開発の早期から市販後まで――独立した専任部門が担う、医薬品の安全性という責務
医薬品開発において、有効性とともに重要になる安全性。中外製薬でその責務を一手に引き受ける医薬安全性本部では、開発の早期段階から市販後まで継続的に評価を行っている。
青木 早期開発段階を担当するのが私の所属するセイフティサイエンス第一部です。非臨床試験の結果や類薬の情報をもとに、初めて人に投与する際のリスクの有無や内容、それに対する安全性対策の立案、安全性の観点からの開発継続の可否までを評価・検討します。
私はそこで、がん領域における開発品のプロジェクトチームの安全性の代表者であるSSL(セイフティサイエンスリーダー)、およびSSLとともに安全性リスクの評価及び安全対策の立案を実施するSS(セイフティサイエンティスト)を担当しています。
また、安全性部門のMD(メディカルドクター)として早期開発から市販後まで横断的に臨床経験を活かした医学的視点による安全性管理を行うことも私の役割です。社内外の専門家からの医学情報を、医師ではないメンバーにわかりやすく伝えること、専門領域を中心に他部門を含めた社内からの相談対応も行っています。
御手洗 早期開発の次のフェーズを担当するのが、私が所属するセイフティサイエンス第二部です。ここでは、患者さんを対象に行う第II相、第III相の臨床試験から、薬が実際の臨床現場に出た後の安全対策を検討し、実行します。治験のデータや類薬などの市販後情報をもとに、副作用など実臨床導入時に懸念される課題を特定し、他部署と連携しながら安全対策を立案します。
その中で私は、市販後の抗がん剤のSSLとして、どうしたら適切に安全性情報を提供できるか、副作用の予測・予防の観点から、どのようなデータがあればより良い治療選択や治療継続に貢献できるかなどに取り組んでいます。
このほか、データベース管理を担う安全性データマネジメント部、本部全体のガバナンスを担う安全性推進部を合わせた4つの部署が連携して、「その仕事 その判断の先に、患者さんはいますか」という共通認識を胸に、安全に薬を届けるため業務にあたっています。
中外製薬の安全性に対する姿勢は、社内での部門のあり方や活動フェーズに表れている。
御手洗 医薬安全性本部を独立した部門として設置し、開発のきわめて早い段階から安全性に深く関与して適正使用のため活動しています。「治験以前の段階で予測できれば、有害事象は抑えられる可能性がある」という仮説のもと、さまざまな取り組みを進め、その中で生じた課題や懸念事項を市販後のフェーズにも知見としてフィードバックし、早期と後期が協業する流れを作っています。
また、積極的に患者さんや臨床現場のためになる情報を創出していこうという文化が根付いているところも、中外製薬ならではの安全性の魅力だと感じています。
青木 医薬安全性本部をはじめ社内には、医師や薬剤師だけでなく多様なバックグラウンドを持つ人財が集まっています。それぞれの専門性が尊重される多様性も、私たちの強みですね。
キャリア入社と新卒入社。ともに惹かれたのは、中外製薬の「安全性」に対する姿勢
もともと消化器内科の臨床医としてキャリアをスタートした青木。その後、大学病院や国立がん研究センターでがんや早期臨床試験について学び、がん領域での研究も経験した。さらには厚生労働省での行政経験を経て、中外製薬に入社した。
青木 臨床、研究、行政を経て、今度は薬の開発を通じてより多くの患者さんに貢献したいと、製薬企業への転職を決意しました。中外製薬を選んだ決め手は、私の専門であるがん領域に強みがあること、そして何より安全性に対する姿勢です。
薬の有効性も安全性が確保されて初めて意味を持つため臨床医時代から安全性を重視してきたこともあり、医薬安全性本部のMDの募集を見つけた時には迷わず応募しました。
一方、薬学部を卒業後、新卒で中外製薬に入社した御手洗。製薬会社と言えば臨床開発のイメージが強い中、惹かれたのは安全性の領域だったと言う。
御手洗 医薬品の有効性が「表」の面だとしたら、安全性はその「裏」を支える重要な領域です。先ほどお話ししたように、当社は安全性に関する部署が独立して業務を行っています。そこに興味を持ち、入社を決めました。
最初に配属されたのは安全性推進部。そこで規制の背景や安全性業務の全体像を学べたことが、現在のセイフティサイエンス第二部での実務にも活き、海外の関係者との調整や業務改善に取り組む上でも役に立っています。
入社して印象的だったのは、温かく風通しの良い社風だと2人は口をそろえる。
御手洗 若手でもどんどん業務を任せてもらえますし、「こういうことをやりたい」と手を挙げれば背中を押してくれる風土があります。また、皆さん温かく、誰にでも話しかけやすい雰囲気です。グループの垣根を越えて情報交換する機会も多く、多様な知見に触れることができています。
青木 私も、面接時に感じた柔らかい雰囲気は本物だったと入社後に実感しました。社員皆が「患者さんのために」という意識を持って仕事をしているので、どんな相談にも親身に乗ってくれます。モチベーションを高く維持できて働きやすい環境ですね。
薬を待ち望む患者さんのために。臨床現場を知るMDをはじめ、チーム一体で挑む
これまで印象に残っている仕事として、御手洗は現在の部署への異動直後に担当した薬の承認申請を挙げる。
御手洗 医薬品は承認申請から承認され病院に導入されるまで約1年を要し、導入後も長期的な視点で安全対策を練る必要があります。とくに承認申請の業務では、短期間でPMDAと医薬品の安全性について議論をするため、質・スピード両方が求められる、セイフティサイエンスの結晶とも言える重要な業務です。当時は一メンバーでしたが、他部署との連携やオピニオンリーダーの医師との折衝など、SSLに近い業務を経験させてもらいました。
