが実施されました。対象となったのは、20歳以上の住民で、計164名が検診に参加しました。プロジェクトでは、スマートフォン装着型眼科医療機器を使用して視力検査や前眼部検査を実施。これにより、都市部にいる眼科医が遠隔地の患者をスクリーニングし、早期の治療につなげることが可能となりました。

【プロジェクトの結果】
このプロジェクトを通じて、白内障をはじめとする眼疾患の早期発見に繋がりました。特に白内障と診断された患者のうち3名が手術を受け、視力を回復するという成果を上げました。また、取り組みの中に啓発活動を加えたことで、眼疾患に対する理解が深まり参加者全体の意識が向上しました。一方で、経済的な理由から受診をためらう住民も多く、要受診者の医療機関受診率が低いという課題が浮き彫りになりました。

  • ⽇程:2024年8⽉6⽇(⽕)〜9⽉4⽇(⽔)
  • 対象:20歳以上のカンダール州住⺠
  • 実施項⽬

        検診:視⼒検査、視機能および眼位、前眼部検査、アンケート調査

        啓発:啓発教材視聴

 

  • 健診結果

       検診受診者:164名(有病率75.6%、うち⽩内障が最も多く254眼、眼科受診率3.6%)

       ⽩内障⼿術実施率:3.0%

       ⽩内障重症度:重症8%、中等症28%

  • 現地での検査の様子

提供:一般社団法人en Vision

提供:一般社団法人en Vision

カンボジアにおける遠隔眼科検診プロジェクトは、地方の医療アクセス改善に向けた大きな一歩となり多くの住民にとっての希望の光となりました。これからも眼科医療へのアクセスのさらなる充実に向け、この取り組みを支援して参ります。

*1 特定非営利活動法人AMDA社会開発機構

  

*2 一般社団法人en Vision

  https://www.envision.or.jp/blank-1

*3  JICA 眼科用遠隔診断サービス
  https://libopac.jica.go.jp/images/report/1000048533.pdf