中外製薬株式会社とロシュ・ダイアグノスティックス株式会社(以下RDKK)。医薬品と診断薬という異なる領域で活躍する2社が、共創領域の探索を目的にワークショップを開催しました。今回は、このワークショップの企画・運営に携わった両社のメンバーに、開催の背景から当日の様子、そして今後の展望まで、たっぷりと語っていただきました。
※中外製薬公式note(https://note.chugai-pharm.co.jp/)より転載。記載内容・所属は2026年1月時点のものです。
対談者プロフィール
井上(中外製薬 メディカルアフェアーズ スペシャリティメディカルサイエンス部):
リアルワールドデータの利活用推進および医療技術評価を担当。2025年1月から同年12月まで、社内副業にてDXUデジタル戦略企画部にも所属し、パートナーエコシステム構築を推進。
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武藤(ロシュデジタルテクノロジー 中外リエゾン/中外製薬 DXU デジタル戦略企画部):
ロシュ社と中外の橋渡し役として、両社のデジタル・IT領域における連携を推進。2007年から2024年3月までRDKKに在籍
(上画像右)
石戸(RDKK ビジネスイノベーション本部):
診断薬事業における新規事業開発や外部パートナー連携の推進を担当。中外製薬との協業において、医薬品と診断薬の融合による新たな価値創出を目指す。
(上画像左)
「点と点を面に」診断と治療をつなぐ協業への想い
——今回のワークショップ開催に至った経緯を教えてください。
井上 きっかけは、中外製薬側DXUメンバーからRDKKオフィスを訪問し、互いのビジネス戦略を共有したことでした。その対話の中で、近しいビジョンや課題感を持っていることが分かり、それぞれが持つ強みを融合させることで、新たなイノベーションを創出できるのではないかという期待感が生まれました。
石戸 医薬品は医薬品、診断薬は診断薬と、それぞれが「点」として存在しているだけでは、患者さんに届けられる価値に限界があります。でも、両者が手を組んで「面」になれば、診断から治療、そしてフォローアップまで、シームレスな医療を提供できるのではないかと考えていました。
井上 まさにその通りで、診断と治療を別々に考えるのではなく、一つの流れとして捉えることで、患者さんにとって本当に意味のある医療が実現できると信じていました。そのためワークショップを企画・提案しました。
石戸 ご相談をいただいたとき、すぐに「これは面白い」と思いました。私たちも常々、診断だけで終わらせるのではなく、その先の治療まで含めた患者さんのjourney全体を考えたいと思っていましたので、この協業は両社にとって大きな可能性を秘めていると感じ、今回のワークショップ開催に至りました。
企業文化の違いを「強み」に変える
——準備段階で苦労されたことはありますか?
井上 正直に言うと、最初は企業文化の違いに戸惑うこともありました(笑)。中外はロシュ・グループの一員ですが、日本企業としての丁寧さやきめ細やかさを大切にしています。一方、RDKKさんはスピード感があって。
石戸 確かに、意思決定のプロセスや会議の進め方など、最初は「あれ?」と思うこともありました(笑)。でも、対話を重ねるうちに、それぞれの良さが見えてきたんです。
——具体的には、どんな「良さ」が見えてきたのでしょうか?
石戸 中外製薬さんの丁寧なアプローチは、本当に学ぶべきところが多かったです。一つひとつのステップを大切にして、関係者全員が納得できるまで議論を重ねる。そのプロセスがあったからこそ、質の高いワークショップが実現できたと思います。
井上 逆に、RDKKさんのスピード感には何度も助けられました。「まずやってみよう」という姿勢が、企画を前に進める原動力になりましたね。
——企画の方向性を大きく転換
井上 もう一つ大きな苦労が、企画の方向性を途中で大きく変更したことです。当初は具体的な案件、例えば大学のリアルワールドデータをベースに議論を進める予定でした。より現実的で進めやすいだろうと。
石戸 でも、「今回は新しい領域を作って、変えていくことに重点を置いた方がいい」という意見をいただいて。6月開催予定だったのを延期して、企画を一から再構築することになりました。
井上 結果的には大正解でしたね。現実的な話だけでなく、夢やパッションで語ることの楽しさ、そういう小さな成功体験を参加者に持ってもらえたと思います。
熱気に包まれた4時間 ワークショップ当日
——当日の様子を教えてください。
武藤 会場に入った瞬間から、独特の熱気を感じました。両社から集まったメンバーは、営業、マーケティング、メディカルと、本当に多彩な顔ぶれで。普段は別々のフィールドで活動している人たちが、この日は一つの目標に向かって集結したんです。
石戸 4時間のワークショップでしたが、あっという間でしたね。議論が白熱して、予定時間を超えそうになることもありました(笑)。
——どんな議論が交わされたのでしょうか?