承認にあたっては当局から安全性に関する照会を受けますが、どんなに薬の有効性が高くても、ベネフィット・リスクのバランスが認められなければ世に出すことはできません。私たちがしっかりデータを示して安全対策を講じなければ、待っている患者さんに薬を届けられないという責任を強く感じました。
そうしたプロセスを経て、薬が無事承認された時の達成感は格別でした。承認申請には多くの人が関わることも学び、この経験を通して、SSLに挑戦したいという気持ちが芽生えました。
早期開発を担当する青木は、がん領域ならではの、病気の進行や病態を踏まえた判断の難しさに直面したと振り返る。
青木 早期開発の中で、薬との因果関係や重篤度の評価が重要になる局面がありました。そこで、臨床経験のあるMDとして医学的視点から評価を行い、適切な判断に寄与できたのは良い経験でした。
検査値1つとっても、正常か異常かだけでなく、その数値が示す臨床的な意味、たとえば数値が変動した要因やそれに伴うリスクまで読み解く必要があります。薬の影響なのか、病気の進行によるものなのか、まったく別の要因なのか。それらを突き止める上で、これまでの経験が役立っています。
このように、MDがチームに存在することは中外製薬の医薬安全性本部の大きな強みとなっている。
御手洗 たとえば医療従事者向けの資材を作成する際に、「この表現は現場では伝わりにくいよ」「こういう検査情報があると使いやすいよ」など、臨床現場を知るMDならではの視点で助言をもらえます。私たちにとっても発見が多く学びがあり、ありがたい存在です。青木さんは人柄も穏やかで、オフィスにもよくいらしているので、すれ違った時などに気軽に相談に乗ってもらえるんです。
青木 ありがとうございます。私はチームの一員として建設的に相談や議論ができる存在でありたいと思っていて、声をかけやすい雰囲気を作ることを普段から心がけるようにしています。そうした姿勢が役立っているのは、とても嬉しいですね。
また、臨床に加えて研究者としてのバックグラウンドも持っています。非臨床試験のデータと臨床現場のニーズの双方を理解しているからこそ、両者をマッチさせた意見が出せることも貢献できる要因になっているのではないかと思います。
この仕事をしていてやりがいを感じる瞬間を、2人はこう語る。
御手洗 現場に立つMRの皆さんからの「この資材が役に立ったよ」「あの問い合わせに回答してくれて助かったよ」といったフィードバックは大きな励みになります。患者さんと接する機会は少なくとも、現場の役に立てていると実感できて嬉しいですね。
青木 早期開発、とくに臨床試験を行う前は、開発品の想定されるメカニズム、非臨床試験の結果や類薬の情報だけをもとに、副作用の発現予測やその対策を検討しなくてはなりません。
また、安全性を担保しながらどこまで対策を講じるべきかのバランスにも悩みます。そうした難しい状況の中で、患者さんの安全はもちろん、医療現場の実情や負担感も考慮しながら最適な判断ができた時にやりがいを感じます。
成長を後押ししてくれる環境で、変化を恐れず患者さんのために努力できる人と働きたい
大きな責任を伴う業務に日々邁進する青木と御手洗。それを支えているのは、働きやすさや成長を後押しする中外製薬の魅力だ。
御手洗 医薬安全性本部は産休・育休の取得にも理解があり、昨年11月に私が育休から復職した際もチームの皆さんが温かく迎え入れてくれました。
子どもの体調不良など、家庭の事情で急に休む場合もチームの皆でカバーし合う助け合いの雰囲気があり、たいへんありがたく思います。尊敬できる先輩方や後輩に恵まれ、中外製薬で働いていて良かったなと実感しています。
青木 私は英語学習への補助制度に助けられています。業務では高い英語力を求められる一方で、そのための自己研鑽もしっかり支援してくれる点はありがたいですね。
また私は、会社の承認を得て「兼業」という形で月1回の臨床診療を行っています。
あくまで業務に支障がない形を前提とした制度ですが、兼業によって現場感覚を失わないことが、本業の安全性業務にも良い影響を与えていると考えています。
そんな中外製薬で活躍できる人財とは。共に働きたい仲間について、2人はこう話す。
青木 やはり一番は、患者さんに安全に薬を届けることを大事にする人です。そして、業務に求められる知識など、自己成長のために努力できる人。MDとしては、チームの一員として建設的に議論できることだと思います。
御手洗 私も同じです。外部環境はどんどん変化しています。過去を踏襲するのではなく、最適な方法を常に模索し、変わることを恐れない人が、より安全性の業務を楽しむことができると思います。
患者さんの安全という絶対的な使命に向き合い、変化を恐れず、最適解を追求する2人。自身の未来もしっかりと見据えている。
御手洗 同じ疾患の患者さんに同じ薬を投与しても、副作用の出方は異なります。その違いが生じるメカニズムを解明し、早期から副作用の予防や軽減ができる情報を提供することが重要だと考えています。患者さんのより良い治療選択に寄与できるデータ創出に注力していきたいです。 また、実務担当の目線から、業務の質とスピードをより高める体制構築についても提案できたらと考えています。
青木 最終的にめざすのは、副作用が出てから対処するのではなく、サイエンス力を向上して副作用の予測・予防をすることだと考えています。難しい挑戦ですが、他部署とも連携しながら取り組んでいきたいです。
また、薬の安全性は患者さんにとって本当に大事なことだからこそ、そこに貢献するMDの仕事の魅力をもっと発信したいと思っています。今回のインタビューのような機会を通して、新たなMDの仲間が増え、共に中外製薬の安全性の底力を高めていけたら嬉しいですね。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです