2022年12月27日

ブータンにおけるUHC推進にむけての子宮頸がん撲滅プロジェクトの支援

~ 2021-2022年アウトリーチスクリーニングキャンプの結果報告 ~

患者さん中心の持続可能な医療 グローバルヘルス 社会貢献 医療

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)とは、すべての個人とコミュニティが、経済的困難に陥ることなく、あらゆる種類の必要不可欠で質の高い保健サービスを享受できることを意味します。中外製薬は、ブータンにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジのさらなる前進に貢献するため、2021年からブータン子宮頸がん撲滅プロジェクトへの支援を行っています。

背景
世界では毎年1,500万人が非感染性疾患(NCDs)により70歳未満で死亡しており、その86%が開発途上国で発生しています*1。ブータンも例外ではなく、NCDsは2019年に報告された死亡原因の71%*2を占めます。なかでも子宮頸がんはブータン女性が最も罹患するがんであり、ブータンの住民ベースのがん登録によると、年齢調整罹患率(AAR)は女性10万人あたり20.5人、死亡率は女性10万人あたり5.3人と、アジアで最も発生率の高い国の一つとなっています*。そこで、ブータンでは、子宮頸がんの増加傾向を踏まえ、子宮頸がんの撲滅に取り組んでいます。

中外製薬からの支援金は、ブータン保健省が主導する国家がん検診プログラムの実施を補完する形で活用されています。3つの地区(ハア、トラシガン、ペマガツェル)において子宮頸がんスクリーニングキャンプが実施され新しいスクリーニング方法、診断、治療サービスの使用に関するサービス提供者の能力開発に活用されました。

主な成果:
• 2021-2022年に11,121人の女性にスクリーニングを実施
• 対象女性の計89%にHPV-DNAスクリーニングを実施した結果、3.98%がHPV陽性であった 

その他の成果:
•対象女性の100%に血圧、BMIなどの非感染性疾患のスクリーニングを実施
• 40歳以上の全女性に乳がん検診を実施。分泌物、粘膜脱離、ポリープなどの異常はすべて記録され、さらなる治療を紹介された
• これら3地区の女性医療従事者の全員に対し、HPV-DNAスクリーニング技術およびスクリーニング情報を入力するためのオンラインDHS2プラットフォームの使用に関する研修を実施

受診者、医療従事者からの声:

図1:サクテン・プライマリー・ヘルスセンター保健アシスタント、ジェムキット・レプチャさん
「私はサクテン・プライマリー・ヘルス・センターに1年間赴任していますが、子宮頸がん検診のトレーニングを受けたことがなかったので、担当地域の女性に子宮頸がん細胞診を実施することが出来ませんでした。このアウトリーチ検診キャンプは、私に学ぶ機会を与えてくれ、自分の職場に戻ってからHPV-DNA検査を自分で実施する自信を与えてくれました」


図2:「最初は恥ずかしいという話を他の方から聞いていたので、受けるのをためらっていましたが、今では検診が女性の子宮頸がんを予防する最も効果的な方法の一つであることを理解しています。子宮頸がん検診を受けるのは初めてですが、自分の健康状態を知ることができますし、どんな結果であっても治療法がありますから、自信を持って受けることができます」(26歳、タングロン在住)


図3:「私はこれまで子宮頸がん検診を受けたことがなく、今の段階で子宮頸がんになるとは思ってもみませんでした。娘も村の代表者も、私に検査を受けるよう強く勧めてくれました。今朝のIECセッションで、それが自分のためだとわかりました」(60歳、ビドゥン・ゲウォグ在住)

Sriram Haridass UNFPA Representative India & Country Director Bhutan a.i.

UNFPAインド事務所代表・ブータン事務所長代行 Sriram Haridassからのメッセージ

UNFPAブータン事務所よりご挨拶申し上げます。UNFPAを代表して、子宮頸がん撲滅に向けたブータンの取り組みを支援するために、中外製薬からUNFPAに寛大な寄付をいただいたことに感謝いたします。子宮頸がんは予防可能であるにもかかわらず、依然として最も一般的ながんであり、若い女性のがん死亡の主要原因の一つとなっています。子宮頸がん検診へのアクセスは、困難な地形、まばらな人口、認知度の低さ、サービス提供者の能力の低さなどの理由により、依然として困難な状況にあります。そのため、中外製薬による3年間の支援は、UNFPAと政府のパートナーシップによる、地方や遠隔地の女性に対する検診サービスの強化に非常に役立っています。支援により、サービス提供者のスキルを強化し、アウトリーチ検診キャンプや、ケア全体の質を向上させる予定です。この支援は、がん予防に関する情報へのアクセスを強化するために2015年に設立された非政府組織であるブータンがん協会とのパートナーシップの強化にも充てられます。プロジェクトの実施により、子宮頸がん啓発への関心が高まりました。UNFPAとブータン王国政府のパートナーシップは1970年代初頭に遡りますが、中外製薬からの支援は、ブータンから子宮頸がんを撲滅するために我々が連携して行っている取り組みを大きく後押しすることでしょう。私たちブータンのUNFPA関係者は、この支援に本当に感謝しています。今後も引き続きご支援とご協力をお願いいたします。
カディンチェラ(ありがとう)。



*1 WHO Noncommunicable diseases
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases

*2 Annual Health Bulletin 2020, Ministry of Health, Bhutan.
https://www.moh.gov.bt/wp-content/uploads/ict-files/2017/06/health-bulletin-Website_Final.pdf

*3 Cervical Cancer Elimination - UNFPA Asia-Pacific 
https://asiapacific.unfpa.org/sites/default/files/pub-pdf/bhutan_final_16_12_21.pdf
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