中外製薬のニュースリリースは、当社関連の最新情報をステークホルダーの皆様にお伝えするために実施しています。医療用医薬品や開発品の情報を含む場合がありますが、報道関係者や株主・投資家の皆さまへの情報提供を目的としたものであり、これらはプロモーションや広告、医学的なアドバイス等を目的とするものではありません。
2026年02月20日
- 医薬品
- 研究開発
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する国内初の再生医療等製品「エレビジス点滴静注」国内発売のお知らせ
- 治癒困難で希少な遺伝性の筋疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する国内初の再生医療等製品として発売
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーのうち、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者さんが対象
- エレビジスは1回の投与で疾患の進行に伴う不可逆的な筋障害が生じる前にDMDの原因となるジストロフィンの欠損を補うよう設計された治療法
中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長 CEO:奥田 修)は、2025年5月13日に条件及び期限付承認に該当する製造販売承認を取得した「エレビジス®点滴静注」[一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク](以下、エレビジス)について、本日、薬価収載され、販売を開始したことをお知らせいたします。エレビジスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD: Duchenne muscular dystrophy)の治療を目的とした再生医療等製品であり、投与対象は、DMDのうち、エクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体の欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性である3歳以上8歳未満の歩行可能な患者さんです。
代表取締役社長 CEOの奥田 修は「DMDは幼少期に発症し、徐々に筋力が低下していくことで日常生活に大きな影響を及ぼす疾患です。DMDと診断され、新たな治療法の登場を待ち望んでこられた方々とそのご家族にエレビジスをお届けできることを心より嬉しく思います。エレビジスの治療を受けられる方々の安全を最優先に、適正使用の推進に努めてまいります。また、エレビジスの長期の有効性と安全性の確認のため、製造販売後の臨床試験および全症例を対象とした使用成績調査の実施に取り組んでまいります」と語っています。
今回の承認は、歩行可能なDMDの4歳~7歳の男児を対象にしたエレビジスの有効性および安全性を評価したグローバル第III相臨床試験であるEMBARK試験の最大2年間1,2の成績を含むこれまでに実施した本品のすべての臨床試験成績等に基づいています。EMBARK試験パート1の52週時点の結果、主要評価項目である運動機能を評価するノース・スター歩行能力評価(NSAA)はプラセボ群に比べ統計学的な有意差は認められませんでしたが、副次的評価項目(床から立ち上がるまでの時間、10メートルの歩行時間、Stride Velocity 95th Centile[SV95C]、4段上るまでの時間)において臨床的に意義のある改善が認められています。さらに、エレビジスを投与した歩行不能なDMD患者さんで急性肝不全による死亡例が海外で2例報告されました。これを受け、電子化された添付文書および医療関係者と患者さん向け資材を改訂し、安全対策を強化しております。具体的な取り組みは以下の通りです。
- 産官学で協議のもと、適正使用推進体制を構築
- 医療関係者と患者さん向け資材の作成・公開(適正使用ガイド、患者さん向けハンドブック)
- 専門的なコンサルテーション体制の整備
日本小児神経学会による施設認定後、専門医からなるエキスパートパネル(BRIDGE-NMD)*によるインターネットを介したコンサルテーションが国内市販後に活用可能
*BRIDGE-NMD(Building Recommendations in Developing Gene Therapy for Neuromuscular Disorders、神経筋疾患遺伝子治療安全性最適化ネットワーク):小児神経、小児肝臓内科、小児肝臓外科、小児循環器、小児免疫、小児腎臓内科、小児血液内科の医師で構成される専門家チーム
なお、投与前に実施する抗AAVrh74抗体陰性の確認には、エクルーシス試薬 Anti-AAVrh74の使用が可能です。本試薬は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社より、エレビジスのDMDの適応判定を補助するコンパニオン診断薬として、2026年2月1日より保険償還が開始され、発売されています。
電子化された添付文書情報
販売名:エレビジス®点滴静注
一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク
禁忌・禁止(一部を抜粋):
ジストロフィン遺伝子のエクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体が欠失している患者
効能、効果又は性能:
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
ただし、以下のいずれも満たす場合に限る
- 抗AAVrh74抗体が陰性の患者
- 歩行可能な患者
- 3歳以上8歳未満の患者
用法及び用量又は使用方法:
通常、体重10 kg以上70 kg未満の患者には1.33×1014ベクターゲノム(vg)/kgを、体重70 kg以上の患者には9.31×1015vgを、60分から120分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと。(体重別の投与量の表は省略)
承認条件及び期限:
〈承認条件〉
- 条件及び期限付承認後に改めて行う本品の製造販売承認申請までの期間中は、本品の長期の有効性及び安全性の確認を目的とした臨床試験並びに本品を使用する全症例を対象とした製造販売後調査により製造販売後承認条件評価を行うこと。
- デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関する十分な知識及び経験を有する医師が、本品の臨床試験成績及び有害事象等の知識を十分に習得した上で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に係る体制が整った医療機関において、「効能、効果又は性能」並びに「用法及び用量又は使用方法」を遵守して本品を用いるよう、関連学会との協力により作成された適正使用指針の周知等、必要な措置を講ずること。
- 「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)」に基づき承認された第一種使用規程を遵守して本品を用いるよう、その使用規程の周知等、必要な措置を講ずること。
〈期限〉
3年
承認日:2025年5月13日
薬価基準収載日:2026年2月20日
発売開始日:2026年2月20日
薬価:1患者当たり 304,972,042円
※ 薬価は、中央社会保険医療協議会における議論を経て、公的なルールに基づき算定されています。
【参考情報】
エレビジス、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子治療用製品として、日本で製造販売承認を取得(2025年5月13日ニュースリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20250513181500_1491.html
