医薬安全性本部がリアルワールドデータで拓く、新たな患者貢献の形

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中外製薬は全社でリアルワールドデータ※1の活用に取り組んでおり、今回は特に医薬安全性本部のプロジェクトメンバーに焦点をあて、その取り組みを取り上げます。
※1:日常診療にて収集された二次利用可能なデータ(電子カルテ、レセプト[診療報酬明細書]、健康診断、ウェアラブルデバイスなど、実際の医療現場で収集される膨大かつ多様な医療データの総称です)

 

中外製薬の医薬安全性本部は、「Personalized Safety Care」を核に、従来の治験や規制対応に加え、リアルワールドデータを活用したエビデンス創出を推進しています。この取り組みにより、医療現場における治療判断を支援し、患者さん一人ひとりに最適化された安全かつ有効な治療の提供を目指しています。

 

2024年、医薬安全性本部ではリアルワールドデータを用いて、血液腫瘍治療薬の80歳を超える高齢者層における安全性研究を医療従事者とともに開始しました。その研究結果は同年に国内外の学会にて報告、2025年に査読付き国際学術誌に公開されました。「80歳を超える高齢者層は多くの治験では選択基準から外れますが、リアルワールドデータを活用することによって情報を得られることがあります」と医薬安全性本部の担当者らは語ります。中外製薬の医薬安全性本部がリアルワールドデータで拓く、新たな患者貢献の形の具体的事例をインタビュー形式で紹介します。

 

取材実施日:2025年8月8日
取材場所:中外製薬株式会社 本社

※中外製薬公式note(https://note.chugai-pharm.co.jp/)より転載。記載内容・所属は2025年12月時点のものです。

対談者プロフィール

織田哲朗(中外製薬 医薬安全性本部 セイフティサイエンス第一部):
2020年11月キャリア入社、リアルワールドデータを活用したデータサイエンス関連の業務を担当。
(トップ画像右)

 

中西晋平(中外製薬 医薬安全性本部 セイフティサイエンス第二部):
2015年MRとして入社後、2020年10月に医薬安全性本部へ異動し、安全性戦略を策定・実行する業務を担当
(トップ画像左)

医薬安全性本部が掲げるPersonalized Safety Careとは?

中西 「Personalized Safety Care」とは、患者さん一人ひとりの特性や状況に応じた安全性に関するデータを提供することであり、個別化医療に資する取り組みです。治験で得られるデータだけでなく、実際の医療現場で収集される情報を活用することで、患者さんにとって、より安全で有効な治療提供のサポートや、安全性を予測する仕組みを構築することが最終目的です。患者さんの生活全体の価値を高め、患者中心(Patient Centricity)の医療への貢献が期待されます。

リアルワールドデータ活用の背景

織田 従来、医薬品の承認に利用される治験では、参加される患者さんの選択基準や除外基準が設けられるため、得られる治験結果から高齢者や合併症を持つ患者さんのデータが不足しがちでした。その結果、医療現場でそれらの背景を持った患者さんへ治療を判断するための情報が不足している場合があります。

 

中西 MR経験を持つ私としては、医療従事者にも患者さんにも安心してもらえるデータ創出ができないかという想いが強くあり、織田さんとともに実臨床データであるリアルワールドデータの活用を日々検討しています。

 

織田 リアルワールドデータを活用すれば、治験に含まれていなかった患者さんの情報や、日常診療における治療効果・医薬品の有効性と有害事象発現の実態評価につながる情報を得ることができ、医療従事者からの多様な医療に対するニーズを満たせる可能性があります。国内にはリアルワールドデータを含む医療ビッグデータを扱う企業が数社あり、目的に応じてデータを入手しています。

医療現場のクリニカルクエスチョンに応えたデータ創出事例

中西 私が担当している血液腫瘍に対する新規治療法の治験選択基準は18-80歳で、この血液腫瘍患者さんの20%以上を占めると言われる80歳を超える高齢患者層での情報は得られていませんでした。高齢者層での治療実態を明らかにできれば医療従事者も患者さんも安心して治療に望めるはずです。

 

織田 そこで、大学や病院の先生方と協業し、高齢者層における新規治療法の安全性に関する不足情報を明らかにすることを目的に、リアルワールドデータを活用した研究を実施しました。これは安全性部門主体の研究であり、一般的に安全性部門が行う使用成績調査などとは異なります。対象は、感染症・骨髄抑制関連事象です。解析の結果、80歳を超える高齢患者層への適用可能性やリスク管理方針の検討につながる示唆を得ることができました。

 

中西 この取り組みは、当初、中外製薬のMRを対象に社内資料として利用することを想定していました。しかし、社内からも社外に公開することで医療従事者へ安心して治療に臨んでいただくための有用な情報になる、という声が上がり、学会発表と論文化を見据えた研究として始動しました。2024年1月の研究開始から1年以内に研究成果を国内外の学会で発表し、先日、論文が査読付き国際学術誌に公開されました。

部門横断で生み出す、顧客への貢献

中西 日常診療の医療現場からの声やニーズは、MR時代に繋がりのあった営業本部の同僚や、全国のMRからの報告、本社マーケティング部門のメンバーから聞き取りました。医療従事者を通して得られる患者さんの声には、まだ顕在化していないニーズが含まれることが多く、これらを解決する取り組みが患者さん一人ひとりの治療につながると感じます。

 

織田 研究結果を医療従事者と患者さんに還元する際にも、他本部との連携は重要です。常に社内の血液がんの領域チーム全体で連携をして進めていたおかげで、研究を一緒に推進していただいた医師からの学会後速やかなウェブセミナー実施など、医療従事者へ広く情報を届ける座組がしっかりとできたプロジェクトだったと思います。

今後の展望

織田 個人的な発想ですが、患者さんや医療従事者からなど、医療現場からの情報収集をシステマティックにできないかと考えています。有害事象が発現して患者さんが苦しむ前に先手を打って危険を回避することが理想だと思っています。AIなどを活用して、いち早く危険性を予測できる体制をとれないかと思っています。

 

中西 私は、安全性に焦点を当てたこのような取り組みを主体的に実施し続けることで、中外の医薬安全性本部が目指すPersonalized Safety Careに繋がっていくと確信しています。医薬安全性本部には、織田さんのようなデータサイエンティストや私のようなMR経験者、メディカルドクターなど多様なバックグラウンドの社員が活躍できる土壌があります。専門にこだわらず、いろいろなバックグラウンドの方々と幅広い視点で新しい患者貢献の形を模索していきたいと思っています。

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