2020年10月08日

リウマチ医療に関する産官学連携の国際展開推進事業

2018年9月~2019年の活動

患者さん中心の持続可能な医療 グローバルヘルス 社会貢献 医療

インドネシアは、ASEANの中でも最大の人口(2.4億人:世界第4位)と国土を持つ大国ですが、リウマチ分野の専門医は70名と極めて少なく、また、首都ジャカルタ周辺に偏在しているため、多くのリウマチ患者さんは、現在の日本における標準治療を受けられていないという問題を抱えています。さらに、結核などの感染症の蔓延地域であり、免疫抑制療法であるバイオ製剤の高度な安全管理を必要としています。

そこで、インドネシアリウマチ協会(IRA)全面協力のもと、日本の医師が持つ技術・経験等を現地の専門医に伝えることで、リウマチ医療水準の向上を目指す「リウマチ医療に関する国際展開推進事業」が慶應義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科によって思案され、厚生労働省により採択されました*。

当社は、本事業の構想段階より慶應義塾大学から相談を受け、アカデミアと企業が連携し、発展途上国の医療への貢献の可能性や実施していく上で想定される障壁について検討を重ね、下記の支援を実施しました。

1.パンフレットや自己注射スターターキット、練習用器具などの提供
バイオ製剤による治療に関して、日本の医師が患者さんに対して実際どのように指導・説明を行っているのか、また、バイオ製剤を使用する際に注意するポイントを説明するために、パンフレットや練習器具等を提供しました。

2.インドネシアにおけるシンポジウム開催(ロシュ)
ロシュインドネシアの協力により、日本・インドネシア両国におけるリウマチ・膠原病診療をテーマとしたシンポジウムの開催をサポートしました。両国での確定診断に伴う検査体制や治療薬の承認体制、治療介入時の薬効評価から副作用に対する知識や対応について議論が行われ、活発な情報交換が行われました。日本の医師からは「両国の間で乖離があって十分な診療体制が拡充されていないことに改めて気付かされました」というコメントを頂きました。

3.日本におけるバイオ製剤の工場見学
多くの疾患領域で主流となっているバイオ製剤の製造がどのような行程で行われているのか実際に見ていただくために、2018年に宇都宮工場の工場見学を実施しました。参加したインドネシアの医師には巨大なタンクをはじめ培養や精製の過程にも興味を持って見学いただき、日本の製造技術を体感いただくことができました。

2018年 宇都宮工場見学会

更に2019年浮間工場の見学会を実施しました。最新の抗体技術に関する講演も行い、活発な意見交換がなされました。また、工場での製造工程や厳しい管理体制について説明すると、インドネシアの医師からは「インドネシアでは漠然とバイオ製剤に対して不安を持つ患者さんがいます。実際に目で見て体験したことによって、どのように製造されているか、今後は自信を持って患者さんに説明することができます。」といった声をいただきました。

工場内を見学する様子

2019年 浮間工場見学会

参加者集合写真

本事業は2020年も採択を受けています。産官学連携の一役を担うことで、インドネシアにおける持続可能なリウマチ医療の実現と質の向上に貢献することを目指しています。

慶應義塾大学 鈴木勝也先生(リウマチ・膠原病内科)によるコメント
「事業を開始したきっかけは、日本では当たり前とされる治療が行われていない、インドネシアにおけるリウマチ医療の状況を知ったことです。その後、現地の方の強い熱意とニーズを受けてこれまで活動を続けて来ました。企業連携では、予想外に多くの皆さまに事業に賛同いただきました。二国間で異なるルールや様々な制限がある中で、特に中外製薬にはデバイスの提供や工場見学といった、日本の治療や技術を実際に体感できる機会を提供いただいたことに感謝しています。2020年度の活動では、インドネシア語の関節リウマチに関する教科書や一般内科医向けのポケットブックの作成、更には現地で初めての取り組みとなるSpA(Spondyloarthritis;脊椎関節炎)ガイドラインの作成、および臨床検査の拡充をサポートしていきたいと考えています。」

 

*厚生労働省が国立国際医療センターを窓口として「医療分野における国際貢献」を目的に、医療機関や企業などの国際展開を支援する事業です。「インドネシア共和国におけるリウマチ医療に関する医療技術等国際展開推進事業」 として慶應義塾大学が2018年に初めて応募し、採択されました。

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