ロシュ社による、歩行不能のデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するElevidysの新たな安全性情報の発表について(2025年6月16日ニュースリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20250616153000_1495.html
再生医療等製品エレビジスに関する安全性情報に基づく対応について(2025年9月4日ニュースリリース)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20250904183000_1510.html
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD: Duchenne muscular dystrophy)について
DMDは、小児の早期から急速に進行する、希少な遺伝性の筋疾患です。世界では、男児の約5,000人に1人程度で発症するといわれており、女児では非常にまれです4。DMDは、歩行能力、上肢機能、肺機能、心機能が失われ3-5、致死的な転帰を辿ります。DMDと診断された方はフルタイムでの介護が必要となり、中でも親による介護が最も多いです3-5。また学業や仕事や家庭生活を行うことが困難となり、うつ病や身体的な痛みを患うことがあります。
DMDは、筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子の突然変異が原因で発症します。ジストロフィンは、筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護するタンパク質複合体の重要な成分です。DMD遺伝子の変異により、DMDでは機能性ジストロフィンを体内で産生できなくなり、筋細胞は損傷に対する感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が徐々に進行します4,5。
エレビジスについて
エレビジスは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する再生医療等製品で、標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、本品により短縮型ジストロフィンの発現を介し、DMDの原因に働きかけるようデザインされています。日本においてDMDを対象として希少疾病用再生医療等製品の指定を受けています。また、エレビジスは、サレプタ・セラピューティクス社が創製し、ロシュ社と共同で開発を進めてきた製品です。中外製薬はロシュ社から導入し、日本国内における製造販売業者として、エレビジスの独占的販売権を保有しています。
米国において、DMDに対する初の遺伝子治療用製品として、2023年6月に承認されています。その後、エレビジスを投与した歩行不能なDMD患者さんで急性肝不全による死亡例が海外で2例報告されたことを受け、現在、歩行不能な患者さんは適応が除外されています。欧州においては欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)が条件付き承認を付与しないことを勧告し、2025年9月に欧州委員会(EC)は勧告を了承しました。現在、歩行可能なDMDの治療を目的として9か国で承認されています。
EMBARK試験について
EMBARK試験は、DMD(Duchenne muscular dystrophy)遺伝子変異が確認された4~7歳の歩行可能な男児を対象に、エレビジスの安全性及び有効性を評価する国際共同第III相ランダム化二重盲検クロスオーバープラセボ対照試験です。被験者は、本試験のパート1又はパート2のいずれかでエレビジスの単回投与を受けました。試験は最長3年の追跡結果が得られており、今後も継続してフォローアップします6。
パート1では、被験者125名は年齢(4~5歳、6~7歳)及びスクリーニング時のNSAA総スコア(22以下、22超)によりランダム化され、エレビジス 1.33 x1014 vg/kg又はプラセボが投与され、52週間にわたり追跡調査を受けました。パート2では、パート1でプラセボ投与を受けた被験者にはエレビジスが、エレビジス投与を受けた被験者にはプラセボが投与され、52週にわたり追跡調査を受けました。すべての被験者に対し盲検性が維持されました。本試験の主要評価項目は、52週時点のNSAAによる総スコアのベースラインからの変化量です。
上記本文中に記載された製品名は、法律により保護されています。
出典
- AAV gene therapy for Duchenne muscular dystrophy: the EMBARK phase 3 randomized trial. Nature Medicine. 2025 Jan Volume31 332-341
- Two-Year Outcomes Following Delandistrogene Moxeparvovec Treatment in Ambulatory Patients with Duchenne Muscular Dystrophy: Phase 3 EMBARK Trial. Neurol Ther.2026 Jan 10. Doi:10.1007/s40120-025-00879-8
- Salvatore Crisafulli et al, Global epidemiology of Duchenne muscular dystrophy: an updated systematic review and meta-analysis. Orphanet J Rare Dis. 2020 Jun 5;15(1):141
- David J Birnkrant et al, Diagnosis and management of Duchenne muscular dystrophy, part 1: diagnosis, and neuromuscular, rehabilitation, endocrine, and gastrointestinal and nutritional management. Lancet Neurol. 2018 Mar;17(3):251-267
- 一般社団法人日本神経学会 デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン. https://neurology-jp.org/guidelinem/dmd.html(2026年2月アクセス)
- Sarepta Therapeutics to Report 3-Year Topline Data from EMBARK Study of ELEVIDYS Gene Therapy in Ambulatory Individuals with Duchenne Muscular Dystrophy. Available from: https://investorrelations.sarepta.com/news-releases/news-release-details/sarepta-therapeutics-report-3-year-topline-data-embark-study(2026年2月アクセス)
以上
本件に関するお問い合わせ先:
中外製薬株式会社 広報IR部
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- メディアリレーションズグループ
- Tel:03-3273-0881
- mailto: pr@chugai-pharm.co.jp
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- Tel:03-3273-0554
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