井上 「診断と治療をどう連携させるか」「患者さんにとって本当に必要な情報は何か」「医療現場で実現可能な仕組みとは」——こうしたテーマについて、本当に深く議論しました。
武藤 印象的だったのは、参加者全員が「患者さんのために」という共通の軸を持っていたこと。企業の枠を超えて、一人の医療人として真剣に向き合う姿勢が、会場全体に満ちていました。
——具体的に、どんなアイデアが生まれましたか?
井上 診断から治療までのシームレスな患者サポートの仕組み、医療従事者向けの教育プログラム、新しい情報提供の方法など、複数の具体的なアイデアが生まれました。どれも、両社の強みを掛け合わせることで初めて実現できる取り組みです。
武藤 特に嬉しかったのは、「これ、本当に実現できそうだね」という声が多く聞かれたこと。夢物語ではなく、実際に形にできるアイデアが生まれたことに、大きな手応えを感じました。
—ワークショップを通じて、新たに発見したことはありますか?
井上 やっぱり同じ課題感を持っていたんだなと実感しました。例えば、検査の精度によっては、まだ精度が低くて中外製品がアプローチしきれていない患者さんがいるかもしれない。検査のタイミングも、投与後なのか投与前なのか、制度上の問題もあって。
石戸 その課題について、「じゃあ何ができて何ができないのか、今の制度では」という具体的な議論ができたのが大きかったですね。
生まれた「つながり」が、次の価値を生む
——ワークショップを終えて、どんな変化がありましたか?
井上 一番大きな変化は、人と人とのつながりが生まれたことです。ワークショップ後も、両社の担当者間でコミュニケーションが続いていて、「あのアイデア、こう発展させられるんじゃない?」といった会話が日常的に交わされるようになりました。
石戸 本当にそうですね。以前は「同じグループでも少し遠い存在」という意識があったかもしれませんが、今は「同じ目標に向かうパートナー」という感覚が強いです。この関係性こそが、今回のワークショップで得られた最大の財産だと思います。
武藤 今回の協業は、私たちロシュ・グループが掲げる「診断から治療まで一貫して患者さんに向き合う」という理念を、改めて体現する機会になったと思っています。グループ内では他国でも診断薬と医薬品部門の連携が進められていますが、中外製薬が持つ創薬の強みと繋がれることは、他の地域では見られない、より深いレベルでの連携の可能性を秘めています。この日本発の協業モデルが、将来的には世界の患者さんに大きなインパクトを与えられると期待しています。
——今後、どのように展開していく予定ですか?
井上 まずは、ワークショップで生まれたアイデアを一つひとつ形にしていくことですね。すでに動き始めているプロジェクトもあります。
石戸 そして、今回の取り組みを他の疾患領域にも広げていきたいと考えています。この協業モデルが、業界全体のスタンダードになれば、もっと多くの患者さんに価値を届けられるはずです。
「点と点を面に」する挑戦は、まだ始まったばかり
石戸 今回のワークショップは、ゴールではなくスタートです。医薬品と診断薬という「点」を「面」にする取り組みは、まだ始まったばかり。でも、その先に見えるのは、患者さんにとってより良い医療の未来です。私たちの挑戦を、ぜひ応援していただけたら嬉しいです。
井上 企業の垣根を越えて、患者さんのために何ができるか。その答えを探し続けることが、私たちの使命だと思っています。今回の協業が、業界全体のモデルケースになることを願っています。