グローバルイノベーションをつなぐ現場:中外製薬U.S. Partnering Officeの取り組み
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米国サウスサンフランシスコで始動した中外製薬のU.S. Partnering Officeは、当社のグローバルなパートナリングネットワークの一員として、米国の先端サイエンスとの接点を広げています。同チームはAndrew Wong(Head of Chugai Partnering, U.S.)に率いられ、バイオテック・スタートアップ、大学・研究機関の研究者、ベンチャー投資家との関係構築を進めています。本記事では、Andrew Wongと、東京本社・事業開発部の松田穣(Search & Evaluationグループマネージャー:Global Head of Search & Evaluation)が、それぞれの視点で中外のグローバルパートナリングを語ります。
バイオテックの中心地で踏み出す新たな一歩
開設から約半年、中外製薬のU.S. Partnering Officeは、米国ベイエリアのライフサイエンス・エコシステムにおいて存在感を高めています。
「私たちのミッションは、米国アカデミアの革新的な研究者、バイオテクノロジー企業、ベンチャー投資家とのパートナーシップを見いだし、構築することです」と、Wongは語ります。「これらのパートナーシップを通じて、抗体、中分子創薬プラットフォームSnipeTide™、低分子という中外の創薬基盤の補完に繋げていきたいと考えています」
Wongのチームは日々、研究者との面談、学会への参加、研究施設の訪問、スタートアップ創業者やベンチャーキャピタリストとの対話などを通じて、エコシステムとの関係を深めています。有望な機会を見いだした際には、日本の研究開発部門やパートナリングチームと連携し、評価、提携スキームの検討を行い、双方にとっての価値創出を進めています。
松田は「求めるのは、中外製薬の強みとシナジーを生み出せる技術です。私は中外グループ全体の技術探索・評価活動を統括する立場でAndrew WongのU.S.チームと連携しています。加えて、中外の疾患領域戦略に合致するアセットの探索も行っています」と説明します。
協働が生む強み:ロシュ・グループにおける中外製薬
中外製薬はロシュ・グループの一員ですが、独自の研究開発およびパートナリング戦略に基づいて活動しています。
「私たちのモデルのユニークな点は、中外製薬として独自に研究開発を進める強みと、ロシュ・グループの一員として、製品をグローバルに展開できる強みの双方を持っていることです。パートナーからみると、創薬から開発までのバリューチェーン全体にわたる強みを持つ中外のチームと協働しながら、ロシュ・グループを通じて有望なサイエンスをグローバルな機会につなげられる可能性があります」とWongは説明します。
その実績を示す例が、中外製薬が創製し、その後、ロシュを通じてグローバルに展開された血友病に対するバイスペシフィック抗体医薬品です。これは新規のパートナーとも再現し得るモデルであり、中外製薬の創薬イノベーションが世界中の患者さんの生活の向上に貢献する可能性を示しています。
なぜ中外製薬なのか:同じミッションへとつながる二つの歩み
バイオテック、大手製薬企業、ベンチャーキャピタルにわたるキャリアをこれまで歩んできたWongは、今回、中外製薬に参画した理由を、世界トップレベルのサイエンス、オープンイノベーションへの強い注力、そして新たな米国拠点を通じてグローバルパートナリングを強化しようとする中外製薬の姿勢にあったといいます。「この方向性は私の経験と非常によく合っており、すぐに貢献できると感じました」。さらに、高く評価されている中外製薬の抗体エンジニアリング技術と低分子創薬技術、他社と差別化された中分子創薬技術、そして、会社全体としての協働的なチームワークが、米国パートナリングオフィスのグローバルネットワーク活動を強固にするとしています。
一方、松田の歩んできたキャリアは異なりますが、最終的には同じミッションへとつながりました。中外製薬の研究部門で10年以上にわたり抗がん剤の開発プロジェクトをリードし、その間にGenentech社への出向も経験しました。その後、松田は自社の研究活動を異なる視点から捉える必要性を感じ、2021年末から始まった中外ベンチャーファンド(CVF)の設立プロジェクトを担います。「CVF設立プロジェクト以来、社外に目を向ける機会が広がりました。」「この経験がきっかけとなり、現在のグローバルパートナリングの仕事につながっています」と松田は語ります。
パートナリングの推進にあたっては、地域や文化を越えた緊密な連携が大切だという二人。「何より誠実であることが、課題に対して生産的かつ効率的に向き合うことにつながります」とWongと松田は語ります。
Wongは中外の企業カルチャーを「部門を越えて非常に協働的で、チーム志向の強い会社」と評価し、それは長期的な成功にとって重要だと指摘します。
米国エコシステムが注目する潮流
Wongは、米国における創薬を形づくるトレンドを注視しています。中外製薬の抗体技術の強みであるバイスペシフィック抗体やマルチスペシフィックT細胞エンゲージャーのほか、タンパク質分解誘導、RNA治療、遺伝子編集の領域で活発な動きがあると見ています。そして、最大の話題はやはりAIです。
「AI創薬や、医薬品開発プロセス全体におけるAI活用をめぐって、非常に大きな関心が集まり、議論、研究が盛んに行われています。ライフサイエンス以外の分野では、大手AI企業のIPO発表が相次いでいます。この勢いは必然的に、ライフサイエンス分野にもさらに波及していくでしょう」とWongは説明します。
エコシステムへの本格的な参画
6月、U.S. Partnering Officeはその開設を祝うオープニングセレモニーをベイエリアで開催し、バイオテック、アカデミア、ベンチャーキャピタルの関係者に加え、中外製薬のリーダーが集まりました。このイベントでは、中外製薬のパートナリングにおけるビジョンと、イノベーションへのコミットメントが示されました。
また中外製薬は、2026年5月にUC Berkeley を代表するバイオテックスタートアップ向けインキュベーターである Bakar Bio Labs の Industry Affiliate Program に参加しました。Bakar Bio Labs は、ラボスペースの提供やベイエリアの幅広いイノベーションコミュニティへのアクセスを通じて、初期段階のライフサイエンスベンチャーを支援しています。Industry Affiliate として、中外製薬は入居するスタートアップチームと関わり、科学およびエコシステム活性化の取り組みに貢献しています。
「ベイエリアは世界でもっともダイナミックなライフサイエンス・エコシステムの一つであり、この提携により、革新的なアカデミアの研究者やそこから生まれる企業が追求する大胆なサイエンスに直接アクセスできます。この関係がもたらす交流と発見に期待しています」とWongは語ります。
未来のパートナーへのメッセージ
中外製薬とのパートナリングを検討される方々に向けて、Wongはシンプルなメッセージを示します。「私たちは、卓越したサイエンスに取り組むグループと早い段階から対話したいと考えています。科学的な深みを持ちながら、アイデアを患者さんにとって意味のある解決策へと発展させるため、パートナーと緊密に連携することを大切にしています」
長年研究側にいた経験を持つ松田は、中外製薬のパートナリングについて「私たちのスタイルは、他の大手製薬企業とは異なるユニークなものです。研究活動とのシナジー創出を重視しているため、研究部門の声が強く反映されます。私たちの目標は、単に契約プロセスを早めることではなく、パートナーとともに質の高い科学的成果を追求することです。双方が納得し、最終的に患者さんに意味のある価値を届けることができるのであれば、それがもっとも重要な目標です」と語ります。
挑戦すること、そして誠実であること。中外製薬にとって、パートナーシップは単なる取引ではなく、ともに変革につながる価値を築くためのコミットメントです。